虚ろにさまよう夢 タグ一覧 > タグを追加:削除 最終更新日時:2016/03/21 (月) 16:55 - 虚ろにさまよう夢 - その〈ロストメア〉は、人の姿でさまよっていた。 う……ああ……。 酔いおぼれたようにふらつく足取り。道行く人にぶつかり、ののしられながら、前に進む。 門……へ……。 門へ……行かなければ……。みんな……いっしょに……なるために……。 ──あら。 ふと。 倒れ込むようにして細い路地裏に入り込んだとき、嫣然と微笑むひとりの少女に出くわした。 人擬態級の〈ロストメア〉とは。でも、せっかく人の姿をしているのに、それじゃばればれよ。 う……うう……。 泣き崩れそうになる〈ロストメア〉の頭を、少女は慈しむような手つきで撫でる。 ねえ──私が手伝ってあげましょうか。ほら、教えて。あなたの夢はなに? 私の……夢は……。 少女が、〈ロストメア〉の手を握った。すると、〈ロストメア〉の瞳が淡く輝き始める。 三人で、いっしょに……生きて、過ごして……。どこまでも……ずっと……ただ、幸せに……。 ──なるほど。 いつしか、少女の瞳に、みっつの人影が映っていた。 目の前の女と、大柄な男と、小さな女の子とが、仲睦まじく笑い合う──そんな姿が。 なんとまあ。あなた、〈メアレス〉の男が捨てた〈見果てぬ夢〉なのね。 微笑んで──少女は、そっと〈ロストメア〉のほっそりとした肢体を抱きしめた。 かわいそうなこと。あなたを生み出した男は、夢見ざる存在として、私たちを狩りに来る。 そんな……どうして……? 自分で抱いた夢なのに……。 泣いたってどうしようもないわ。そういうものなの。 だからこそ……私たちは自分で自分を叶えるしかない。そうでないと幸せになんてなれないのよ。 私が力を貸してあげる。現実に行くための力。そして……あなたを生んだ男に復讐する力を。 わたし……現実に、なれるの……? もちろんよ。 だから、私とともに来なさい。夢として生まれた意義を、果たすために。 ……はい。 〈ロストメア〉は、うなずいた。 誰かに優しく抱かれることのあたたかさを、生まれて初めて感じながら── 〈見果てぬ夢〉に過ぎぬという己がさだめを、今さらながらに嘆いて、泣いた。 コメント(0) コメント 削除すると元に戻すことは出来ません。よろしいですか? 今後表示しない 削除しました。