リミーラ
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名 | (SS)白馬の少女 リミーラ | (SS+)王子様を探す姫 リミーラ | (L)導かれる白馬姫 リミーラ・ネール |
AS | あなたは王子様じゃないわ! | あなたは王子様じゃないわ! | 王子様!そこにいたのね!? |
SS | 白馬コウ、姫のために | 白馬コウ、秘めたる思い | 白馬コウ、秘めたる思い |
共通情報
名前 | リミーラ・ネール | CV | 種崎 敦美 | 種族 | 術士 |
登場 | - | ||||
世界 | - | ||||
所属 | とある世界のとある小国のお姫様 | ||||
特徴ワード | 白馬に乗って王子捕縛 | ||||
関連キャラ | アレク、ルシェ、ドゥーガ | ||||
セリフ1 | 「あ~あ、私のことを愛してくれる優しくて格好いい王子様は、 いつ来てくださるのかしら、ねえ?」 | ||||
セリフ2 | 「痺れ針。人体に悪い影響はないはずよ。」 | ||||
セリフ3 | 「ごめんなさい。誤解させるような真似をして。どうかお体にお気をつけて。」 | ||||
補足情報 | 王子様を夢見る純真(…?)な女の子。 騎乗している、唯一の親友でもある白馬の名前は「コウ」 |
パーソナルストーリー
鏡を見つめる姫の心は…
とある世界のとある小国の小さなお城の中。 | ||
はふぅ~。 | ||
この城の主である美しい姫リミーラは、鏡の前で嘆いていた。 | ||
あ~あ、私のことを愛してくれる優しくて格好いい王子様は、いつ来てくださるのかしら、ねえ? | ||
リミーラは、鏡に向かって語りかける。 | ||
ぼんやりと男性のシルエットが、鏡に浮かんだ。 | ||
それは、リミーラの理想の王子様の姿だった。 | ||
だけどリミーラは、未だに理想の王子様に会ったことはなかった。 | ||
ひょっとして私が、いけないのかも。 | ||
こんな小さなお城の中で待ち続けているだけじゃ、王子様は私を探せないわよね!? | ||
うん、きっとそうよ。待ってるだけじゃダメ。私の方から王子様に会いに行かなきゃ! | ||
ぱんぱん、と手を叩く。 | ||
立派な馬格の白馬が、ゆっくりと近づいてくる。 | ||
コウ、これから王子様に会いに行くから、すぐに準備してちょうだい。 | ||
コウと呼ばれた白馬は、やれやれといった感じで長い睫毛を伏せた。 | ||
この城の外に出るつもりかい? 姫、無謀なことはよした方がいい。 | ||
だーめ! こんなちっぽけなお城にいたんじゃ、王子様は、私のこと見つけられないわ! | ||
それに、そろそろ外の世界を冒険してもいい頃じゃないかなって思っていたし……。 | ||
外の世界は、姫が思っているよりも厳しいところだぜ? | ||
だからコウ、あなたがいるじゃない。私のたったひとりの親友……。 | ||
あなたの脚なら、私を地の果てまででも連れて行ってくれるでしょ? | ||
白馬のコウは、かりっと奥歯で人参を噛み砕いた。 | ||
しょうがねぇ。そこまで言われちゃ、「馬力」を見せるしかねえな。いいぜ、背中に乗りな。 | ||
ありがとう、コウ! | ||
じゃあ、飛ばすぜ! 振り落とされねぇように、しっかり掴まってな! | ||
ひひひ―――んっ!? | ||
うわわわわっ! 飛ばしすぎよ、コウ!! | ||
白馬の脚力は、あっという間に国境を超えた……。 | ||
しかし、勢い余って暗い森の中に飛び込んでしまった。 | ||
リミーラの目には、一瞬空間の歪みのようなものが見えた気がする。 | ||
そして気がつくと……。 | ||
どこだかわからない場所にたどり着いていた。 | ||
