クロム・マグナⅠ 魔道学園

 
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クロム・マグナⅠ 魔道学園


 ◆◆◆プロローグ◆◆◆   

鋼鉄の剣と魔法によって支配されし、さる異界──
数多くの優秀な魔道士たちを輩出し、古から由緒ある歴史を持つ名門「クロム・マグナ魔道学園」。

永世中立都市に設立され、国籍・人種・性別・年齢問わず幅広く門戸を開くその場所では、
世界中から才ある若者たちが集い、剣や魔法の腕を磨き続けている。
卒業し、故郷へ戻れば敵国同士であろうとも、学園でのひとときだけは同じ志を持つ友人、仲間。
争いの絶えぬその世界で、学生たちは複雑な思いを胸に秘めながらも、日々勉学・鍛錬に励んでいる。

そんな「クロム・マグナ魔道学園」は創立100周年を迎え、盛大な式典が学園祭と共に催されていた。
節目の時を一目見ようと各国から卒業生や来賓が集い、
学園祭実行委員会──生徒会執行部のメンバーたちは忙しくも充実した時を過ごしていた。

炎の魔法を専門に学ぶ「イグニーマ」主席、学園の誰もが認める生徒会長──リンカ・ワイアット。
地方農村の出身ながら独学で魔法を習得、最優秀クラス「グリグラード」に所属する副会長──イツキ・マスグレイヴ
10歳にして才覚を発揮、雷魔法を専門に学ぶ「エクレアル」に所属し、鋼鉄と魔法を使った発明をこよなく愛する書記──シャーリー・コルト。
「イグニーマ」所属、人付き合いを極端に嫌いながらも、ある目的のために生徒会入りした異色の書記──ヴォルフ・ロイ。

長い、長い準備期間を経てようやく迎えた記念すべき日。
誰もが祭りの雰囲気に酔いしれ、華やかな雰囲気に包まれていたその時に、事件は起きた。

学園上空に突如開いた"異界の扉"、あらゆるものを飲み込む巨大な空間の亀裂。
魔道士たちの張った防御陣はあっさり破られ、逃げようにも学園の周囲には結界がはられ脱出もかなわず、ただ扉に飲み込まれるのを黙って待つのみ。

永遠とも一瞬ともつかない時空の旅路の果て、やがて嵐が収まったとき、
クロム・マグナ魔道学園には、生徒会のメンバーだけが取り残されていた。

弾き飛ばされた世界の名は、クエス=アリアス。
途方に暮れる少年/少女は、そこで黒猫を連れた一人の魔法使いと巡り合う──

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<登場キャラ>
イツキリンカニコラ
ヴォルフシャーリーダンケル




第1話 プロローグ
──君とウィズは、急ぎ、山道を進んでいた。
──街から街へと移動している途中で、突如、すさまじい魔力の波動を感じたためだ。
──何があったのか確かめるべく、波動を感じた方角に早足で向かっている。
あの時の爆発的な魔力はもう収まってるけど、でも、まだ異様な魔力の気配を感じるにゃ
──とてとてと君の足元を歩きながら、ウィズが言う。
あれだけの規模の魔力にゃ……何が起こっても不思議じゃないから、注意するにゃ
──師の言葉にうなずいた時……
──君はふと、何かひらひらしたものを見つけ、足を止めた。
うにゃ?
──緑色の布切れが、木に引っかかっている。
これ……腕章にゃ? 『クロム・マグナ魔道学園 生徒会長』……。
聞いたことのない学園にゃ……。
……! あっち、何か動いたにゃ!
──ウィズの声に、君は身構える。
──山道からやや離れたところに、滝壺がある。そちらに動く人影が見えた。
行ってみるにゃ。
──警戒しながら、君たちは滝壺に近づいていく。
……!?
──そこには少年がいた。
──全身ずぶ濡れで、上着を乾かしている。
あんたは、一体!?
──少年が剣の柄のようなものを取り出すと、滝壺の水が集まり、剣の形状をなした。
それ……リンカの腕章! リンカはこの近くにいるのか!?
精霊を介さず、水を操る魔法……? これは……。
──何やら考え込みながら、ウィズが君の肩に跳び乗ってくる。
──君はまず、こちらの事情を少年に説明した。それから、少年が何者なのかを尋ねる。
……オレはイツキクロム・マグナ魔道学園の生徒で、生徒会の副会長だ。
──なぜここに? と問うと、イツキはうつむき、唇を震わせた。
学園祭の最中、空に謎の大穴が開いて……オレは学園ごとそれに呑みこまれた……。
そして、気がついた時には、この滝壺に落ちてたんだ……。
──クロム・マグナという学園には聞き覚えがないと告げると、イツキは驚きをあらわにした。
ウソだろ? クロム・マグナは、世界中に知られる魔道学園だぞ?
……やっぱりにゃ。
──君の耳元で、ウィズが告げる。
見慣れない魔法……空に開いた大穴。この子……異界から来たんだにゃ!

-挿入話- イツキ・マスグレイヴ
体が暗闇の中に浮き、空間の感覚が完全に失われている。
どちらが上でどちらが下か、移動している感覚はあるのに向かっている方角がわからない。

──次の瞬間、不意に全身に重力を感じ、皮膚にまとわりつく冷たく重い感覚が現れる。
呼吸しようと息を吸い込み、そして気づく。
ここは……水の中!?

