猫神降臨
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にゃにゃ! ここはどこにゃ!? | ![]() | |
変わった造りの建物に、咲き乱れる美しいピンク色の花……。 | ||
少なくとも、ここがクエス=アリアスではないことは明らかだった。 | ||
私たち、またおかしな世界に紛れ込んじゃったみたいにゃ! | ![]() | |
通りには露店が並び、どこからともなく賑やかで不思議なメロディーが流れてくる。 | ||
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祭りだ祭りだぁ! おい、ツバキ! モタモタしてるとおいてくぞ! | ![]() | |
![]() | そんなに急がなくったって、お祭りは逃げたりしないわよ。 | |
町を行く人の格好も、君には見慣れないものだ。 | ||
とにかく状況を把握する必要がある。君はその町娘に声をかける……が、 | ||
どうせ明日からまた戦なんだ! 今日くらい楽しませろ! | ![]() | |
ふたりは、まるで君がそこに存在していないかのように走り去っていく。 | ||
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![]() | ちょっとぉ。ハヅキさーん! ツバキさーん! | |
試しに別の人にも話かけてみるが、 | ||
![]() | おいてかないで下さいよー。 | |
やはり一切君に気付かない。 | ||
にゃにゃ! もしかしてこの人たち、私たちが見えてないにゃ!? | ![]() | |
ウィズの言葉に君は頷く。確かに意図して君を無視している風ではない。 | ||
さて、どうするべきか……。見知らぬ異界で君は途方にくれる。 | ||
悩んでたって仕方ないにゃ! お祭りやってるみたいだし、とにかく向こうへ行ってみるにゃ! | ![]() | |
言うが早いか、ウィズは駆け出した。 | ||
道を進むにつれ、気づけば周りに人の気配は感じられなくなっていた。 | ||
なんで魔物がいるにゃ! さっきまでいた人たちはどこにいったにゃ!? お祭りどこにゃ!? | ![]() | |
聞こえていたはずの祭り囃子もいつの間にか消えて、辺りは静寂に包まれている。 | ||
しっ……! 向こうの方から何か聞こえるにゃ! | ![]() | |
そう言って、ウィズは赤く巨大な門の奥を指す。耳を澄ますと確かにザワザワと人の声がする。 | ||
……これは人の気配じゃないにゃ。魔物よりもっと大きな存在……。キミ、慎重に進むにゃ! | ![]() | |
ウィズの言葉に頷き、君は恐る恐る門をくぐる。 | ||
門を抜けた先は……。 | ||
やはり賑やかな祭りの会場だった。 | ||
にゃにゃ? やっぱり祭り……かにゃ?! | ![]() | |
![]() ちょっと、待ってよ。一緒に「喧嘩神輿とうなめんと」出ようよ! マトイちゃん、トミちゃん! ミコトさん! 何度その名を呼ばないでって言ったらわかってくれますの? | ||
あ、ごめんごめん! トミ……じゃなかった。ジョゼフィーヌちゃん、一緒に喧嘩神輿に──。 | ![]() | |
![]() | やーですわ。大体、貴女と組んで一体私に何の得がありますの? | |
![]() じゃ、マトイちゃん! お願い! 悪いがこちらもお前と組むつもりはない。喧嘩神輿は遊びじゃないんだ。 | ||
……あーんもう! なんで私の手を引いてってくれないの!? ちゃんと歌まで詠んだのに……。 | ![]() | |
言いながら、彼女は手に持った文字の書かれた札を見つめる。 | ||
あ、誤字ってる……。「と」が「こ」になってるじゃん……ってあれ!? | ![]() | |
と、彼女は君たちの存在に気づいたのか、ウィズの事をじっと見つめている。 | ||
あの子は私たちが見えてるみたいにゃ! キミ、ちょっと話しかけてみるにゃ。 | ![]() | |
ウィズの言葉に頷いて、君が彼女に声をかけようと近づいていくと……。 | ||
![]() | 猫神さま!! お初にお目にかかります! 和歌の神のミコト・ウタヨミと申します! | |
と、ウィズに深々と頭を下げる。 | ||
にゃ!? にゃにゃ? | ![]() | |
![]() | お願いします! 私と祭りの喧嘩神輿に出場していただけないでしょうか? 何卒、なにとぞ! | |
そんな唐突な自己紹介からの怒濤の懇願に、ウィズは面食らった様子で君を見る。 | ||