うえ~ん、ここは一体どこなの? | ||
悪い。ちっと飛ばしすぎちまったぜ。 | ||
見たことのない風景が広がっている。 | ||
ここは、リミーラのいた国ではない。全く見知らぬ土地だった。 | ||
うう、お腹すいた。喉も乾いたよぉ……。 | ||
もうしばらく我慢しやがれ。もう少し行けば、町にたどり着くはずだぜ。 | ||
そこへ、ひとりの青年が通りかかる。 | ||
そこのお嬢さん、大丈夫ですか? 顔色が優れませんけど? | ||
あ、あなたは……。 | ||
青年は、アレクと名乗った。 | ||
格好からして魔道士のようだが、そんなことはリミーラにはどうでもよかった。 | ||
素敵な人……。きっとこの人が、私の王子様なんだわ。 | ||
本当かよ? | ||
女の子が、ひとりで……もしかして、迷子でしょうか? | ||
いいえ、迷子じゃないです! それよりも……。 | ||
リミーラの目が怪しく光った。 | ||
次の瞬間、リミーラは懐に隠していた吹き矢を取り出して、ふっと息を吹いた。 | ||
うっ!? | ||
首筋に矢を受けたアレクは、その場で倒れる。 | ||
いきなりなにしてんだよ!? | ||
痺れ針。人体に悪い影響はないはずよ。 | ||
そういう問題じゃないって! | ||
リミーラは、お城から持参した鏡をコウの背中から下ろして気絶したアレクを映し出す。 | ||
そして、鏡に向かって語りかける。 | ||
鏡よ鏡……鏡さん。この人は、私の王子様でしょうか? | ||
リミーラは、鏡に映るアレクの姿と、毎晩思い描いてきた理想の王子の姿とを重ね合わせた。 | ||
んん~? なんか違う……。 私の王子様は、この人じゃないみたい……。 | ||
リミーラが理想とする王子様が、どんな人物なのか……。それはリミーラにしかわからない。 | ||
リミーラが違うというのなら、きっと違うのだろう。 | ||
そうか。じゃあ、こいつが目覚める前にとっとと逃げようぜ。 | ||
リミーラは、再びコウの背中に乗る。 | ||
そして、気絶したままのアレクに言葉をかける。 | ||
あなたは私の理想の人ではありませんでした。それなのに気絶させて、ごめんなさい。 | ||
じゃあ行きましょうコウ! きっとこの先に、私の王子様がいるはずよ! ハイヨー! | ||
惨めに打ち捨てられたアレクは、薄れゆく意識の中で――。 | ||
今日はなんという厄日だ……と外出したことを後悔していた。 |
ねぇ、コウ。あっちに理想の王子様の気配を感じるわ。 | ||
白馬に跨った姫リミーラが辿り着いたのは、水の都アイヴィアス。 | ||
小綺麗な町だな。お、あそこの噴水で休憩していくか? | ||
そんなことよりも王子様探しよ。きっとこの町にいると思うの! | ||
いてて、たてがみを引っ張るなって! | ||
リミーラとコウは、悠々と街中を進んでいく。 | ||
「あの子、さっきから馬と喋ってないか?」 | ||
「そっとしておいてやろうぜ」 | ||
人目もはばからず白馬と会話するリミーラは、たちまち人々の注目の的になった。 | ||
おや? あそこを行くのは……。 | ||
人混みの中から、リミーラはひとりの男性――ルシェの姿を発見する。 | ||
遅くなった。早く帰らなければ……。 | ||
ぬああああああっ! なんて格好いい人なの! あのお方こそ、私の王子様だわ! | ||
ターゲットロックオン! コウ! 今回はプランBでいくわよ! | ||
なんだよプランって、そんなの聞いてねぇよ! | ||
私があの人を拉致するまで、コウは周囲の人の目を適当に誤魔化して! | ||
すっげー、ざっくりしたプランだな、おい! | ||