薄れて行く意識の中で、イツキの脳裏に記憶が浮かぶ。
華やかな学園祭、巨大な空間の亀裂、飛び散る瓦礫、叫ぶ群衆。
そして、彼女の……リンカの悲哀の表情。
白くほっそりとした指先を懸命に広げ、こちらに手を差し伸べている。

「わりぃ。リンカ、みんな、どうか無事で……」

意識が戻ったとき、イツキは水辺に打ち上げられている。
岸へ上がり振り返る。
滝壺? ……見覚えのない場所だ。

イツキがずぶぬれになった制服を乾かしていると、川下から黒い猫を連れた一人の魔法使いが歩いてくる。
手には見覚えのある腕章……リンカが付けていたものだ。

「あんたは、一体?」

そして物語は動き出す。

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第2話 清瀧への滝登り
──君たちは、服を乾かしたイツキと共に、山道を抜け、平原を歩いている。
ここが、本当にオレたちのいた世界じゃないなら……
あんたが感じたっていう大規模な魔力の気配はオレたちの『移動』で生じたのかもしれない。
なら……その魔力が生じたところに行けば、学園の手がかりが得られるかも、だな……。
──イツキの顔には、固い決意の色があった。それを指摘すると彼は照れくさそうに頬をかく。
これでも、生徒会の副会長だからな。学園がどうなったかは、やっぱり心配さ
それに……リンカのことも
──君から受け取った緑色の腕章をグッと握り、イツキは奥歯を噛みしめた。
リンカは生徒会長なんだ。オレたちは、いっしょに学園を守ってきた……
大穴が現れた時……せっかく準備した学園祭が魔力の嵐でめちゃくちゃになって──、
あいつは悲しそうな顔をしてたんだ。学園を守り抜く、って誓っていたから……。
あいつが笑顔でいられるようにする。それがオレの……副会長の役目だ。
だから……オレは行かなきゃならない。たとえ何が立ちふさがろうとも……!
──イツキの視線の先……草原に、魔物の影が現れている。
──魔法の準備に入る君の横で、イツキは水の剣を形成し、隙なく構えている。
悪いな……付き合わせちまって。
──気にしないで、と君は笑う。魔道士ギルドに属する君にとって、これは調査すべき事態だ。
まじめなんだな。生徒会向きだよ、あんた。
──イツキが冗談めかして言った直後、魔物たちが飛びかかってくる。
違う世界の魔物だろうと──、
こっちは『グリグラード』クラスだぜ! 遅れを取ってたまるかよ……!

(戦闘終了後)

──遭遇した魔物の群れを掃討し、君とイツキは、ようやく戦いの構えを解いた。
あんた、やるな。ウチの学園だったら、まちがいなく『グリグラード』クラスだよ
──笑いかけてくるイツキ
──君は『グリグラード』について尋ねてみる。
ウチじゃ、適性に応じてクラスが決まるんだ。炎が得意なら『イグニーマ』クラスって風に。
グリグラード』は、最優秀クラスさ。いちおう、オレはそこに属してる。
──さすが生徒会の副会長、というところか。褒めると、イツキは苦笑する。
リンカの前じゃ、かすんじまうけどな
あいつは本来『グリグラード』入りだった。なのに『イグニーマ』を希望したんだ。
実家が炎の魔法剣を使う道場やっててさ。だから炎を専門に扱うクラスの方がいいって。
グリグラード』入りは最高の栄誉だ。それをそんな理由で蹴るんだから、驚きだよ。
──語るイツキの横顔は、実に誇らしげだった。
──しかし、その表情はすぐに曇ってしまう。
リンカだけじゃない。他にも、優秀で気のいい連中が大勢いるんだ。学園中にさ。
けど、オレたちの世界は常に争いが絶えない。卒業したら、いつかそいつらと敵同士になる。
それでも──学園を卒業するまでは、大切な仲間たちだ。
だからこそ……守りたいんだ。いつか戦うことになるのだとしても。
学園の生徒全員が、仲間との大事な思い出をずっと胸に抱いていられるように……。

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第3話 炎の魂精
──草原の中央に、巨大な校舎が建っていた。
クロム・マグナだ……まちがいない……。
──城ほどもあるのではないかという大きさの、壮麗な校舎だ。
──しかし……『大穴』に呑みこまれたせいなのか、白亜の校舎は全体が半壊してしまっている。
妖しい魔力を感じるにゃ……
──校舎全体が重苦しい魔力に覆われているのを君も感じた。明らかに普通ではない。
くそっ……魔物だらけだ……! 生徒はいないのか!?
──校庭から校門にかけて、魔物たちが我がもの顔で歩いている。
どうなっちまってるんだよ……なんで、こんなことになったんだ!
──イツキは、強く拳を震わせている……。
……ええいっ!
──かと思うと、水を魔法で固め、ばしゃあっ、と自分の頭にぶちまけた。
……わりぃ。ちょっとアタマ冷やした。
──ぽたぽたと、頭から水滴をこぼしつつ……打って変わって冷静に、イツキは言う。
まず、状況を把握しないとな。そのためには、学園のなかに入らなきゃならない。だよな?
──君はうなずく。
でも、魔物の群れがあれだけいるんだ。正面突破は正直、厳しい。
──君が難しい顔をしていると、イツキは、ぱちりと指を鳴らした。
そういえば、不良たちが古い通路を抜け道にしてたことがあった。
通れないよう鍵をかけたけど、緊急事態だ。鍵を壊して、そこから校舎に入ろう
──言って、移動しようとするイツキ
──乾かさなくていいの? と君が言うと、
とっととリンカを見つけて、あいつの炎で乾かしてもらうさ。
──冗談めかした返事で、イツキは笑った。


