鉱山奪取作戦
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![]() おい。 | ||
船の上──ちょうど風のあたる場所で休んでいると、ふとぞんざいな声が飛んできた。 | ||
中将閣下にゃ。 | ![]() | |
![]() | 貴様、こんなところで何をしている? | |
君は素直に、休んでいた、と伝える。 | ||
"戦った"あとの疲労感と虚脱感が、体に重くのしかかっていた。 | ||
戦艦に砲撃がきかないと知っているシャルルリエ軍団は、 | ||
自らの戦艦をぶつけることで足止めをさせ、相手側の船に乗り込み白兵戦を繰り広げる。 | ||
それが異常なまでの疲労感の原因だろう。 | ||
![]() | 全くだらしのない……ほら、飲め。 | |
手渡されたのは水筒のようなものだった。 | ||
蓋を開くと、ほのかに甘い香りが漂ってきた。 | ||
![]() | 隣国には、それは見事な茶園があった。そこでとれた茶葉を使ったものだ。飲め。 | |
君は、その茶園はどうしたの? と尋ねた。 | ||
![]() | ふん、聞くまでもないだろう。全て燃やされ、灰も残らなかったよ。 | |
忌々しげに吐き捨てるクラリア。 | ||
![]() | 結局、アレらが何をしたいのか、何をしようとしているのか、誰もわからず飲み込まれていった。 | |
……戦ってみて思ったけど、〈イグノビリウム〉との戦力差が歴然としているにゃ。 | ![]() | |
そうだ。 | ||
幸いドルキマスの戦艦は沈まなかったけれど、かなり消耗──いや、打撃を受けていた。 | ||
それだってヴィラム曰く、「奇跡のようだ」という話だ。 | ||
![]() | 魔道艇がいかに"有用な"駒であるか、我々は理解した。 | |
![]() | 貴様はこれ以上ない、我が軍の戦力だ。 | |
どういうわけか──〈イグノビリウム〉の兵は、魔道艇を狙い、そして魔道艇を恐れていた。 | ||
そして君自身の魔法も、彼らにはとてつもないダメージを与えた。 | ||
だからドルキマスの戦艦が無事であったとも言えるのだが…… | ||
![]() | 安心していい。貴様は我々が守る。たとえこの身が沈むことになろうとも、だ。 | |
得意気に、強気な笑みを見せながらクラリアは言う。 | ||
![]() | いやいや、アンタを沈ませたら、俺らのクビが飛ぶ。 | |
停泊している魔道艇に乗り込んできたヴィラムが、呆れ果てたように口にした。 | ||
![]() | アンタを死なせないようにするのが、俺ら兵隊の役目だ。もちろん、魔法使い殿もな。 | |
……意外といい人たちなのかにゃ? | ![]() | |
そうだといいんだけど、と君は呟く。 | ||
だけど守られているばかりではダメだと、君は思う。 | ||
1日2日でひとつの拠点を落とすことができないとは思っていたけれど、 | ||
まさかここまで時間も、人も、そして自分自身の精神も、すり減っていくとは思っていなかった。 | ||
まだ近くの拠点をひとつしか落としていない。 | ||
大陸には100を超える国があったというし、長い道のりになりそうだ。 | ||
![]() | 臆したか? だが逃げられないぞ、魔法使い。貴様は、我々ドルキマスと運命を共にするんだ。 | |
君から水筒を受け取ったクラリアが、不敵に笑う。 | ||
![]() | まあ、魔法使い殿。気楽に行きましょうや。どうせ普通にやっちゃ勝てない喧嘩をしてるんだ。 | |
そんなのみ巻き込まれた私たちの身にもなってほしいにゃ。 | ![]() | |
![]() | 次については追って通達する。貴様は、少しでも長く体を休めていろ。 | |
そうしてクラリアが背を向け歩き出したのを、君はウィズ、ヴィラムとともに眺めていた。 | ||
![]() ……何を生き急いでいるんだか、中将閣下は。 | ||
ヴィラムの言葉が、やけに耳に残っていた。 |
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