ベアトリーゼ

 
最終更新日時:
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(SS)王女騎士 ベアトリーゼ(SS+)光と正義の御旗 ベアトリーゼ(L)綺光の聖姫 ベアトリーゼ・テルラ
ASレイディアントフォースレイディアントフォースラストエリュシオン
SSセイクリッドエッジルクス・ノヴァルクス・ノヴァ
登場時期:2015/02/28 ウィズセレクションガチャ

ベアトリーゼ&エルト(クリスマスver)

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(SS)白雪の大義 ベアトリーゼ&エルト(SS+)聖なる鐘と剣 ベアトリーゼ&エルト(L)綺光と焔の絆 ベアトリーゼ&エルト
ASカーレット・フォースホーリー・エリュシオンホーリー・エリュシオン
SSふたりを見守る聖星の輝きふたりを見守る聖星の輝き聖なる日に、心繋がるふたり
登場時期:2015/12/15 2015クリスマス期間 限定ガチャ 

共通情報

名前ベアトリーゼ・テルラCV-種族戦士
登場-
世界リベラ=ドミニア(現実が幻想に侵食される異界)
所属ルクス=テルラ王国 王女
特徴ワード聖光を携えし英傑
関連キャラエルトプラーミャ
セリフ1「必ず取り戻す!」
セリフ2「はは、エルトは相変わらず固いな。昔は、私をリーゼと呼ぶくらい気安かったのにな。」
セリフ3「……出会い頭に、あなたを敵とみなしてしまった非礼を許してほしい。」
補足情報奇跡を具現化する力を持ち、「聖女騎士」と称される、ルクス=テルラ王国の王女。
外遊中に「ファナトール帝国」の侵略を許し、亡国の姫君となる。
「綺光」と呼ばれる聖なる力を行使することができるが、
それは彼女の命を削る、代償を伴う力だった。

パーソナルストーリー


バックストーリー


「リベラ=ドミニア」――現実が幻想に侵食される異界。

その異界では、人ならざる異形の者たちが統べる大国「ファナトール帝国」が、
地上の覇権を取るべく人間たちの国々を侵略し、
燎原の火のごとく諸国と人々を支配していった。

そして帝国は、次なる侵略の地を「ルクス=テルラ王国」に定めた。

ルクス=テルラ王国の王女ベアトリーゼ・テルラには、
かつて王国の始祖が、その力を以て国を興したとされる
“光の力”――「綺光」が宿っていた。

騎士の甲冑と剣を携え、聖なる光を操り、奇跡を具現化する王女の存在は、
民から「聖女騎士」の名で敬愛されていた。
帝国にとって、このベアトリーゼこそが王国侵略における最大の障害だった。

そこで帝国は、ベアトリーゼが外遊中の隙を狙って、王国への侵略作戦を計画した。
かねてより王国内に密偵を送り、侵攻の準備を進めていた帝国は、
一気呵成に武力制圧を決行する。

数日後、帝国の侵攻の報せを受けたベアトリーゼが急ぎ駆けつけるが、
時すでに遅く、彼女は祖国と、王である父と、
その后である母を一度に失ったのだった。

「卑劣な帝国め……! 今ここで討ち取ってくれる!」

ベアトリーゼは剣を抜き、怒りに任せて黒煙の上がる王城へ駆け走るが、
それを腹心の護衛騎士エルトが諌める。

「姫様、なりません!
 あの大軍を相手に綺光を使えば、御身が無事では済みません!」

そう、奇跡の代償とでも言うのだろうか――
綺光の力は行使すればするほど、ベアトリーゼの命を削るのだ。

「陛下亡き今、あなたまで倒れてはルクス=テルラに未来はありません!
 ここは退き、反撃の準備を整えましょう!」
「……おのれ、帝国……次に相まみえた時は、必ず……!」

信頼するエルトの忠言に従い、彼女は後ろ髪を引かれる思いで祖国を後にした。
しかし、撤退する二人を帝国兵が発見したため、
彼女たちは早々に帝国の追撃を受けることとなってしまう。