──その頃。クロム・マグナ魔道学園、校舎内。
──少女が、魔物たちを相手に奮闘していた。
くっ……、ホント、もう、魔物、ばっか……。
──雷を帯びた弓を手にした少女……生徒会会計ニコラは、唇を噛みしめる。
──廊下の中央。魔物にはさみ撃ちされた状態。まさしく孤立無援だ。
リンカは……!?
──いない。共にいたはずの同級生の姿は、魔物の群れにさえぎられ、探しようもない。
(みんな、いなくなった……みんな……リンカも……イツキ君も……)
──魔物たちをにらみすえるニコラの目に、じんわりと涙がにじんでいく
(た──助けなきゃ……みんながいなくなったなら……アタシがみんなを助けなきゃ……!)

(戦闘終了後)

このっ……!
──電撃の矢が魔物を貫いていく。それでも状況は変わらない。圧倒的不利のまま。
く……、う──
──続けて矢を放とうとして、体勢が崩れた。膝が笑う……魔力が底をつきかけていた。
──意識が遠のいていく。気力も体力も、とうに限界だった。
イツキ君……)
──大穴に呑まれた『あこがれの人』を思い、ニコラは力なく目を閉じる……
……ん……あったかい……。
──あたたかな熱が、優しく身体を包み込む。その感覚に吐息をこぼし──ハッとなった。
これ──この、炎って……。


灰となれ、化け物ッ!

──燃えさかる炎の刃が、ニコラに迫っていた魔物たちを薙ぎ払う。
──見失ったはずの少女、リンカがそこにいた。夜を燃やす朝焼けのように。
ニコラ! 大丈夫!?
う、うん……
──片手でニコラを立ち上がらせながら、もう片方の手で焔刀を振るうリンカ
──絶望的な数の魔物たちが、怒濤の勢いで斬り伏せられていく。
(やっぱり、すごい……)
──自分とは違う。イツキが消えた時だって、リンカはあきらめず手を伸ばしていた……。
(アタシなんかとは、大違い……ライバルになんてなれない、かな……)
──そんなことを考えていると、
ごめん──ニコラ。本当に迷惑をかけてしまって。
──襲い来る敵を次々と斬り倒しながら、なぜかリンカが謝ってきた。
え……?
私……だめになっていたわ。学園が崩壊して、イツキもいなくなって……折れかかっていた。
でも、あなたは違った。どんなに傷ついても、希望を捨てず、必死に戦っていた!
あなたのおかげで目が覚めたの。だから、ありがとう──そして、ごめん!
──ニコラは唖然となった。
──落ちこぼれ寸前ながら、イツキにあこがれ、なんとか生徒会に入れたような自分に。
──学園最高の才媛、天下無双の生徒会長が、こんなことを言うなんて。
(でも……そっか。そうだよね。リンカだって、弱気になることもあるよね)
──ニコラはふるい立った。足に力を送り込み、しっかりと身体を支える。
行こう……リンカ
ええ。守りましょう。この学園を……私たち、生徒会の力で!
──きらめく炎と雷が、闇の獣を打ち砕いていく……。

-挿入話- ニコラ・モーガン
一瞬の出来事だった。
学園の上空を覆った大きな亀裂、吸い込まれていく人々や校舎……

イツキ君が闇ヘ飲まれてしまったとき、私は自分の身を守ることで精一杯だった。
私だけじゃない。誰もが状況を理解できなくて、
混乱して、ただただ嵐が過ぎ去るのを待っているだけだった。

でもあの子は。リンカは、違った。
イツキ君を繋ぎとめようと、必死に空に手を伸ばした。
私は、そんな二人の様子を、ただ見ていることしかできなかった。

気づいたとき、私は学園祭の式典会場にいた。
瓦礫が散乱するステージで、いつも気丈で冷静なリンカがうなだれている。
他には……誰もいない。学園の友達も、生徒会のメンバーも、憧れの人も。

悔しさ、情けなさ、そしてあの人が居なくなってしまった悲しさ。
様々な感情が渦巻く中で、アタシはリンカにこう投げかけた。

「行こうよ。みんなを助けるの」

みんな。便利な言葉だなって私は思う。
でも、リンカは黙りこくったまま、私の方を振り返りもしない。

抜け殻のように天を仰ぐリンカを置いて、明かりの消えた学園の校舎内ヘと踏み入れる。

異界の扉が開かれた影響なのか、学園内には異様な雰囲気が漂い、重苦しい。
奇妙な魔物たちの強襲に弓を引き、戦って、傷ついて。
それでも、みんなを……イツキ君を救うため、走り続けた。

