エルト

 
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(SS)護衛騎士 エル(SS+)義勇の炎剣 エル(L)焔騎士の忠誠 エルト・ファレンツ
ASブレイジング・スピリットブレイジング・スピリットカーレット・オブリージュ
SS焔の信念灼鉄の忠誠灼鉄の忠誠
登場時期:2015/04/16 ウィズセレクションガチャ

ベアトリーゼエルト(クリスマスver)

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(SS)白雪の大義 ベアトリーゼ&エル(SS+)聖なる鐘と剣 ベアトリーゼ&エル(L)綺光と焔の絆 ベアトリーゼ&エル
ASカーレット・フォースホーリー・エリュシオンホーリー・エリュシオン
SSふたりを見守る聖星の輝きふたりを見守る聖星の輝き聖なる日に、心繋がるふたり
登場時期:2015/12/15 2015クリスマス期間 限定ガチャ 

共通情報

名前エルト・ファレンツCV-種族戦士
登場-
世界リベラ=ドミニア(現実が幻想に侵食される異界)
所属ルクス=テルラ王家 護衛騎士
特徴ワード烈火の忠魂
関連キャラベアトリーゼ
セリフ1「姫様……! このエルト、姫様のために、どこまでもお供いたします!」
セリフ2「わが剣に宿りし紅蓮の焔で、貴様を灰も残さず焼き払ってくれるッ!」
セリフ3「そ、そそそんな! 姫様から感謝の言葉をいただくだなんて、畏れ多いことですっ!」
補足情報テルラ家に代々使えるファレンツ家の騎士。
一家に伝わる<焔の魔剣技>を振るい敵を殲滅する。
ベアトリーゼとは幼馴染であり、愛称で呼び合う仲であったが、
今ではベアトリーゼに忠誠を誓う、第一の家臣となっている。

パーソナルストーリー


ウィズセレクションストーリーズ ~ エルト・ファレンツ編


亡国の姫ベアトリーゼと共に、魔物討伐に赴く護衛騎士エルト。
祖国を取り戻すため、義勇軍となって各地を巡る彼女たち。
エルトは敬愛する主君を守るべく、その剣に忠誠の焔を宿す──!



その異界の名は──〈リベラ=ドミニア〉。
この地では、大国〈ファナトール帝国〉が諸国を侵略し、人々を武力によって支配していた。
ベアトリーゼ・テルラ──彼女もまた帝国に祖国を侵略され、国を追われた身である。
祖国の奪還のために、そして帝国に虐げられる人々を救うために、各地を巡るベアトリーゼ
その彼女を影から支えているのが……。
姫様、帝国の放ったドラゴンは、この辺り一帯のどこかに出現するとのことです。
ありがとう、エルト。どうやら事前の情報に間違いはなさそうだな。
他国征服に魔物を使役するとは……帝国め! その悪逆、決して許せるものではない。
すぐに討伐に向かうぞ、エルト!
エルトのファレンツ家は、テルラ王家に代々仕える騎士の家系である。
王の剣となり、盾となり、そして時として忠言によって主君を諌めることがエルトの使命なのだ。
特にエルトは、ベアトリーゼの幼馴染ということもあり、絶対の信頼を置かれている。
ハッ! 我が炎の剣で、姫様の敵を討ち取ってご覧にいれましょう!


……ところでエルト、足の矢傷はもう大丈夫なのか?
はい、姫様に助けていただいたおかげで、この通り大事には至っておりません。
そう言ってエルトは、地面につまさきをトントンと軽快に打ってみせた。
エルトは、帝国軍の追っ手から逃れるさなかに、足に矢を受け、重傷を負ったことがあった。
しかし、窮地に立たされたその時、ベアトリーゼが〈綺光〉の力で敵を一掃し、難を逃れたのだ。
あの時は、姫様をお守りするはずが、逆に私が守られるという失態……本当に、申し訳……。
よしてくれ、エルト。友を守るのに理由も義務も関係ない。私がそうしたいと思っただけだ。
姫様……! このエルト、姫様のために、どこまでもお供いたします!
ベアトリーゼの言葉に、エルトは感極まり、その場で彼女に恭しく跪いた。
はは、エルトは相変わらず固いな。昔は、私をリーゼと呼ぶくらい気安かったのにな。
そ、そそそれは子供の時の話です! あの頃は、分をわきまえることもしらず、私は……。
慌てふためくエルトを見て、苦笑するベアトリーゼ
その時だった──。
──っ! エルト! 伏せろ!
……え?


グオオオオオオ!!