追っ手から逃れるべく、陽の差さぬ深い森を駆け抜ける
ベアトリーゼとエルトであったが……。

「くうっ!」

いずこかより放たれた矢がエルトの足に深々と突き刺さり、
彼女は地面に倒れ伏してしまう。

エルト!」

矢傷を受けたエルトを庇い、ベアトリーゼは剣を抜き周囲を警戒した。
すでに森の中は濃い殺気が満ちており、彼女たちが囲まれていることがわかる。

「姫様、このままではあなたも……私を捨ててお逃げください……!」

エルトの悲痛な声が、ベアトリーゼの心を揺らす。
だが、彼女は決意を瞳に込めて足を踏み鳴らした。

「……私はもう誰かをあきらめたりしない。
 二人で生き延びて、必ず祖国を取り戻す! そして……」

ギリリ、と一斉に弓を引き絞る音が聞こえ、
ベアトリーゼの精神が限界まで張り詰める。

「この命を賭して、帝国を討ち滅ぼしてみせる!」


瞬間、<光>が爆ぜた。


ベアトリーゼの身体から溢れんばかりに解き放たれた光の奔流。
やがれそれらは、彼女の剣へと流れるように収束する。

「光の彼方に……消え去れ!」

裂帛の気合いと共に、ベアトリーゼは神々しい輝きを放つ剣を横薙ぎに一閃した!
光は極大の剣閃となり、周囲の木々を巻き込んで追っ手を焼き払う!
――その剣閃は、帝国兵たちに叫び声すら上げる暇も与えず、
光の彼方へ消し去った。


これが「綺光」。


ルクス=テルラの王家の中でも選ばれた者のみが行使できる奇跡の力である。

「ううっ! ……はあ……はあ……!」

全精力を一気に消耗した苦痛に、
彼女は思わず膝をつき、額に汗をにじませる。

「……私は帝国を許さない。絶対に国を取り戻すんだ……必ず……!」

ベアトリーゼは息も絶え絶えに立ち上がると、
傷を負ったエルトに肩を貸し、その場を後にした。

その日、ベアトリーゼは、悲壮な覚悟を胸に、茨の道へと踏み出したのだった。

亡国の王女は戦い続ける。
祖国を取り戻し、帝国の魔手から世界を救う、その時まで――。

※話の最初に戻る

見つめ合うふたり

異界――〈リベラ=ドミニア〉。
またの名を〈現実が幻想に浸食される異界〉。
この世界は、現在、人ではない異形の者たちの〈ファナトール帝国〉に支配されている。
姫様、少し休憩しましょう。
エルトは、足を止めて背後にいる主人を振り返った。
いや、まだ大丈夫だ。私はまだ歩ける。
最中の険しい道を、半日以上歩き詰めだ。疲れていないはずがない。
それでも、ベアトリーゼはエルトに疲れた表情一つみせない。
身を隠すにはうってつけの洞窟を見つけました。ここなら、帝国兵をやり過ごせるはずです。
物音がして、とっさにエルトはベアトリーゼをかばう。
まさか、もう帝国の兵どもに追いつかれたのか。
……身を隠した方が良さそうだな。
ここは、死に場所ではありません。国と民を救うためにも、ご辛抱ください。
ベアトリーゼは、短くうなずくと暗い洞窟の中に身を滑りこませる。
中は意外と寒いですね。地面には水が滴っていて……腰を下ろす場所もない。
エルトはがっくり肩を落とした。
こんな場所で一夜を明かすのは無理です。ここを選んだのは、間違いでした。
敵の虜囚となるよりは、ここの方が全然ましだ。
洞窟の外では、怪しげな気配がうごめく物音が、絶えず聞こえてくる。
帝国の追っ手が、ベアトリーゼとエルトを追討するべく探し回っているのだ。
姫様。狭苦しいところですが、今しばらくのご辛抱を……。
このぐらいなんでもない。エルト、お前が一緒だからな。
暗闇の中でもエルトには、ベアトリーゼの相貌がはっきりと見えた。
曇りのない瞳に見つめられて、エルトはつい目を逸らしてしまう。
見つめないでください……。
なぜだ? エルト、私の目を見て、ちゃんと答えてくれ。
お、お戯れを……。
そういった反応は、いつものこと。
ベアトリーゼは、わかっていながらエルトをからかっているのだ。
外の気配が消えたことにエルトは気づく。
帝国兵たちをやり過ごせたのかもしれない。
だがもうしばらく、この湿った洞窟に潜んでいた方がいいだろう。
そういえば……。
唐突にベアトリーゼが、つぶやいた。
明日は……聖なる夜だな。
そう……ですね。
洞窟の入り口から見える暗い夜空。
見上げるふたりの瞳には、別々の感情が湛えられていた。