私たちの他に誰もいない空っぽの学園を走りまわって、どれだけの魔物を倒しただろう。
やがて魔力と体力が底をつき、私は膝から崩れ落ちる。

すぐそばに、魔物の気配を感じる。
ここまでなのかなぁ……どこかにいる、憧れの人を思い浮かべる。

力が入らず意識が徐々に遠のいていく。

「……ん……あったかい……」

ゆっくりと見上げると、そこにはリンカが居た。
リンカの刀に纏う気高き炎は、未来を照らす希望の光のように見えた。

思わず、私はリンカに抱きつく。
心強い仲問の登場に心から安堵する。

でも、その時はまだ気づいていなかった。
リンカの背後に、不穏な気配が忍ぴ寄っていることに……

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-挿入話- リンカ・ワイアット

学園祭の崩壊、"異界の扉"開放による惨劇、イツキという大切なメンパーの犠牲……
全身の力が抜けていく。涙で世界がぼやけて映る。

「行こうよ。みんなを助けるの」

誰かが私に語りかけている──ような気がする。
ちょっと待って。今の私は何かを考える余裕がないの。

イツキと共に生徒会を築き上げてきた日々がまぶたの裏に映っては消える。
一瞬で、何もかもが、失われてしまった……

どれほどそうしていただろう。
不意に熱情が胸を突き、傍らの紅刀が炎を吹き上げる。

私は……何をすべき?
私は……私は……私は……
私は、クロム・マグナ魔道学園生徒会会長リンカ・ワイアット。

「ごめん、みんな……今、行くから!」

今は、学園に残っている生徒会のメンバーを探し出し、この事件を解決すること。
リンカは愛刀を手に、闇に包まれた校舎ヘ突入する。

想像を超える魔物が蔓延る校舎。
容赦なく浴びせられる攻撃。

全身に傷を負いながらも、紅く燃え上がる刀を振り前へ、ひたすら前へ。

やがて──仄暗い回廊の向こうに、魔物に囲まれている少女を見つけ出す。

あれは……ニコラ!?
急いで駆け寄り、異形の者と対峙する。

「……灰となれ、化け物ッ!」

炎刃一閃、リンカの斬撃が宙を舞う。
剣戟鳴り響く激しい戦闘の最中、リンカは狼の遠吠えを耳にする。

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第4話 明日への輝線
──抜け道から校舎に入った君たちは、魔物を倒しながら先へ進んでいく。
あの塔から、強い魔力を感じるにゃ。
──ウィズが、校舎中央の上に立つ塔を見上げ、そうつぶやいた。
この重い魔力は、どうもあそこから発生してる感じにゃ。
──君は、ウィズの言葉をイツキに伝える。
あの塔……マグニフィカト・ケイオスから?
わかった……行ってみよう!


──その頃。クロム・マグナ魔道学園、校舎内。
ちっきしょう、魔物どもめ……ここはてめぇらの学園じゃねえってんだ!
──数匹の獣を連れた青年が、魔物たちと激突している。
シャーリーはどこだ……!?)
──魔物を薙ぎ倒しながら、後輩の少女を探す。
──人付き合いが苦手な自分を、シャーリーは強引に生徒会に誘ってくれた。
──果断な会長リンカ、気さくな副会長イツキ、明るい会計ニコラ、愛らしい書記シャーリー
(最初は戸惑ったけどよ……今は、『悪くねえ』って思えるぜ!)
──生徒会に入ったのは『動物たちを愛護する』という校則を設けたかったからだ。
──だが同時に、『人付き合いが苦手』という欠点を克服できるのでは、と期待してもいた。
──その期待は、現実に叶えられつつある。
(だからよ……失うわけにはいかねぇし、シャーリーには恩返しをしなきゃならねぇ!)
──傷ついた左腕をかばいながら、渾身の力で魔物たちを打ち倒していく。
──すると、回廊の奥から狼の遠吠えが響いた。
(フレキの遠吠え……!?)
──先行して偵察に出てくれていた狼の相棒が、何かを見つけたのだ。
──急いでそちらへ向かうと、リンカニコラが魔物に囲まれている光景が目に入った。
……どきやがれッ、魔物どもッ!!
──一瞬で怒りが頂点に達した。その怒りを炎に変えて、ヴォルフは敵陣に突撃する。
オラァッ!!
──猛烈な炎の拳が、魔物たちを一挙に粉砕。さすが、とばかりにフレキが吠える。
リンカニコラ! 無事か、おい!?
え、ええ……
──ヴォルフの姿に、一瞬ぼうっとなっていたリンカが、慌ててうなずきを返す。
ありがとう、ヴォルフ。その……ええと、た、助かったわ。
気にすんな。ところでアイツ……シャーリーがどこにいるか、知らないか?
ううん……でも──
──言って、ニコラが後ろを振り向く。
──そこには、学園のシンボル塔に通じる扉。重い魔力が放たれているのを感じる……
いかにも原因があります、って感じだな。
闇雲に探すより、この魔力の源を止めて、魔物の発生を食い止めた方がよさそうね。
──うなずき合い……3人は、扉に手をかけた。

(戦闘終了後)