不意をつくように現れたドラゴンの凶爪が、エルトを襲う!
くうっ!
エルトを庇うようにして、ベアトリーゼがドラゴンの攻撃を受ける。
ひ、姫様ーー!!
ドラゴンは、倒れ伏すベアトリーゼに再び爪を振り下ろそうと、地響きを立てて近づく。
だがそこに──。
貴様ァァァ! よくも姫様をッ!! 許さない……! 絶対に許さんぞッ!!
エルトの剣から、灼熱の炎が迸り、凄まじい熱風が吹き荒れる。
文字通り炎をまとったエルトが、烈火のごとく憤激し、目の前のドラゴンを威圧する。
わが剣に宿りし紅蓮の焔で、貴様を灰も残さず焼き払ってくれるッ!
焔をまとう剣を手に、エルトがドラゴンに突撃する!

(戦闘終了後)

魔物風情がッ! これでトドメだッ!
グオ……オオオ……。
エルトに斬り裂かれたドラゴンは、炎に焼かれ、ついには灰となって消滅した。
ファレンツ家の騎士のみが扱える〈焔の魔剣技〉か……。見事だったぞ、エルト。
姫様! ご無事ですか!? お怪我は!? 媛様! 姫様ッ!!
落ち着け、私はこの通りなんともない。
しかし、あのドラゴンを一人で倒してしまうとはな。私が加勢する暇もなかったぞ。
も、申し訳ありません……つい頭に血が上ってしまい……。
はは、気にするな。おかげでドラゴンの討伐は無事完了した。
今回はお前に助けられたな。ありがとう、エルト。
そ、そそそんな! 姫様から感謝の言葉をいただくだなんて、畏れ多いことですっ!
慌てふためいたエルトは、ベアトリーゼに跪き、深く頭を垂れた。
本当におおげさだな、エルトは……。幼い頃の可愛げはどこにいったのだろうか……。
あの、姫様? 何か……?
さて、な。さあ、帰るぞ。次なる戦場が私たちを待っている。
帝国を打ち倒し、祖国を取り戻すその日まで、お前には私と共に来てもらうぞ、エルト。
はっ! この命、そして我が焔の剣は、姫様と共に!
烈火の騎士は、敬愛する主君と共に、戦乱の道を歩み続ける。
いつの日か主君と共に、故郷へと帰還する、その時まで──。
我が焔の剣は、姫様の御身を守るために!

※話の最初に戻る

見つめ合うふたり

異界――〈リベラ=ドミニア〉。
またの名を〈現実が幻想に浸食される異界〉。
この世界は、現在、人ではない異形の者たちの〈ファナトール帝国〉に支配されている。
姫様、少し休憩しましょう。
エルトは、足を止めて背後にいる主人を振り返った。
いや、まだ大丈夫だ。私はまだ歩ける。
最中の険しい道を、半日以上歩き詰めだ。疲れていないはずがない。
それでも、ベアトリーゼエルトに疲れた表情一つみせない。
身を隠すにはうってつけの洞窟を見つけました。ここなら、帝国兵をやり過ごせるはずです。
物音がして、とっさにエルトはベアトリーゼをかばう。
まさか、もう帝国の兵どもに追いつかれたのか。
……身を隠した方が良さそうだな。
ここは、死に場所ではありません。国と民を救うためにも、ご辛抱ください。
ベアトリーゼは、短くうなずくと暗い洞窟の中に身を滑りこませる。
中は意外と寒いですね。地面には水が滴っていて……腰を下ろす場所もない。
エルトはがっくり肩を落とした。
こんな場所で一夜を明かすのは無理です。ここを選んだのは、間違いでした。
敵の虜囚となるよりは、ここの方が全然ましだ。
洞窟の外では、怪しげな気配がうごめく物音が、絶えず聞こえてくる。
帝国の追っ手が、ベアトリーゼエルトを追討するべく探し回っているのだ。
姫様。狭苦しいところですが、今しばらくのご辛抱を……。
このぐらいなんでもない。エルト、お前が一緒だからな。
暗闇の中でもエルトには、ベアトリーゼの相貌がはっきりと見えた。
曇りのない瞳に見つめられて、エルトはつい目を逸らしてしまう。
見つめないでください……。
なぜだ? エルト、私の目を見て、ちゃんと答えてくれ。
お、お戯れを……。
そういった反応は、いつものこと。
ベアトリーゼは、わかっていながらエルトをからかっているのだ。
外の気配が消えたことにエルトは気づく。
帝国兵たちをやり過ごせたのかもしれない。
だがもうしばらく、この湿った洞窟に潜んでいた方がいいだろう。
そういえば……。
唐突にベアトリーゼが、つぶやいた。
明日は……聖なる夜だな。
そう……ですね。
洞窟の入り口から見える暗い夜空。
見上げるふたりの瞳には、別々の感情が湛えられていた。


