WARBRINGER
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![]() オフの日──都市をうろついていた君とウィズは、服屋から出てくるミリィとばったり出くわした。 | ||
![]() | あ、どもっす。魔法使いと猫さん! | |
服を買っていたの? と訊くと、ミリィは照れたように笑った。 | ||
![]() | いやぁ……見てただけです。あたし、私服のセンスが死ぬほどない、ってよく言われるんで……。 | |
でも、その服はいいと思うけどにゃ。 | ![]() | |
![]() | これ、昔の学校の制服なんですよ。無難なもんで、ついつい着回しちゃってて……。 | |
話しながら軽くぶらつき、オープンカフェに入って飲み物を頼んだ。 | ||
テーブルに向かい合い、ちらりと話を振ってみる。 | ||
![]() ファッションデザイナーの夢に未練はないか、ですか? | ||
あまりにもセンスがなかったから諦めた、と、以前彼女は言ったが……。 | ||
![]() | いや、ホントなかったんですよ。これがもうホントにマジで。 | |
![]() | あたし、孤児だったんで。昼の学校に行くのに、夜、工場で働いて学費を稼いでたんですけど……。 | |
![]() | ずっと着たきりスズメだったから、いろんな服を見てはあこがれて、いいなあ、って思ってて……。 | |
![]() | そのうち、いつか自分で服をデザインする仕事に就きたい、ってなったんです。 | |
立派な夢にゃ。 | ![]() | |
![]() | えへへ、ありがとうございます。 | |
![]() | でも、服飾をちゃんと学ぶには、ちょっとお金が足りなくって……。 | |
![]() | そしたらですね、街で服飾デザインコンテストが開かれることになったんですよ。 | |
![]() | ここで優勝したら夢を叶えられる! そう思って、空いてる時間で応募デザインを考えて……。 | |
![]() | で、出したんですけど……。 | |
だめだったにゃ? | ![]() | |
![]() | まー、普通に落ちまして。 | |
残念だったね、と言うと、ミリィは、うーん、と複雑そうな表情になった。 | ||
![]() | 落ちたってだけだったら、また挑戦しようかって気にもなったと思うんですけど……。 | |
![]() | ただ、その日、工場に暴漢が来ましてねえ……。 | |
![]() | なんかいろいろ危なそうな人だったんですよ。銃とか持ってて。いろいろわめいてて。 | |
危なそうっていうか、危ない人にゃ! だいじょうぶだったにゃ? | ![]() | |
![]() | あ、はい。サクッと取り押さえましたんで。 | |
……にゃ? | ![]() | |
![]() | 格闘技ー、とか、武術ー、とか、やってたわけじゃなかったんですけど。 | |
![]() | どうもあたし、戦いのセンスっていうか、間の取り方みたいのが抜群にうまいらしくて。 | |
![]() | なんか、サクッとやっつけちゃえたんですよ。 | |
なら、良かったにゃ。 | ![]() | |
![]() | やー、それが……。 | |
![]() | 「暴漢を取り押さえた英雄少女!」って新聞に乗ったんですけど……。 | |
![]() | 「これが英雄少女のデザインだ!」って、超ダメだった応募作も載せられちゃったんです。 | |
![]() | んで、「あまりにひどい」「本当に服か?」と、新聞に載るなり街中で笑いものになる始末……。 | |
そ、それは……なんというか、不憫にゃ……。 | ![]() | |
![]() | いや、もう……街中の人に「これはひどい」って言われりゃ、そりゃあきらめもつきますよ。 | |
![]() | 逆にあたしの戦闘の才能に目をつけた人が現れて、しばらく修業したりなんだったりして……。 | |
![]() | いろいろやっているうちに、流れ流れてこの都市に来ちゃった、って感じですね。はい。 | |
なんと言葉をかけたものか、と君が迷っていると、ミリィはあわてて、ぶんぶんと手を振った。 | ||
![]() | ああ、お気になさらず! そりゃあたしも当時はヘコみましたけど、今は平気ですんで! | |
![]() | 夢を叶えられなかったのは残念ですけど、いちおうこうして手に職あるわけで、ええ……。 | |
その瞬間、路地の向こうで悲鳴が聞こえた。 | ||
〈ロストメア〉か──と思って振り向くと、一台の馬車が通りを爆走してくるのが見えた。 | ||
ば、馬車強盗だぁーっ!! | ||
ミリィが、ぐいとコーヒーを飲み干した。杭打機を手に、勇ましく立ち上がる。 | ||
行くの? と訊くと、彼女は、ニカッと白い歯を見せて笑った。 | ||
![]() 〈ロストメア〉相手じゃなくても、こういうの、あたし、ほっとけないんで! | ||
お代をテーブルに放り投げ、疾風の速度で馬車に突撃していく。 | ||
夢破れた少女の背中は、それでも、確かな誇りに満ちていた。 | ||
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