このぉっ、待てったらぁーっ!!
──生徒会書記シャーリーは、塔の階段を駆け上がりながら、機関銃の引き金を引く。
──当たらない。目標の黒い影は、銃弾の雨をかわしながら、らせん階段を上っていく。
(誰だか知らないけど、ゼッタイに許せない!)
──学園に異変が起こって震えていた自分を、ヴォルフは笑顔で励ましてくれた。
ヴォルフ先輩は、怖そうに見えるけど、花や動物が好きな優しい人なんだ!)
──あの黒い影は、そんなヴォルフを攻撃し、窓から叩き落としていったのだ。
許せる、もんかぁーっ!
──電撃をまとう銃弾をさらに放つが、影は階段を上りきってしまう。
──らせん階段の上には扉があった。影を追い、シャーリーもそこから外に飛び出す。
……追いつめたよ!
──マグニフィカト・ケイオス。学園のシンボルである塔の屋上。
──もう逃げ場はない。屋上の中央で足を止めた影に、シャーリーは銃口を向ける。
──重い風が吹きすさび、敵のまとう闇を払う。
──現れた素顔に、シャーリーは驚愕した。
さすがは、天才少女シャーリー・コルト君。並ならぬ魔力を秘めている……。
ダ……ダンケル学園長!?
──そう、そこにいたのは、見慣れた男性。この学園の長、ダンケル・アダムスその人だ。
どうして学園長が、ヴォルフ先輩を……。
決まっている。
──笑う学園長。その目が、妖しく瞬いた。
優秀なる生徒会メンバー諸君……君たちの魔力をいただくためさ!
……う!?
──息が詰まる。
──ダンケルの瞳をまともに見すえた直後、ぴきりと全身が硬直してしまっていた。
う……あ──
クク……私は、魔界の吸血鬼一族の血を引いていてね……。
──残酷な笑みで、ダンケルが歩み寄ってくる。
吸血によって、同時に魔力も吸収できる。君たち生徒会は、優秀な供物となるわけだ。
く、苦しい……助け、て──
おお、かわいそうに。クク……今、楽にしてあげよう──。
──牙が迫る。力は入らない。抵抗のすべは何もない。
──絶望の涙が、シャーリーの頬を滑り落ちていく……。

-挿入話- ヴォルフ・ロイ

──リンカイツキニコラの3人とは別の場所、
生徒会室に書記の二人『ヴォルフ』と『シャーリー』は居た。

学園で巻き起こっている混乱の中、ヴォルフシャーリーの傍に居た。
窓ガラスは割れ、棚上にある物は落下し、机や椅子は散乱する。
自分の腕の中でうずくまるシャーリーの声色が震えている。

ヴォルフ先輩、怖いよう……」

落下物が背中を打つ痛みに耐えながら、無理に笑顔を作って見せた。
こんな時にも関わらず、生徒会に入ってから笑ったのは、これが初めてだった……

混乱が収まり、妙な静寂が辺りを包んでいる。
窓から外の様子を伺おうと、シャーリーから目を離したその時。
叫ぴ声が響き、振り返ったその刹那、何かの衝撃とともに体が宙に浮いた。

──意識が朦朧としている、何も感覚が無い……まだ宙に浮いてるのか?

息苦しさを感じて目を開けると、相棒の狼『フレキ』が心配そうに自分の顔を舐めている。
どうやら窓から落下したらしい。
意識が戻ると、左腕に激痛が走る……やっちまったか……

しかし今は、左腕がどうなっているかよりも、シャーリーのことが頭を過る。
決断は一瞬だった。

「仕方ねぇな……」

折れた左腕を庇いながら、先の見えない闇の広がる学園内ヘ駆け出す。
恐怖心、不安、アイツを助けてやれなかった後悔。
一体この学園に何が起きているかは分からないが……とにかく俺がシャーリーを守る。

学園内を進んでいるうちにフレキが何かを訴えるように、飛ぴ回り、吠えている。
その方向には、異様な雰囲気の漂う巨大な扉。
俺の名を呼ぷ声が近づいてくる……リンカニコラだった。
傷だらけの仲間たち、再会の喜び、溢れる想いを噛み殺して尋ねた。

アイツ……シャーリーがどこにいるか、知らないか?」

リンカたちは首を横に振る。
ただ全員が、目の前にある巨大な扉の先に何かがあることを感じていた。

そして今、その扉が開かれる……

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第5話 混沌とした闇
──君たちは、マグニフィカト・ケイオスの屋上を目指して階段を上っている。
どんどん魔力が強くなっていく…… 身体が重くなってきたな。
──イツキの言う通り、屋上に近づくにつれ、全身にかかる重圧が強まっていく。
……ちょっと止まってくれ。──はあっ!
──立ち止まり、イツキが水の剣を振るった。すると、一気に重圧が弱まる。
オレは特に水属性の適性があってさ。『清め』の力は得意分野なんだ。
もっとも……清めの聖水で魔物を退散させるってわけにはいかないけどな。
──イツキの見上げる先、進行方向から魔物が押し寄せてきている。
これまでより手ごわそうな連中にゃ。きっと闇の魔力の影響を受けてるにゃ。
──ウィズの表情は、いつになく緊張に満ちている。
これだけの闇の魔力……並みの魔道士に制御できるレベルじゃないにゃ。
もし、この魔力が人為的に集められたものなら……
そんなことができる魔道士は、とんでもない力の持ち主にゃ……!
──君は、ウィズが猫になった時の戦いを思い出す。
──あの時、君は圧倒的な力にねじ伏せられた。なすすべもなく打ち倒されるしかなかったのだ。
──あれから、自分はどれだけ成長しただろう。今の自分ならあの時の敵に勝てるだろうか。
──わからない。でも。
……なんだ?
──今、イツキはあの時の自分と同じ状況に追い込まれている。
──圧倒的な力に打ち倒され、大切なものを失いかけている。
──でも、まだだ。まだイツキは負けていない。こうして戦いを挑もうとしている。
──今の君なら……そんなイツキの助けになれるかもしれない。
……やる気、って感じの目だな。
──君を見て、イツキは笑う。
あんたといっしょなら、こんな状況でもなんとかできそうだ。
──君とイツキは、魔物たちに向き直る。
悪いけど……もうちょっとだけ、力、貸してくれ!
──断る理由は、ない。