帝国兵が周囲にいないことを確認してから、エルトはベアトリーゼの手を引いて洞窟を出た。
エルトは、すぐさま安全な場所で小さな火を起こして主人に暖を取らせた。
懐かしい……。国王が健在であられた時は、国をあげて祝ったものだ。
私も鮮明に覚えています。24日は、ルクス=テルラ王国あげてのお祭りでした。
本当に幸せで……穏やかな日々だった。
今はなき、国王――父親を思い出したのか、ベアトリーゼは優しい顔つきになっていた。
姫様は、聖なる夜にもらったプレゼントで、なにか思い出深いものはございますか?
いやない。プレゼントを贈る習慣があるのは知っていたが、私は毎年与える側だったからな。
あ、そういえば……。
エルトは思い出した。
毎年聖なる夜には、王国全ての孤児院に大量のプレゼントが送られていることを。
あれは全て、王女ベアトリーゼと国王が、私財を投げ打って送っていたのだ。
王族は、民の幸せのために存在するのだというのが父上……いや、国王のお教えだった。
では、姫様はこれまで一度も、聖なる夜にプレゼントを受けとったことはないのですか?
そうなるな……。
……そうですか。
エルトは、背中に何かを隠し持つような仕草をした。
どうした?
いえ。なんでもありません。
エルトの様子は明らかにおかしかった。
しかし、ベアトリーゼの注意は、全く別のところに向けられていた。
あ、あの姫様……?
いつの間にか、ベアトリーゼの目が険しくなっている。


魔物だ……。我々の火に気づいたらしい。

魔物――!?

凶暴な気配が近づいてくる。
ベアトリーゼは、とっさに自分の剣を掴んで戦闘態勢を取った。

(戦闘終了後)

エルトの剣は、魔物を一刀両断した。
見事だエルト。
姫様、お怪我はございませんか?
主人の様子を確かめるために、エルトはいま切り捨てたばかりの魔物に背を向けた。
その隙を突いて――虫の息だった魔物が、再び顔をあげる。
エルト!? まだそいつは生きているぞ!
なっ!?
起き上がった魔物の一撃が、エルトに襲いかかる。
ベアトリーゼは、とっさの判断でエルトを突き飛ばし――
剣を振り下ろして、魔物に止めを刺した。
エルト、怪我はないか?
姫様のおかげで、かすり傷程度で済みました。
むしろ私が油断したせいで、姫様のお手を煩わせてしまい、申し訳ありません。
エルトが無事だったのだから、それでいい。
ベアトリーゼの温かい言葉に、エルトは思わず涙ぐみそうになる。
その時、エルトは気づいた。
先ほどの魔物の不意打ちで、背中に隠していたある物が、無残にも切り裂かれている事に。
そんな……。
背中に隠していた手袋は――見るも無残な姿になっている。
それを見ながら、エルトは絶望していた。
他の魔物も寄ってくるかもしれない。今のうちに、ここを離れた方がいいな。
エルト、行くぞ。どうした?
え? あ、いえ……なんでもございません。すぐにこの場を離れましょう!
エルトは、平静を装って返事をしたが、心の中は乱れに乱れている。
魔物に切り裂かれた手袋は聖なる夜に――
ベアトリーゼに送ろうと思っていたエルトからのプレゼントだった。
破れた手袋など、姫様にプレゼントできるわけがない……。
今から新しいプレゼントを用意するのは、無理だ。どうしたらいい……?

※話の最初に戻る
繋がりを求めて

エルトは、魔物に切り裂かれた手袋を捨てられずにいた。
なぜあの時、魔物をちゃんと仕留めておかなかったのだ?
自分の未熟さに怒りが湧き上がる。
くそっ……。
エルト……エルト?
呼ばれていることに気づき、とっさに顔を向ける。
し、失礼しました姫様!
どうしたんだ? 昨夜から様子がおかしいぞ。
ひょっとして、昨夜のことで自分を責めているのではあるまいな?
昨夜のことなど悔いておりません。もう忘れました。……忘れることにします。
と言いながら、エルトは破れた手袋を懐にしまい込む。
――エルト、お前のその手袋、ボロボロじゃないか。
唐突に、エルトの脳裏に昔の思い出が蘇った。
剣の稽古に熱中するあまり気付かなかっただと?
お前は面白いやつだな? ひとつ、私の剣の相手をしてくれないか?
王国が健在だった頃の昔の記憶。
エルトもベアトリーゼも、まだ子供だった。
その後ベアトリーゼは、エルトに「剣の稽古をしてくれた礼」として、
新品の手袋を贈ってくれた。
私は姫様のご高配に……報いたかっただけだ。しかし、それすらも叶わないとは……。


