釣竿書記
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「こんにちはー」
放課後の生徒会室に、ひょい、と小さな影が現れた。
1人で機械をいじっていたシャーリーは、予期せぬ来客に驚きの声を上げる。
「エミリア?」
「うん! お久しぶり、シャーリーちゃん!」
少女──エミリアは、はにかんだ笑みであいさつした。
彼女はクロム・マグナ姉妹校の生徒だ。
学園祭で行われた『番長オブザ番長決定戦』において、
見事、番長オブザ番長の称号を得たため、
たびたびクロム・マグナに『視察』に来ている。
「あれ? でも、今日って視察の日だったっけ?」
「ううん。今日はね、臨海学校の手続きに来たの」
「あ、そっか。エミリアも参加するんだねー」
「うん! それで、生徒会のみなさんにもあいさつに、って思ったんだけど……」
エミリアは、きょろきょろと生徒会室を見回した。
「今は、シャーリーちゃんだけなの?」
「ん。臨海学校前で、みんな忙しくってさー。
わたしは、何かあったときのためのお留守番」
「ふぅーん……あ、ねぇ、シャーリーちゃん。それ、なんの機械?」
エミリアは、シャーリーがいじっていたものを指差した。
金属製のロッドに、何やらいろいろなものが取りつけられている。
「これはね~、釣竿につける機械なんだー」
「釣竿に? じゃあ、釣りに使うの?」
「そうそう。雷の魔力を使って、自動的に釣り糸を巻き取る仕組みなの」
「へぇー!」
「それだけじゃないよ」胸を張るシャーリー。
「他にも、ボタン1つでロックオンした相手に自動で巻きついたり、
釣竿に電撃を流して、さわった相手を気絶させたりすることもできるの!」
「えっ、と……?」エミリアは、目をぱちくりとさせた。
「それって、釣りに必要……? なのかな……?」
「釣りをしてる間は無防備になっちゃうんだから、護身用の機能は必須だよ!」
シャーリーは、ぱちりとウィンクをする。
「そ、そうなんだ……でも、すごいね、シャーリーちゃん。
わたしより1コ下なのに、そんな機械を作っちゃうなんて」
エミリアの素直な称賛を受けて、シャーリーの顔に照れ笑いが浮かぶ。
「おじいちゃんとの約束なんだ。世界一の発明家になる、って」
「おじいちゃんはね、立派な発明家だったの。
機械いじりが大好きで、わたしが小さい頃から、いろいろ教えてくれたんだけど……
歳を取って、目を悪くしちゃって。細かい作業、できなくなっちゃったの」
だから、と、シャーリーは明るく笑う。
「わたし、おじいちゃんみたいな発明家になる、って約束したの。
そしたらおじいちゃんは、どうせなら世界一の発明家になってみせろ、
って言ってね」
「そっか……それで、いっぱい機械を作ってるんだね」
「おじいちゃんと同じで、単に機械をいじるのが好きでしょーがないから、
っていうのもあるけどね~」
語るシャーリーの目に、瞬間、真剣な色が差した。
「はっ──そうだ!」
「どうしたの?」
「糸を相手に巻きつける機能と、釣竿に電流を流す機能があるんだから、
いっそのこと、糸に電流を流して、離れたトコにいる相手を気絶させる機能を
つけてもいーじゃん! うあー、なんで思いつかなかったんだろー!
入れよう! 今すぐ入れようっ!」
「シャ、シャーリーちゃん、それ、釣竿っていうより兵器みたいになってない!?」
どうもシャーリーは、いつも発想が物騒な方向に行きがちなのだった。
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