帝国兵が周囲にいないことを確認してから、エルトはベアトリーゼの手を引いて洞窟を出た。
エルトは、すぐさま安全な場所で小さな火を起こして主人に暖を取らせた。
懐かしい……。国王が健在であられた時は、国をあげて祝ったものだ。
私も鮮明に覚えています。24日は、ルクス=テルラ王国あげてのお祭りでした。
本当に幸せで……穏やかな日々だった。
今はなき、国王――父親を思い出したのか、ベアトリーゼは優しい顔つきになっていた。
姫様は、聖なる夜にもらったプレゼントで、なにか思い出深いものはございますか?
いやない。プレゼントを贈る習慣があるのは知っていたが、私は毎年与える側だったからな。
あ、そういえば……。
エルトは思い出した。
毎年聖なる夜には、王国全ての孤児院に大量のプレゼントが送られていることを。
あれは全て、王女ベアトリーゼと国王が、私財を投げ打って送っていたのだ。
王族は、民の幸せのために存在するのだというのが父上……いや、国王のお教えだった。
では、姫様はこれまで一度も、聖なる夜にプレゼントを受けとったことはないのですか?
そうなるな……。
……そうですか。
エルトは、背中に何かを隠し持つような仕草をした。
どうした?
いえ。なんでもありません。
エルトの様子は明らかにおかしかった。
しかし、ベアトリーゼの注意は、全く別のところに向けられていた。
あ、あの姫様……?
いつの間にか、ベアトリーゼの目が険しくなっている。


魔物だ……。我々の火に気づいたらしい。

魔物――!?

凶暴な気配が近づいてくる。
ベアトリーゼは、とっさに自分の剣を掴んで戦闘態勢を取った。

(戦闘終了後)

エルトの剣は、魔物を一刀両断した。
見事だエルト
姫様、お怪我はございませんか?
主人の様子を確かめるために、エルトはいま切り捨てたばかりの魔物に背を向けた。
その隙を突いて――虫の息だった魔物が、再び顔をあげる。
エルト!? まだそいつは生きているぞ!
なっ!?
起き上がった魔物の一撃が、エルトに襲いかかる。
ベアトリーゼは、とっさの判断でエルトを突き飛ばし――
剣を振り下ろして、魔物に止めを刺した。
エルト、怪我はないか?
姫様のおかげで、かすり傷程度で済みました。
むしろ私が油断したせいで、姫様のお手を煩わせてしまい、申し訳ありません。
エルトが無事だったのだから、それでいい。
ベアトリーゼの温かい言葉に、エルトは思わず涙ぐみそうになる。
その時、エルトは気づいた。
先ほどの魔物の不意打ちで、背中に隠していたある物が、無残にも切り裂かれている事に。
そんな……。
背中に隠していた手袋は――見るも無残な姿になっている。
それを見ながら、エルトは絶望していた。
他の魔物も寄ってくるかもしれない。今のうちに、ここを離れた方がいいな。
エルト、行くぞ。どうした?
え? あ、いえ……なんでもございません。すぐにこの場を離れましょう!
エルトは、平静を装って返事をしたが、心の中は乱れに乱れている。
魔物に切り裂かれた手袋は聖なる夜に――
ベアトリーゼに送ろうと思っていたエルトからのプレゼントだった。
破れた手袋など、姫様にプレゼントできるわけがない……。
今から新しいプレゼントを用意するのは、無理だ。どうしたらいい……?

※話の最初に戻る
繋がりを求めて

エルトは、魔物に切り裂かれた手袋を捨てられずにいた。
なぜあの時、魔物をちゃんと仕留めておかなかったのだ?
自分の未熟さに怒りが湧き上がる。
くそっ……。
エルト……エルト
呼ばれていることに気づき、とっさに顔を向ける。
し、失礼しました姫様!
どうしたんだ? 昨夜から様子がおかしいぞ。
ひょっとして、昨夜のことで自分を責めているのではあるまいな?
昨夜のことなど悔いておりません。もう忘れました。……忘れることにします。
と言いながら、エルトは破れた手袋を懐にしまい込む。
――エルト、お前のその手袋、ボロボロじゃないか。
唐突に、エルトの脳裏に昔の思い出が蘇った。
剣の稽古に熱中するあまり気付かなかっただと?
お前は面白いやつだな? ひとつ、私の剣の相手をしてくれないか?
王国が健在だった頃の昔の記憶。
エルトもベアトリーゼも、まだ子供だった。
その後ベアトリーゼは、エルトに「剣の稽古をしてくれた礼」として、
新品の手袋を贈ってくれた。
私は姫様のご高配に……報いたかっただけだ。しかし、それすらも叶わないとは……。