どうやら彼女は本当にウィズのことを神様だと思っているらしい。 | ||
祭り……にゃ? | ![]() | |
![]() | はい、祭りです! 喧嘩神輿です。実は私の「ご利益ぽいんと」だと参加資格に足りなくて……。 | |
喧嘩神輿? ご利益ぽいんと? 君はそんな聞きなれない言葉をオウム返しに口にする。 | ||
![]() | はっ! これは失礼しました! お供の方はド新人でしたか! それでは私が説明を……。 | |
![]() | 私たち神々は人の願いを叶えることは出来ても自分の願いを叶えることはできません。 | |
![]() | しかし今日は「神々の、神々による、神々のための祭り」です。 | |
![]() | そこで行われる「喧嘩神輿とうなめんと」に出場してその頂点、「神輿座」についた神は……、 | |
![]() | 神々によって神輿ごと担がれる栄光の他、副賞として「願いが叶う目録」が与えられるのです。 | |
![]() | でも「とうなめんと」に参加するには「ご利益ぽいんと」が800万以上必要でして……。 | |
![]() | でも私、トチってばかりであんまり人にご利益ないから「ぽいんと」が全然足りなくて……。 | |
ミコトは悲しそうにうつむき、言葉を詰まらせながら先を続ける。 | ||
![]() | ……だから私……ご利益のある神様を探して……一緒に出てもらおうと……。 | |
でもウィズ──猫神様にご利益があるかわからないよ、と君は言ってみる。 | ||
![]() | なにを仰るんですか!? かつて「神輿座」に8回連続座り続けた、伝説の猫神様ですよ。 | |
伝説? 君は思わずウィズと顔を見合わせる。 | ||
![]() | 猫神様と一緒なら参加可能などころか、一気に優勝候補ですよ! だからお願いです! | |
と、ミコトは再び深々と頭を下げる。 | ||
(神様に有難がられるって悪くない気分にゃ! 楽しそうだし協力してみるにゃ!) | ![]() | |
そんな呑気なことを囁くウィズに、いつもなら小言の一つでも言う君なのだが……。 | ||
その時の君は、不思議とミコトに協力する気になっていた。 | ||
![]() | ありがとうございます! では早速、あちらでお清めをして境内へ……。 | |
彼女の言葉を待たずに、君はミコトの手を引いて、いざ喧嘩神輿に挑まんとする! | ||
……それはまるで、何か特別な力が働いているかのようだった。 | ||
![]() | さぁ、ここで受付を済ませれば晴れて「とうなめんと」参加ですっ! | |
たどり着いた先にはトーナメントへの参加を希望する神々が長蛇の列を作っていた。 | ||
![]() | うっわぁ。混んでますねぇ……。申し訳ありませんが、少々お待ちくださいね、猫神様っ。 | |
ミコトが「猫神様」と口にした瞬間、周囲がざわつき、神々の視線が一斉にウィズへ集まる。 | ||
……にゃにゃ! | ![]() | |
そして神々は、ウィズを見るなり受付の列を離れていく。 | ||
それを見てミコトは得意顔で君に微笑んだ。 | ||
![]() | ね、私のいった通りでしょ? みんな猫神様には敵わないって諦めたんですよっ。 | |
神々の尊敬と畏怖を帯びた視線を感じながら、君たちは受付へと進む。 | ||
中には握手を求める神もおり、ウィズはウィズで堂々とそれに応じる。 | ||
![]() | さすが猫神様! あなた、本当に素敵な神様のお供になりましたね! | |
どうやら猫神様というのは本当に人気があるらしい。 | ||
ふと周りを見ると、ウィズそっくりの猫の飾りまで置かれている。 | ||
おそらくそれが本物の猫神様なのだろう。 | ||
(なんだか本当に偉くなったみたいにゃ!) | ![]() | |
そんなウィズの言葉に君は苦笑しながら先へ進むが、受付には先客の神が一組あった。 | ||
──ですから、おふたりの「ご利益ぽいんと」は団体登録されているものですので……。 | ||
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亜人の類だろうか? 小鳥のような大きさの受付嬢に、軍服姿の神が食って掛かっている。 | ||
だからさぁ。俺らはその団体抜けてんだから、ふたり分を差っ引いてくれって言ってんの! | ![]() | |
![]() | そんな事言われても困ります。無理なものは無理なので……。 | |
かーっ! もう、これじゃ埒が明かねぇよ! おいっ、セイもなんとか言ってくれって! | ![]() | |