(戦闘終了後)

……シャーリーっ!
──魔物たちを蹴散らして屋上に出るなり、イツキが叫びを上げて駆け出していた。
──屋上で震える少女に迫る黒い影。そこへ、水の刃を迅激に叩き込む。
ふ……
──影……銀髪の男性は、軽やかに刃をかわし、後ろへ飛びのいた。
あんた……ダンケル学園長!?
やあ、イツキ君。君まで来てくれるとは。それにそちらのお二方……。
──妖しい光を宿した両目が、君とウィズの方に向く。
霊妙の気配を宿す猫に、力ある魔法使い。クク……いい供物を連れてきてくれたものだ。
──ダンケルの様子に戸惑いながらも、イツキは少女の肩を揺さぶる。
シャーリー! おい、大丈夫か!?
イ、イツキ……先輩。
──シャーリーは、呪縛が解けたようによろよろと後ずさる。
ヴォ、ヴォルフ先輩が! 学園長にやられて……!
──直後、君たちが上がってきたのとは別方向の階段から、扉を開けて人影が現れた。
シャーリー! おい、ケガしてねぇか!?
ヴォルフ先輩!? う、うわぁんっ。ぶ、無事でよかったぁ!
リンカニコラ
イツキ
イツキ君! 大丈夫なの!?
ああ。こっちの魔法使いのおかげさ。それで──
──一同は、ダンケルを見すえた。
学園長……いったいどういうことなんです? 学園に何が起こったか、知ってるんですか?
クク……
──ダンケルは邪悪な笑みを浮かべ……その全身から闇の魔力を解き放った。
これは……!? 学園を覆っているのと同じ魔力……まさか、あなたが!?
どういうこった、学園長! てめぇの学園をてめぇでメチャクチャにしやがったのか!?
ウソ……ですよね? ねえ、学園長!?
──うるさいねえ。
私に魔力を捧げる供物ごときが……かまびすしくさえずるんじゃなあいッ!
──闇の風が渦巻く。ダンケルの目には殺意。
学園長っ!!
無駄よ、ニコラ! もう話が通じる様子じゃない!
やるしかねえってのかよ……!
──身構える君たちに、ダンケルは冷然と告げる。
やめておけ。君たちに勝ち目はない。
──構わず、君は前に出た。己の魔力を呼び覚まし、学園長と相対する。
ほう……怯まぬか。供物にしては活きがいい。
食事の前の運動か……クク──それも悪くはなさそうだ!

-挿入話- シャーリー・コルト

学園の空に大きな黒い空間の穴……
異界の扉が開いたとき、わたしとヴォルフ先輩は生徒会室にいた。
あまりに現実離れした光景に、わたしは思わずヴォルフ先輩の袖を引く。
先輩はわたしの方を見ると、微笑んでくれた
……何だか、いつもより、やさしい。

でも、そんな平穏な時間はあっという間に消えてしまった。
背後から強い衝撃を感じるのと同時に、先輩が宙に浮き、窓の外ヘ落ちていく。

目の前に現れたのは、黒い影のような「何か」。

これまで感じたことのない怒りが涌き上がってくる。
素早く床に落ちていた愛用の銃器に手をかけて、がむしゃらに引き金を引いた。

目にも止まらない早さで生徒会室から出て行く黒い影。
無我夢中で追いかける……周りは見えてなかった。

許せない……ゼッタイに許せない!

──黒い影を追ってたどり着いたのは、学園で最も高い塔の最上階。

そこに居たのは……ダンケル学園長?