――エルト、大丈夫か? 少し休んで行くか?
――エルト、お前のような騎士を持てて、私は幸せだ。
ベアトリーゼから投げかけられた温かい言葉の数々。
そのひとつひとつが、エルトの喜びであり、生きる希望になっている。
姫様のお優しさ……温かいお心に……なんとかして報いたい。
だが、天は私から、聖なる夜に感謝の気持ちを伝える機会を奪い去ってしまった。
今まで姫様から与えられた温情にわずかでも報いたかった……。
ダメだな、私は……。
エルト、前方に魔物の気配だ。
はっ。
エルトは、剣を抜き去るとベアトリーゼの盾になるように立ちはだかる。
――せめて、騎士としての役目を全うしよう。


姫様の剣となり、盾になれるのは私しかいないのだから。


(戦闘終了後)

エルトとベアトリーゼが生まれた〈ルクス=テルラ王国〉は――
今は、〈ファナトール帝国〉に支配されている。
現在、ベアトリーゼとエルトは、生まれ故郷に足を踏み入れることはできない。
愛すべき故郷は、人ならざる異形の者たちに蹂躙されているからだ。
囲まれているな……。
姫様、お下がりください。
帝国の追討から逃れてきたはずのエルトたちだったが――
今、ふたりの周囲は人ならざる者どもの無数の息遣いに満ちていた。
おぞましい殺気と臭気に、エルトの剣先が思わず震えた。
完全に囲まれている。せめて姫様だけでも……。
どんな絶望的な状況であっても、エルトの頭の中には、ベアトリーゼのことだけがあった。
エルト、お前は逃げるんだ。
まさか! そんなことできるわけありません! 姫様は、私が命をかけてお守りいたします。
これだけの数の敵、エルトひとりでは無理だ。帝国は、よほど我々が邪魔なのだろうな。
ひとつだけ、この危機を脱する手があるとするなら、これしかない――。
ベアトリーゼは、持っていた剣を胸の前で縦に構える。
その独特な構え……エルトには見覚えがあった。
〈ルクス=テルラ〉の王族に伝わる〈光の力〉――「綺光」。
ベアトリーゼは、剣と鎧に宿った「綺光」の力を解放しようとしているのだ。
姫様、いけません! その力を使っては、姫様ご自身のお身体が……。


エルト、巻き込まれないように、少しでも遠くに行くんだ! 早く!



姫様ああああああっ!

ベアトリーゼの身体が、まばゆい光に包まれる。
その光の力は、異形の姿をした帝国兵たちを巻き込み……。
全てを静寂の淵へと送り込んだ。

※話の最初に戻る
再び繋がる互の絆

〈ルクス=テルラ〉の王族に伝わる「綺光」の力の正体は誰も知らない。
王国を受け継ぐ者だけに密かに伝わる、最後の切り札とだけ知られていた。
姫様……。水を汲んできました。身体を起こせますか?
ああ……。
その威力は、圧倒的。
あれだけいた帝国の兵たちは、「綺光」のまばゆさにより、あっという間に消滅した。
危機は一瞬にして去ったのである。
ごほっ、ごほっ……。すまん。うまく飲めなくて。
いえ、私の飲ませ方がよくなかったのです。
それだけ強力な「綺光」の力を解放することは、ベアトリーゼの命を削りとるにも等しい。
この技を使ったあと、ベアトリーゼは自力で立てないほど衰弱してしまう。
姫様の口に水を少しずつ垂らしますので、少しずつお飲みください。
エルトは、必死にベアトリーゼを介抱した。
自分の無力さとベアトリーゼへの申し訳なさで、身体が燃え尽きそうになる。
だが、今は弱音など吐いてる場合ではなかった。
エルトが、口移しで飲ませてくれると嬉しいのだがな……。
お、お戯れを……。
ふふっ、露骨に動揺するエルトを見ているだけで、元気が沸いてくる。
姫様、こんな時にご冗談はおやめください……。
エルトも、ベアトリーゼに合わせて必死に笑顔を浮かべていた。
しかし、心の中は情けなさと後悔で一杯だった。
私は、なんのために姫様についてきたのだろう。
故郷を失い、帰る家がないから、姫様におすがりしているだけではないのか?
私などが、このまま姫様の側にいても、足手まといになるだけだ。
ならばいっそ、姫様の前から立ち去った方が……。