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スオウ……もう諦めろ。元々お前の無茶な思いつきだったんだ……。 | ![]() | |
でもよぉ……。 | ![]() | |
後ろにいる君たちの存在に気づかないふたりに、ミコトはコホン、と咳を払う。 | ||
えっとー。「ね、こ、が、み、さ、ま」が受付をしたいんですけど……。 | ![]() | |
ミコトの執拗に「猫神」を強調した言い振りに、3人が振り返る。 | ||
![]() | 猫神だと? んなわけあるか! あれは……。 | |
![]() | スオウ! いいからこっちに来いっ。オレに考えがある。 | |
スオウという神を制すると、セイという神はその視線をウィズに向け、 | ||
![]() | 失礼した……猫神どの。 | |
セイは深々と頭を下げ、スオウと連れて脇へ下がる。 | ||
![]() | おまたせしました。私、皆様のお世話を致しますナゴミと申します。 | |
よろしくお願いします。私、和歌の神のミコトです。 | ![]() | |
![]() | ミコト様ですね。えっと……。 | |
とナゴミは手元の帳面をめくる。 | ||
![]() | アハッ……20ご利益ぽいんと……。全然足りないですね……。 | |
う……うう……。 | ![]() | |
![]() | ……あ、でも全然大丈夫ですよっ! そちらの猫神様とご一緒なら問題無いですから。 | |
そう言って、ナゴミは帳面を見ながらテキパキと手続きを始める。 | ||
その様子を見て、君はふとウィズが猫神様でないことがバレてしまわないかと不安に思い、 | ||
それとなくミコトに、ナゴミはどうやって確認をするのかを尋ねてみる。 | ||
え? 受付の本人確認方法ですか? まったく、本当にド新人ですね、お付きの方は……。 | ![]() | |
と、ミコトは呆れたようにため息をつく。 | ||
「ご利益ぽいんと」は社ごとに集計されますが、本人確認は自己申告ですよ。 | ![]() | |
だって神様が嘘つくはずないじゃないですか! | ![]() | |
なるほど……。ミコトの言葉に君は改めて神という存在の偉大さを感じる。 | ||
![]() | それでは、もう他に出場希望の方もいらっしゃらないようですし、出発しましょうか。 | |
猫神様っ。一緒に頑張りましょう! | ![]() | |
うむ。任せとけにゃ! | ![]() | |
ウィズの調子の良い一言と共に、君たちが会場へ向かおうとすると……。 | ||
![]() | お前たち、ちょっとまってくれ。俺たちも仲間に入れてくれないか? | |
と先ほどのふたりが声をかけてくる。 | ||
え? 急にそんなこと言われましても……。どうします? 猫神様? | ![]() | |
![]() | 今回の喧嘩神輿には手強い神が参加している。いくら猫神といえど、一筋縄では行かないだろう。 | |
![]() | 下手をするとケガだけじゃ済まないかもしれないぜ。何せ喧嘩だからなぁ。 | |
……か、神様と喧嘩……にゃ? | ![]() | |
![]() | それにあんた……。 | |
と、セイはウィズに近寄って耳もとで囁く。 | ||
![]() | 本当は猫神様じゃないだろう? | |
にゃにゃ!? | ![]() | |
![]() | どうやって紛れ込んだのかは知らないが、神を騙したと知れたらただじゃすまない。 | |
にゃ……にゃぁ……。 | ![]() | |
![]() | だから俺たちを仲間にしてくれ。力を貸すから。お前にも叶えたい願いがあるだろう? | |
叶えたい願い……。勝って願いが叶うなら、それでクエス=アリアスへ戻ることが出来る! | ||
現状、それ以外にこの迷い込んだ異界から抜け出す方法は思いつかない。 | ||
君はそれに賭けてみるしかない、とウィズに伝える。 | ||
![]() | どうだ? 悪い話ではないと思うが……? | |
わ、わかったにゃ。 | ![]() | |
ミコト、この人たちを仲間に入れるにゃ! どうせ戦うなら数が多いほうがいいにゃ! | ![]() | |
はいっ! 猫神様の仰せの通りに! 皆さん、足引っ張らないでくださいね! | ![]() | |
そうして君たちは、新たな仲間と共に「喧嘩神輿とうなめんと」へ参加することとなった! |
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