リミーラは、懐に忍ばせていた投網をルシェに向かって放り投げた。 | ||
なにも知らないルシェの頭上に、投網が覆いかぶさる。 | ||
んぐっ! なんだよ、これ!? | ||
さあ、コウ。王子様を私のお城まで運ぶわよ! | ||
いや、もっと人目につかないところでやれよな。こんな町中じゃ誤魔化しようがねえよ……。 | ||
誰だ、この僕を網に閉じ込めた狼藉者は!? 衛兵が黙ってないぞ!? | ||
ねえ、素敵なお人……あなたは、私を迎えに来てくれるはずの王子様なのよね? ね!? | ||
は……はあ? なに言ってるんだ? | ||
「あ、衛兵がやってきたぞ!」 | ||
「どこだ狼藉者は!?」 | ||
鎧に身を包んだ衛兵が、こちらに向かってくる。 | ||
ん、もう! 私と王子様の出会いの邪魔をしないで! コウ、やっておしまい! | ||
やれやれ。しょうがないお姫様だぜ。 | ||
コウは、町中に響き渡る声で嘶いた。 | ||
そして、衛兵たちの前に立ちふさがる。 | ||
「な……なんだこの白馬は!? ええいっ、邪魔をするな!」 | ||
わりぃが、俺の姫様には、指一本触れさせねぇからな! | ||
さあ、王子様。いまのうちに、この鏡に映ってみてください。 | ||
なぜ、鏡に……? | ||
きっとあなたは、王子様のはずです! さあ鏡よ鏡、鏡さん。この人は、私の王子様でしょうか? | ||
ルシェの姿が鏡に映る。 | ||
その姿は、毎晩リミーラが思い描いてきた理想の王子様……ではなかった。 | ||
そんな……。この人も、私の王子様じゃないの? | ||
一体、なんなんだ!? | ||
落ち込むリミーラの元に、衛兵一個小隊を蹴散らしたコウが駆けつける。 | ||
あれぐらい、俺にとってはなんてことないぜ。 | ||
ご苦労様コウ。やっぱりこの人も、理想の王子様とは違ったわ。 | ||
じゃあ、とっととこの町から離れようぜ。向こうから数百人の衛兵が押し寄せて来やがる。 | ||
町中で暴れるコウを取り押さえるために、衛兵たちはさらなる援軍を呼んだようだ。 | ||
ごめんなさい。誤解させるような真似をして。どうかお体にお気をつけて。 | ||
ぺこりとルシェに頭を下げて、リミーラは立ち去った。 | ||
何なんだよ、あの子は……。一体、僕がなにをしたって言うんだ……。 |
王子様探しの旅を続けるリミーラが、次に辿り着いたのは――。 | ||
砂と切り崩した岩壁の間に建つ魔導都市サイオーン。 | ||
ふう、なんとか逃げられたな。衛兵たちに捕まったら監獄行きだったぜ。 | ||
なあ、姫……。一度、城に戻らねえか? | ||
どうして? | ||
これ以上、姫を危険な目には合わせたくねえ。 | ||
いやよ。せっかくここまで来たのに。 | ||
ここなら、きっと王子様がいるわ。なんだか、そんな予感がするの。 | ||
王子様ねぇ……。 | ||
コウは、冷めた目で町行く人々の姿を見つめる。 | ||
その中で、ひときわ目立つ剃髪の大男が目に入った。 | ||
まさか! あんな岩山に迷い込んだ海坊主みたいな人が、私の王子様なわけないでしょうが。 | ||
リミーラの声は、その巨体の男の耳にまで届いていた。 | ||
彼は、魔道士ギルドマスターのドゥーガ。 | ||
顔を引きつらせながら、リミーラのところまでやってくる。 | ||
岩山に迷い込んだ海坊主とは、俺のことか? お嬢ちゃん、他人を馬鹿にしちゃいけないな。 | ||
な、なによー? 私が、目の前にいる人物にどんな感想を抱こうが、私の勝手でしょうが。 | ||
ぐ、そりゃそうだ。 | ||
おっさん。うちの娘に手を出しちゃ、ただじゃおかねえぞ! | ||
ドゥーガは、リミーラに不釣り合いなほど立派な白馬を見て、目を見開く。 | ||