――エルト、大丈夫か? 少し休んで行くか?
――エルト、お前のような騎士を持てて、私は幸せだ。
ベアトリーゼから投げかけられた温かい言葉の数々。
そのひとつひとつが、エルトの喜びであり、生きる希望になっている。
姫様のお優しさ……温かいお心に……なんとかして報いたい。
だが、天は私から、聖なる夜に感謝の気持ちを伝える機会を奪い去ってしまった。
今まで姫様から与えられた温情にわずかでも報いたかった……。
ダメだな、私は……。
エルト、前方に魔物の気配だ。
はっ。
エルトは、剣を抜き去るとベアトリーゼの盾になるように立ちはだかる。
――せめて、騎士としての役目を全うしよう。


姫様の剣となり、盾になれるのは私しかいないのだから。


(戦闘終了後)

エルトとベアトリーゼが生まれた〈ルクス=テルラ王国〉は――
今は、〈ファナトール帝国〉に支配されている。
現在、ベアトリーゼエルトは、生まれ故郷に足を踏み入れることはできない。
愛すべき故郷は、人ならざる異形の者たちに蹂躙されているからだ。
囲まれているな……。
姫様、お下がりください。
帝国の追討から逃れてきたはずのエルトたちだったが――
今、ふたりの周囲は人ならざる者どもの無数の息遣いに満ちていた。
おぞましい殺気と臭気に、エルトの剣先が思わず震えた。
完全に囲まれている。せめて姫様だけでも……。
どんな絶望的な状況であっても、エルトの頭の中には、ベアトリーゼのことだけがあった。
エルト、お前は逃げるんだ。
まさか! そんなことできるわけありません! 姫様は、私が命をかけてお守りいたします。
これだけの数の敵、エルトひとりでは無理だ。帝国は、よほど我々が邪魔なのだろうな。
ひとつだけ、この危機を脱する手があるとするなら、これしかない――。
ベアトリーゼは、持っていた剣を胸の前で縦に構える。
その独特な構え……エルトには見覚えがあった。
〈ルクス=テルラ〉の王族に伝わる〈光の力〉――「綺光」。
ベアトリーゼは、剣と鎧に宿った「綺光」の力を解放しようとしているのだ。
姫様、いけません! その力を使っては、姫様ご自身のお身体が……。


エルト、巻き込まれないように、少しでも遠くに行くんだ! 早く!



姫様ああああああっ!

ベアトリーゼの身体が、まばゆい光に包まれる。
その光の力は、異形の姿をした帝国兵たちを巻き込み……。
全てを静寂の淵へと送り込んだ。

※話の最初に戻る
再び繋がる互の絆

〈ルクス=テルラ〉の王族に伝わる「綺光」の力の正体は誰も知らない。
王国を受け継ぐ者だけに密かに伝わる、最後の切り札とだけ知られていた。
姫様……。水を汲んできました。身体を起こせますか?
ああ……。
その威力は、圧倒的。
あれだけいた帝国の兵たちは、「綺光」のまばゆさにより、あっという間に消滅した。
危機は一瞬にして去ったのである。
ごほっ、ごほっ……。すまん。うまく飲めなくて。
いえ、私の飲ませ方がよくなかったのです。
それだけ強力な「綺光」の力を解放することは、ベアトリーゼの命を削りとるにも等しい。
この技を使ったあと、ベアトリーゼは自力で立てないほど衰弱してしまう。
姫様の口に水を少しずつ垂らしますので、少しずつお飲みください。
エルトは、必死にベアトリーゼを介抱した。
自分の無力さとベアトリーゼへの申し訳なさで、身体が燃え尽きそうになる。
だが、今は弱音など吐いてる場合ではなかった。
エルトが、口移しで飲ませてくれると嬉しいのだがな……。
お、お戯れを……。
ふふっ、露骨に動揺するエルトを見ているだけで、元気が沸いてくる。
姫様、こんな時にご冗談はおやめください……。
エルトも、ベアトリーゼに合わせて必死に笑顔を浮かべていた。
しかし、心の中は情けなさと後悔で一杯だった。
私は、なんのために姫様についてきたのだろう。
故郷を失い、帰る家がないから、姫様におすがりしているだけではないのか?
私などが、このまま姫様の側にいても、足手まといになるだけだ。
ならばいっそ、姫様の前から立ち去った方が……。