エルトの献身的な看護のかいあって――
ベアトリーゼは「綺光」を使った消耗から回復しつつあった。
大事をとって、今夜はこのままここで野宿いたしましょう。
そうだな……。
ベアトリーゼは、身体を地面に横たえながら、星空を眺めている。
冷たい風が、ふたりの身体を撫でていく。
そういえば、今夜は聖なる夜だったな。
はい……。
エルトは、懐に入っているぼろぼろの手袋のことを思い出して悲しい気持ちになる。
そういえば、用意していたものがあった。
それは?
ベアトリーゼは、まだ回復しきっていない身体を起こす。
そして、自分の荷物の中からリボンを取り出した。
こんなものしか用意できなかったが、私からのささやかな贈り物だ。受け取ってくれるか?
こ……これを、私に?
ああ、エルトにはいつも助けられている。その感謝の気持ちと思って受け取って欲しい。
も、もったいなきお言葉……!
エルトは、ベアトリーゼの手からリボンを受け取った。
いつもエルトが髪に巻いているものと同じ柄のリボンだが、素材は数段上の高級品だった。
おそらく、ベアトリーゼが王都にいた時から用意していてくれた物なのだろう。
リボン。
エルトの脳裏に、再び子供の頃の記憶が蘇る。
ベアトリーゼとふたりで剣の稽古をしていた時、ベアトリーゼの髪が邪魔そうだった時があった。
エルトは自分の髪を結ぶために使っていたリボンで、ベアトリーゼの髪を結んであげた。
その時、渡したリボンをベアトリーゼが気に入り――
王女の座に就くまで身に着けていてくれた時期があった。
(あの時のことを、姫様は覚えていてくれたのでは?)
姫様……。私は……。
胸の奥から熱い感情がこみ上げてきた。
せっかくだから、それを着けてみてくれないか?
いや、私がつけてやろう。それを貸してくれ。
ベアトリーゼは、慣れた手つきでエルトの髪をリボンでまとめた。
うん。とっても似合っているぞ。


昔……私が、姫様の髪を結んで差し上げたことがありました……。

なんだ、エルトも覚えていたのか。あの時のお返しがようやく出来た。

その言葉で、エルトはまたしても涙ぐみそうになる。
だが、ベアトリーゼの手前、部下である自分が泣くわけにはいかない。
王国が健在だった頃、私を守ってくれる騎士は大勢いた。
でも、昔から……そして今も、私が信頼を寄せる騎士は、エルトお前だけだ。
これからも、私と共にいてくれ。
ひ、姫様……。
我慢できなかった。
エルトは、ついにベアトリーゼの目の前で、堪えていた感情を崩壊させてしまった。
その夜、エルトはベアトリーゼに寄り添ったまま夜を明かした。


翌朝。
いい天気だ。
ベアトリーゼは、完全に復調していた。
その姿を見て、エルトはほっと胸を撫で下ろす。
あの……姫様。
エルトは、勇気を出してベアトリーゼに声をかけた。
その手には、渡す予定だったあの手袋がある。
それは手袋か?
エルトは、事情を説明した。
全てを聞いたベアトリーゼは、エルトの杞憂を豪快に笑い飛ばす。
そんなことでずっと暗い顔をしていたのか? 前に言ったはずだぞ。
もらう側ではなく、与える側の人間だったとな。
ですが、他人に与えていてばかりでは、いつか姫様の身の回りにはなにもなくなってしまいます。
それは考えてなかった。
いえ、差し出がましいことを申しました。この手袋のことは、忘れてください。
いや、これでいい。
と、ベアトリーゼは、エルトの手からボロボロの手袋を奪いとった。
姫様!
たまには物を送られる側になるのも、いいものだな。
ですが、その手袋は……。
いい。私はこれが気に入った。
と言ってベアトリーゼは、ボロボロに破れた手袋を懐にしまった。
そのベアトリーゼの優しさに、またしてもエルトは泣きたくなったが……。
来年の聖なる夜には、ちゃんとした手袋を送らせてください。
今からプレゼントが決まっているのは、待つ楽しみがないな。
あっ、いやっ、その……! やはり、来年までになにか考えておきます。
ふふっ、楽しみにしてるぞ。

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