クロム・マグナⅢ 臨海学校
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- クロム・マグナⅤ 鋼鉄のラストバトル
クロム・マグナⅢ 臨海学校
◆◆◆プロローグ◆◆◆

「生徒会に、新しいメンバーを……ですか?」
──クロム・マグナ魔道学園、学園長室。
呼び出された少女……生徒会長リンカは、わずかに目を見張った。
「彼女は転校生なのだが、さっそく生徒会入りを志願してくれていてね」
リンカの前、執務席に着いた学園長ダンケルが、穏やかに微笑む。
「ありがたいことですが……実力はいかがでしょうか」
この鋼鉄の剣と魔法によって支配された世界では、各地で争いが打ち続いている。
ゆえに、クロム・マグナで魔法を学び、戦闘訓練を受けた卒業生は、
いずれ自らの故郷に帰り、戦いに駆り出されることになる。
いわばクロム・マグナは、戦闘のエリートを輩出する学園なのだ。
そんな学園の生徒代表たる生徒会メンバーには、特に優れた能力の持ち主が選ばれる。
実際、今の生徒会は、いずれも優秀な成績を収める面々で構成されている。
「彼女のクラスは決まっていますか?」
「いや。彼女は君より2学年下でね。まだクラス分けがされてないのだ。ただ──」
ダンケルの微笑みが、面白がるようなものに変わる。
「見たところ、すばらしい潜在能力の持ち主だ。まだ開花はしていないがね」
ダンケルは吸血鬼の末裔。秘められた魔力には敏感なのだ。
「では、まずは見習いという形式で、生徒会の作業を手伝ってもらいましょうか」
「ああ。そうしてくれたまえ」
「承知いたしました」
「そうそう。ヴォルフ君は、その後どうかね?
学園祭で『1年間の私闘禁止』というルールが施行されたわけだが……」
「あ……はい。平穏に日々を過ごせているようです」
「それはよかった。彼は争いを嫌うや優しい若者だからね。
はは、さぞかし女子生徒の人気も高いのではないかな」
「い、いえ……そういったことは、その、私ではちょっと……」
どこか歯切れ悪く、リンカは答えた。
その後、いつくかの連絡事項をやり取りし、リンカは学園長室を退出した。
残されたダンケルは、背もたれに身を預け、天井を見上げる。
(やはり──ヴォルフ君の話題になると、ああいう反応になるか)
凛とした生徒会長らしからぬ姿を思い出し、あごに指を這わせる。
(まだ自分自身、気持ちの整理をつけられていない……というところかな)
若者たちの青春の悩みは、ダンケルにとって微笑ましいものだ。
時に、辛さや苦さを噛みしめることもあるだろうが、
それを乗り越えて強くなってほしい、と切に思う。
(だが……)
残念なことに──彼女たち生徒会の面々に関しては、
『ただ見守る』というわけにはいかない。
(多少、荒療治になるが……平和が続いている今のうちに、
悩みを乗り越えてもらわなければならないのだ)
ダンケルは、机の上に置かれたままの封書に視線を移した。
『クロム・マグナ魔道学園 臨海学校へのお誘い』。
その本当の目的は──
「……そうだ」
声に出して、ダンケルはつぶやいた。
口の端に、わずかな笑みが刻まれている。
「生徒会が挑むべき試練……となれば、呼ばねばならぬ友人たちがいたな」
──あの魔法使いと黒猫なら、きっと、
生徒会のメンバーが試練を乗り越える手伝いをしてくれるだろう……
※話の最初に戻る
<登場キャラ>
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イツキ | リンカ | ニコラ | ヴォルフ |
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シャーリー | アーシア | アキラ | ジョージ |
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エミリア | リチャード | ツキカゲ | トモエ |
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サロメ | ダンケル |
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< 臨海学校まであと少し…… > (※メインストーリーの前日譚です。) | |||||
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第1話 プロローグ | 第2話 みんなで海に行こう! | 第3話 白波の打ち寄せるビーチ | 第4話 熱き刃の肝試し | ||
第5話 温泉を賭けた戦い | 第6話 これが最後の試練だ! | 第7話 夏の夜の打ち上げ | |||
< 楽屋裏にて……… > (※メインストーリーを読んだ後にどうぞ。) | |||||
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◆◆◆エピローグ◆◆◆

「……と、いう感じだったのだよ」
──クロム・マグナ魔道学園、学園長室。
呼び出された女教師サロメは、ボロボロに傷ついた状態ながら
満足げな顔で語るダンケルを見つめ、あきれの表情を見せた。
「遠回しに言うけど……、あんた、アホなんじゃないの」
「ははは、そのように見えるのは、生徒に親しみを持ってもらうための作戦だよ」
「親しみを持たれた結果、花火として打ち上げられたのかい」
「彼らが楽しんでくれたのなら、何よりだ。
異世界の友人たちにも喜んでもらえたようだしね」
「黒猫と魔法使い、ってヤツか。一度、あたしも会ってみたいもんだね。
魔法の仕組みが違うってところが気になるよ」
サロメが眼鏡を押し上げる。
「で──目的は果たせたのかい」
「ああ」
ダンケルの身から、飄々たる雰囲気が消えた。
「今回の一件で、彼らはまた強くなってくれたよ。
ノア君の参入によって、生徒会の絆はいっそう固いものとなった。
彼らの抱くほのかな想いの行く先が今後どうなるかは、私にもわからないが──
それが原因で生徒会の力が弱まるということは、もはやあるまい」
「そういう小っ恥ずかしいことを言うのに抵抗とかないのかね」
ぼやくように言って、サロメは目を細めた。
「学園長。あんた、やっぱり──例の『謎の魔道士』が、
あいつらを利用しようとしてるって考えてるね」
「その通りだ」
重々しくうなずくダンケル。
「学園が異界に飛ばされたとき─私と彼らだけがあちら側に移動した。
他にも多くの生徒や教師がいたのに。
また、彼らが特定の場所に集っていたわけでもないのに、だ。
彼ら生徒会の面々を『狙い撃ち』したものとしか、考えようがない」
「問題は、なぜそうしたのか、か……」
「そこがわからない。だが、だからと言って、対策を打たないわけにはいかないからね。
奴を見つけ、拘束することができれば最善なのだが──」
サロメは首を横に振る。
「残念ながら、依然、手がかりゼロさ。すべてのコネを駆使したんだけどね──」
「君の情報網でわからないとなれば、打てる手が限られてくるね……」
瞑目し、しばし考え込んで──やがて、
「やむなし、か……」
つぶやいたダンケルが、スッと薄く目を開いた。
真紅の瞳が、炯々たる光を放つ。
峻厳なる覚悟の色に、サロメは思わず息を呑んだ。
決意を固め、本気になった──ただそれだけで、
豪放で知られる女教師を戦慄させるほどの凄みが、ダンケルの全身から放たれていた。
「サロメ君。『管理者』たちに連絡を取ってくれたまえ」
「……!」
雷に撃たれたように、サロメが硬直する。
『管理者』──その名は、この世界の者たちにとって、
きわめて重大な意味を持つものであった。
「学園長──あんた、まさか……!」
「そうだ」
揺るぎない鋼の声音で──
ダンケルは、断固たる宣言を放つ。
「クロム・マグナ魔道学園の学園長として──
彼らに、協力を要請する……!」
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