エルトの献身的な看護のかいあって――
ベアトリーゼは「綺光」を使った消耗から回復しつつあった。
大事をとって、今夜はこのままここで野宿いたしましょう。
そうだな……。
ベアトリーゼは、身体を地面に横たえながら、星空を眺めている。
冷たい風が、ふたりの身体を撫でていく。
そういえば、今夜は聖なる夜だったな。
はい……。
エルトは、懐に入っているぼろぼろの手袋のことを思い出して悲しい気持ちになる。
そういえば、用意していたものがあった。
それは?
ベアトリーゼは、まだ回復しきっていない身体を起こす。
そして、自分の荷物の中からリボンを取り出した。
こんなものしか用意できなかったが、私からのささやかな贈り物だ。受け取ってくれるか?
こ……これを、私に?
ああ、エルトにはいつも助けられている。その感謝の気持ちと思って受け取って欲しい。
も、もったいなきお言葉……!
エルトは、ベアトリーゼの手からリボンを受け取った。
いつもエルトが髪に巻いているものと同じ柄のリボンだが、素材は数段上の高級品だった。
おそらく、ベアトリーゼが王都にいた時から用意していてくれた物なのだろう。
リボン。
エルトの脳裏に、再び子供の頃の記憶が蘇る。
ベアトリーゼとふたりで剣の稽古をしていた時、ベアトリーゼの髪が邪魔そうだった時があった。
エルトは自分の髪を結ぶために使っていたリボンで、ベアトリーゼの髪を結んであげた。
その時、渡したリボンをベアトリーゼが気に入り――
王女の座に就くまで身に着けていてくれた時期があった。
(あの時のことを、姫様は覚えていてくれたのでは?)
姫様……。私は……。
胸の奥から熱い感情がこみ上げてきた。
せっかくだから、それを着けてみてくれないか?
いや、私がつけてやろう。それを貸してくれ。
ベアトリーゼは、慣れた手つきでエルトの髪をリボンでまとめた。
うん。とっても似合っているぞ。


昔……私が、姫様の髪を結んで差し上げたことがありました……。

なんだ、エルトも覚えていたのか。あの時のお返しがようやく出来た。

その言葉で、エルトはまたしても涙ぐみそうになる。
だが、ベアトリーゼの手前、部下である自分が泣くわけにはいかない。
王国が健在だった頃、私を守ってくれる騎士は大勢いた。
でも、昔から……そして今も、私が信頼を寄せる騎士は、エルトお前だけだ。
これからも、私と共にいてくれ。
ひ、姫様……。
我慢できなかった。
エルトは、ついにベアトリーゼの目の前で、堪えていた感情を崩壊させてしまった。
その夜、エルトはベアトリーゼに寄り添ったまま夜を明かした。


翌朝。
いい天気だ。
ベアトリーゼは、完全に復調していた。
その姿を見て、エルトはほっと胸を撫で下ろす。
あの……姫様。
エルトは、勇気を出してベアトリーゼに声をかけた。
その手には、渡す予定だったあの手袋がある。
それは手袋か?
エルトは、事情を説明した。
全てを聞いたベアトリーゼは、エルトの杞憂を豪快に笑い飛ばす。
そんなことでずっと暗い顔をしていたのか? 前に言ったはずだぞ。
もらう側ではなく、与える側の人間だったとな。
ですが、他人に与えていてばかりでは、いつか姫様の身の回りにはなにもなくなってしまいます。
それは考えてなかった。
いえ、差し出がましいことを申しました。この手袋のことは、忘れてください。
いや、これでいい。
と、ベアトリーゼは、エルトの手からボロボロの手袋を奪いとった。
姫様!
たまには物を送られる側になるのも、いいものだな。
ですが、その手袋は……。
いい。私はこれが気に入った。
と言ってベアトリーゼは、ボロボロに破れた手袋を懐にしまった。
そのベアトリーゼの優しさに、またしてもエルトは泣きたくなったが……。
来年の聖なる夜には、ちゃんとした手袋を送らせてください。
今からプレゼントが決まっているのは、待つ楽しみがないな。
あっ、いやっ、その……! やはり、来年までになにか考えておきます。
ふふっ、楽しみにしてるぞ。

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