普段の学園長とは違う雰囲気な気が……
目が合った瞬間、急に身動きがとれなくなり、息が苦しくなる。

「く、苦しい……助け、て。」

諦めかけたその時、聞き覚えのある声とともに苦しさから開放され、地面に倒れる。

「おい、大丈夫か?」

見上げるとイツキ先輩と、隣には初めて見る人(魔法使い?)とかわいい黒猫さんがいた。
ほっとしたのも束の間、慌ててイツキ先輩に伝える。

ヴォルフ、先輩が……」

涙が出そうになったとき、入口の大きな扉がゆっくりと開く。
傷だらけのヴォルフ先輩と生徒会のみんなが駆けてくる。

思わず、ヴォルフ先輩に飛びついた。
みんなも……よかった……

またみんなに出会えたこと、無事でいたことの喜び、
それはみんなが感じていた。

生徒会メンパーが集まり、希望の光が見えたけど、
その光を覆い隠すように学園長が近づいてくる。

どうして?
全員の頭に疑問と戸惑いが駆け巡る。
一つ明らかなのは、かつての学園長の面影はなく、
わたしたちに敵意の眼差しを向けているということ……

この学園の未来をかけた戦いが、今始まろうとしていた。

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第6話 混沌とした闇(2)
──君とクロム・マグナ魔道学園生徒会の攻撃がダンケルの全身を打撃し、吹き飛ばす。
ぐ……がぁあっ! 私が──押されるというのか……!?
──よろめいて……ダンケルは、胸をかきむしるようにして、絶叫する。
そ、ウ、だ──そレでいイッ!! わタしヲ……討てッ! 生徒たチよッ!
……!? 学園長!?
は、ヤく──倒しテ、くレぇっ!! 今ノ……うチにッ!!
やっぱり……いつもの学園長じゃなかったんだ!
けどよ、どうすんだ!? マジにやっちまうのか!?
……オレがやる!
──水の剣を携えたイツキが、ダンケルに向かって猛然と疾走する。
──うぉおぉおおおおぉおおおッ!!
──清らかなる水流の刃が一閃し……ダンケルの身体を斬り下げる。
ぐはぁああぁあああっ……!
──ダンケルの身体から、闇の魔力が霧散し……
──それだけだった。ダンケルが倒れることはなかった。
こ、れは……?
──身を確かめるダンケル。そこに刀傷はない。確かにイツキの刃が走ったはずなのに。
闇、だけ……、斬り、ました……。
──荒い吐息で、イツキは言った。
清めるのは……、得意分野、ですからね……。
清めの聖水……その刃か……さすがだ──イツキ・マスグレイヴ君……。
学園長! もう大丈夫なのですか!?
ああ──まだふらつくがね……すまない。迷惑をかけた……。
ホントだぜ、おっさん。んでよ、何があったんだ?
……学園祭直前の、あの時。私は異様な魔力を察知したのだ
魔力はこの塔に収束していた。だから私はここを訪れ──
『異界との境界を開く』呪文を詠唱している、謎の男に遭遇した。
うっそー!? そんな魔法あったのー!?
私はその男に戦いを挑んだが……敗北し、あまつさえ内なる闇を増幅させられた。
それで、自我を失ってたんだ……。
『異界の扉』を開くだけでなく、学園長をも打ち倒すなんて……何者なのですか?
わからん。ヤツは姿を消してしまったからね。だが──
──ダンケルは周囲を見回した。
ヤツの魔力はまだ残っている。これを使えば、学園を元の世界に戻すこともできるだろう。
マジか!?
ああ。もっとも、今の私の力では無理だ。君たちの力を借りねばならないが……。
やりますよ。学園のためですからね。
ええ。私たちは生徒会なのですから。
……私はいい生徒を持った。常日頃からそう思っていたが、今日は格別にそう思うよ。
──笑い……ダンケルは、君に向き直る。
異世界の魔法使いよ。君にも感謝を。我が生徒を守ってくれて、本当にありがとう。
オレからもだ、魔法使い。学園を……みんなを守れたのは、あんたのおかげさ!
──心からうれしそうに、イツキは笑う。
──失いかけたものを……学園と仲間たちを、守ることができたからこその笑顔。
──それを見つめる君も、思わず微笑みを返していた……


──『異界の扉』を開く魔法が完成し、魔力の嵐が校舎を呑み込んで……。
──気がつくと、イツキたちは爆発的な歓声に包まれていた。
……みんな! 無事だったのか!
──いなくなっていたクロム・マグナ学園の生徒たちが、校舎の外から歓声を上げているのだ。
──周囲を見回すと、学園校舎は見慣れた風景のなかに存在していた。
アタシたち、戻ってこられたんだね!
他の生徒たちがいなくなったわけではなく、我々だけが校舎とともに転移していたのだね。
よ、よかったぁ……ホントよかったぁ~!
……けどよ
──ヴォルフは、がりがりと頭をかいた。
校舎……ハデにブッ壊れちまったな
──彼の言う通りだった。学園校舎は『半壊』から『ほぼ全壊』の状態に変貌している。
……来た時と同じ方法で戻ったからね。すっかりぼろぼろになってしまったわ……。
直せばいいさ。
──悲しげに目を伏せるリンカの肩を、イツキが笑いながら叩く。
壊れただけで、なくなったわけじゃないんだ。学園の復興も、生徒会の仕事。だろ?
──その言葉に、リンカも微笑する。
ええ……そうね!
──そんな生徒たちを見守っていたダンケルは、ふと、何かに気づいて空を見上げた。
紙切れ……?
──ひらひら舞い落ちてきたそれをつかみ……彼は、微笑んで、それを空へと戻してやる。
──魔力の風を受けた紙切れは、閉じかけている『異界の扉』へと吸い込まれていった……


──その頃。君とウィズは平原に立ち尽くしていた。
──魔法は成功したらしい。その平原に、もはやクロム・マグナ校舎の姿はない。
──イツキは学園を守った。そしてこれからも守り続けていくのだろう。
──頼もしき生徒会の仲間たちと共に……。
うにゃっ。
──ふと、足元でウィズが鳴いた。
──見下ろすと、何かをくわえている。
──屈みこみ、ウィズからその『何か』を……不思議な力を秘めた紙切れを受け取って
──君は笑みをこぼし、それを懐に入れた。
ちょっとした勲章にゃ。
──ウィズの言葉にうなずきながら、歩き出す。
──『クロム・マグナ魔道学園 学生証』。
──そう書かれた紙切れは、見た目以上の重みを宿しているように思えた。

-挿入話- ダンケル・アダムス

──学園に"異界の扉"が開かれる数時間前。

記念すべき創立100周年の式典に備え、私は衣装の着付けを行っていた。
その時すでに、私は学園内の異変を誰よりも先に察知していた。

学園のシンボルでもある塔──『マグニフィカト・ケイオス』。
その塔の最上階には、強大な魔力が集約されている。

奇妙な感覚を胸に塔の最上階に駆けつけると、
フードに身を隠した何者かが唱えているのは……
あれは禁じられた秘奥の"異界との境界を開く"呪文!?

