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はっ! | ||
腰だめに構えた拳銃から六連射。 | ||
見事に命中──弾丸の直撃を受けた〈ロストメア〉が倒れ、溶け崩れてゆく。 | ||
お見事、と君はルリアゲハに声をかけた。リフィルは敵の魔力の回収に向かっている。 | ||
すごい銃さばきだにゃ。いったいどうやったら、あんな連射できるにゃ? | ||
ファニング、っていう技法よ。引き金を引いたまま、左手で撃鉄を何度も叩くの。 | ||
ルリアゲハは、いったいどうしてそんな技を身に着けるに至ったのだろう? | ||
あたし、もともと武家の姫なの。だから、この手の武芸はたしなみみたいなものでね。 | ||
お姫さまにゃ!? | ||
言ってなかった? | ||
言われてたら絶対に忘れないにゃ! | ||
ああ、でも、今は違うのよ。国を出奔したから、もうお姫さまでもなんでもないの。 | ||
どうして国を出たの? と訊くと、ルリアゲハは苦笑を浮かべた。 | ||
実は、国がピンチになっちゃって。これはもう戦うしかない、って覚悟を決めたんだけど── | ||
あたしが戦の準備をしてる一方で、妹が、平和的・政治的な解決方法を模索していたの。 | ||
そうしたら家臣たちが、あたし派と妹派で割れて、その隙を敵国に突かれそうになってねえ……。 | ||
だから、あたしが国を出たのよ。内乱を未然に防ぎ、妹の交渉を成功に導くために……ってね。 | ||
ルリアゲハは、それでよかったにゃ? | ||
そうねえ……。 | ||
遠くを見つめて、ルリアゲハは小さく笑った。 | ||
実を言うと、あたし、驚いたのよ。 | ||
国を守り、民を守る。それがあたしの夢で、だからあたしはとことん武芸を磨いてきた。 | ||
でも、冷静に考えたら、間違いだった。妹の考えの方が、正しかったのよ。 | ||
産業が発達した今の時代、より性能のいい兵器をより多くそろえた方が勝つ……。 | ||
あたしはそれに気づかず、力で乗り切ろうとしたけど……妹は理知と策とで戦いを回避しようとした。 | ||
だからね。これからのことを考えれば、あの子に任せた方がいいって、そう素直に思えたのよ。 | ||
ウィズが、わずかに目を細めた。 | ||
そのまま残って妹さんに協力しても、結局、内乱が起こるように敵が手を打ってくる──と考えたにゃ? | ||
さすが猫ちゃん。そのとおりよ。 | ||
それでルリアゲハは国を出奔し、流れた果てにこの都市に来た、ということらしい……。 | ||
夢見ざる〈メアレス〉となったのも、”国を守り民を守る”という夢を失ったからなのか。 | ||
失った、とは思ってないわよ、魔法使いさん。〈夢見ざる者〉ではあってもね。 | ||
あたしの夢は、預けてきたの。あの子に……あの子なら、きっとうまく叶えてくれるって信じて、ね。 | ||
その分あたしはここで戦う。万が一にも〈ロストメア〉が現実に出て、国に害をなさないように。 | ||
だから、今の自分を悲観しちゃいないわ。夢はなくても、楽しくやれてる。 | ||
そう言って、ルリアゲハはぱちり、と鮮やかなウィンクを飛ばした。 | ||
頼れる相棒たちと一緒にね。 | ||
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