お前はどこから来た? どう見てもよそ者だが……? | ||
あなたには関係ないわ。ねえ、それより喉が乾いたわ。あのお店で休んでいきましょう! | ||
コウから降りて、リミーラは近くにある食堂に向かおうとする。 | ||
その時――。 | ||
「そこのお嬢さん、避けろ!」 | ||
建物の窓から、花瓶が落ちてきた。 | ||
姫、あぶねぇ! | ||
ちっ――! | ||
とっさにドゥーガが飛び出して、リミーラをかばう。 | ||
落下した花瓶は、間一髪でリミーラの背後に落ちた。 | ||
危なかったな……お嬢ちゃん、怪我はないか? | ||
……あ、ありがとう。 | ||
命の恩人であるドゥーガを見つめるリミーラの瞳に、虹のような輝きが宿る。 | ||
姫、まさか……。 | ||
え、ううん違うわ! 鏡に映った王子様には、ちゃんと髪の毛があった。だから、絶対違うの! | ||
なにブツブツ言ってるんだ? 足でもくじいたか? | ||
でも、よく見ると鏡に映るあの人に、ちょっとだけ似てるような気がしてきたかも……。 | ||
おいおい、本気で言ってるのかよ? こんな男が、姫の王子様なわけないだろうが!? | ||
なんだかよくわからんが、とても失礼なことを言われてるような気が……。 | ||
でも、コウ……。 | ||
反論しようとするリミーラの口を、コウは尻尾の毛で塞ぐ。 | ||
こんな岩山の海坊主よりも……お、俺の方がいい男だろうが! いい加減に気づいてくれよ姫! | ||
まさか、コウ……。あなた……? | ||
コウは気まずそうに、リミーラから視線を外す。 | ||
俺は、姫の側にいられればそれでいい。だから本心を打ち明けるつもりはなかったんだ……。 | ||
でも、城を出てからの姫は、危なっかしくて見てられないぜ。 | ||
俺が、ずっと姫にどんな気持ちを抱いていたか、わかってるはずだろ? 言わせんなよな……。 | ||
真剣な表情で、気持ちをぶつけるコウ。 | ||
リミーラも、コウの言葉を真面目に受け止めている。 | ||
コウ、あなた……。 | ||
コウは赤くなった顔を逸らしている。 | ||
……。 | ||
あなたって、オスだったの? 私、ずーっとメスだと思ってた。 | ||
がくっ……。 | ||
力なく崩れ落ちるコウ。 | ||
姫……いまさら、そりゃないぜ……。 | ||
その目は、涙で滲んでいた。 | ||
結局、この都市にも、私の王子様はいなかったわね。 | ||
へっ、理想の王子様なんて実在するのかねえ……。 | ||
絶対いるはずよ! きっと探し出してみせる! | ||
じゃあ、まだ旅を続けるんだな。……しょうがない。俺も付き合ってやるしかねえな。 | ||
お願いね。あなたと一緒なら、どこまででも行けそうな気がするわ。 | ||
それにあなたがいなかったら、私はいまでもお城の中だったかも。感謝してる。 | ||
へっ。姫ひとりじゃなにもできないもんな。 | ||
そうね。コウがいてくれないと、私はどこへも行けないわ。 | ||
リミーラは、コウのたてがみを撫でた。 | ||
その手つきは、以前よりも若干優しくなっているように見えた。 | ||
行きましょうコウ、理想の王子様を探す旅は、まだ続くわよ! おう、姫が望むならどこまでもお供するぜ。 |
コメント(1)
コメント
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油断していたとはいえ、ギルドマスターを容易に抑え込むその手腕と準備のよさは恐ろしい……。
コウ君の想いが実るといいですね。0
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