「何者かは知らないが、今すぐその詠唱を止めて貰おうか」

謎の魔道士の力が驚異的であることは、戦う前から知り得ている。
しかし、学園の長として覚悟を決めた。

互いに全力を込めた攻撃の応酬。
……長時間に及ぷ激闘の末、私は志半ぱで力尽きる。

自らの体は闇にのみ込まれ、徐々に自分ではない"ダンケル・アダムズ"が形成されていく。
頭に激痛が走り、体の自由が利かず、次第に視界が闇に染まりゆく。

「ワ、ワタシニハ ガクエンヲ マモルコトガ デキナカッタ……」

そして、クロム・マグナ魔道学園に"異界の扉"が開かれた。

空間に現れる巨大な亀裂、その亀裂の闇にのみ込まれる人々、
瓦礫と化す学園祭の華やかな装飾の数々……

その惨惨たる光景を窓から悠然と眺める。
怒りと悲しみ?もはやそんな感情は生まれなかった。

「ハーッハッハッハッハァ!」

身体中から沸き上がる"これまで感じた事の無い強大な力"。
先程まで私を苦しめていた闇の力でさえも、
今はワタシの思うままに振るうことが出来る。

いつの間にか異界の扉は閉じられ、"フードに身を隠した何者"かの姿も消えていた。
しかしどちらも今のワタシにはどうでも良い話。
今はこの身体中から沸き上がる力と、頭の中を支配する凶暴な衝動に身を委ねていたい。

──しばらくすると、生徒会の面々が続々とマグニフィカト・ケイオスの最上階ヘと現れる。
皆一様に信じられないといった面持ちでワタシの真意を問おうとするが、
明確な殺意と共に放たれる闇の力を受けて、彼らの顔がワタシとの戦いを決意したように変化する。

闇を纏った身体から流れる衝動は確かに彼らの死を望んでいるというのに、
どこか遠い所に残る感情……心の残渣は「学園を救おうとする彼ら」に倒される事を願っていた。

皮肉にもそんな状況の中で"私ではないワタシ"は、涙を流し笑顔を浮かべていた。

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 ◆◆◆エピローグ◆◆◆ 

異界の扉の開放によって漆黒の闇が覆う荒廃の地と化してしまったクロム・マグナ魔道学園──

生徒会執行部と黒猫を連れた一人の魔法使い、
強大な"敵"である学園長ダンケル・アダムスが繰り広げる戦いは決着を迎えようとしていた。

自分を犠牲にしてでも、生徒会の仲間たちを守り抜くという使命感で流剣を振るった、生徒会副会長イツキ
大好きな人のため、大好きな学園のために傷だらけの体に鞭を打って弓を引き続けた、生徒会会計ニコラ
仲間という大切なモノを与えてくれた生徒会メンバーに恩を返すため、相棒たちと果敢に敵に立ち向かった、生徒会書記ヴォルフ
学園祭を台無しにされ、大切な人たちを傷つけられたことによる純粋な怒りで銃器の引き金を引いた、生徒会書記シャーリー
生徒会の代表として、学園の未来を救わなくていけないという強い責任感で焔刀を握った、生徒会会長リンカ

生徒会メンバーの強い想いが宿る魔法の力と、
共闘する魔法使いの渾身の一撃が強大な闇の力をかき消した。

若き学園の精鋭たちは、幾多の苦難を乗り越え、
ついに学園の平和と未来を取り戻すことができたのだ。

闇の支配から解き放たれ、自我を取り戻した学園長ダンケル
そして、底を着きかけた魔力を振り絞って唱えられた詠唱によって再び開かれる"異界の扉"。
それは…イツキ達にとって元の世界でもある
鋼鉄の剣と魔法に支配されし異界へと続く扉だった。

学園を襲った未曾有の大事件を共に戦った"魔法使いと黒猫"との別れの時。
共に戦い、学園の危機を救ってくれた感謝の気持ちと再会の誓いを告げ、
生徒会執行部の面々とダンケルは元の世界ヘと還っていく。

元の世界には、事件があった際に行方不明になった多くの人たちの姿。
どうやら「彼らが行方不明になった」のでは無く、
行方不明になっていたのは自分の方だったという事に気がつき、
生徒会執行部の面々は改めて無事に戻ってこれたことの喜びを分かち合う。

そんな光景を見つめる学園長の目には涙が……
そして改めて思うのだった、我が生徒たちこそがこの学園の"誇りだと。

学園長がふと空を見上げると……?
一枚の紙切れがひらひらと舞い降りてくる。

その不思議な力を感じる紙切れを手に取ると微笑み、
閉まりかける"異界の扉"へと放り投げる。

──その頃、クエス=アリアスでは君と黒猫"ウィズ"が
次の目的地に向けて歩みを進めようとしていた。

……?
ウィズが何かをくわえている。

君はそれを手に取ると思わず笑みがこぼれ、大事そうに懐へしまった。

クロム・マグナ魔道学園の平和と発展を願いながら、
ウィズたちは再ぴ永き冒険の道のりへと駆け出した。

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