ファーブラ軍への合流
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![]() 卿、名をなんと言ったかな。 | ||
君はふとルヴァルに呼び止められ、足を止めた。 | ||
天の使い〈ファーブラ〉の指揮官──ルヴァル・アウルム。 | ||
ディートリヒ同様、欠点のない見目形をしているが、彼は優しげな空気を醸している。 | ||
君は、自分の名前、ウィズの名前を名乗った。 | ||
![]() | ははは──失礼。卿は愛猫に名前をつけているのか。この地の人間にしては、珍しい。 | |
愛猫ではない、と君は否定する。ウィズは、自分の師匠だ、と以前のように口にした。 | ||
![]() | 重ね重ね異なことを。卿、よもや私をからかっているのか? | |
![]() ……アウルム卿。 | ||
![]() | プルミエ。何かあったのか。 | |
プルミエ、と呼ばれた女性がいつの間にか、ルヴァルの背後に控えていた。 | ||
ここの人たちは、音もなく現れるのが好きらしい、などと君は思う。 | ||
![]() | ディートリヒ・ベルクがアウルム卿にお会いしたい、と。 | |
![]() | 構わん。通しなさい。 | |
![]() | ……はい。 | |
天の使い、というのも頷ける。 | ||
羽が生えているとか、そう教えられたからとか、そんなレベルの話ではない。 | ||
オーラのような、あるいは超常的な空気感のようなものを、彼らは持っている。 | ||
![]() 相も変わらず、貴君らは私を毛嫌いしているらしい。 | ||
ディートリヒ・ベルクが姿を見せると、戦艦の空気が一変する。 | ||
今にも切れてしまいそうな張り詰め方に、君は息苦しさを覚えた。 | ||
卿はそれを自覚してなお、態度を改めるつもりはないようだ。 | ![]() | |
![]() | そうするだけの理由がない。 | |
して、用件は? アウルム卿は、お前と違って暇ではない。 | ![]() | |
![]() | 血の気の多いのは結構だが、戦場で野垂れ死ぬ間抜けは見せてくれるな。 | |
煽るようにディートリヒが言うと、プルミエが自らの剣に手を伸ばした。 | ||
用件だけを言いたまえ。卿がここにいると、皆平静を失う。 | ![]() | |
そんなまるで人を悪魔のように言わないでも、と君は思った。 | ||
悪魔であるなら、幾分もマシなのだがな。 | ![]() | |
まるで心を読んだかのように、ルヴァルがそう言った。 | ||
![]() | 貴君らは3日後、シャルルリエ軍団、竜騎〈ウォラレアル〉に合流してもらう。 | |
![]() | 内容は言うまでもないだろうが、〈イグノビリウム〉が占領する拠点を落としてもらいたい。 | |
……そういえばここの船、人が少なすぎるにゃ。 | ![]() | |
〈ウォラレアル〉も同様だが、ドルキマス国軍とは違い、戦力に限りがある。 | ![]() | |
〈イグノビリウム〉が現れて以降、それを危険視したルヴァルが止めるために来たのだという。 | ||
神や天使も暇な生活を送っているわけではない。 | ||
なにも彼ら人間を救うためだけに働いているわけでもない。 | ||
だからこの件に割ける人数も限られていた。 | ||
![]() | 貴君らに心酔する者は、決して少なくない。それを使うといい。 | |
人を使う、などと貴様、何を驕っている。 | ![]() | |
プルミエ、卿は下がっていなさい。どうにも卿は彼に噛みつくきらいがある。 | ![]() | |
![]() | その地には我々が戦うにあたり、取り逃してはならない資源がある。 | |
ディートリヒが地図を広げて、拠点のある場所を指し示した。 | ||
なるほど。ここを落とせば、山を越えることができ、さらにはその先の造船国を利用できる、と。 | ![]() | |
![]() | 然りだ。〈イグノビリウム〉によって囚われているものの、人間は生きていると聞く。 | |
拠点を落としてしまえば、人を解放し、ドルキマスに取り込むことができる。 | ||
小国……ドルキマスだけでは限界であった戦艦の増強ができる……ということだろうか。 | ||
卿は、やはり生まれる世界を違えた男であるな。まるで悪魔のごとき思想だ。 | ![]() | |
![]() | 対して貴君は言動も思考も凡庸たる、まるで人間だ。せいぜい人を使いたまえよ。 | |
……船があり、人がいれば戦力差を乗り越え、"どうとでも"なると言いたいようだ。 | ![]() | |
唖然とする君に向けて、ルヴァルは言う。 | ||
![]() | シャルルリエ中将が最も好む戦法ではある。そしてそれはドルキマスに合致した戦い方でもある。 | |
![]() | 励みたまえよ。私を落胆させてくれるな、アウルム卿。 | |
ディートリヒが背を向けたのを見て、君は胸を撫で下ろす。 | ||
![]() | プルミエ。 | |
![]() | はい。では魔法使い殿、此度の戦について、最も重要なことを1点、説明させてもらう。 | |
どこかで待機していたらしいプルミエが再び現れ、開口一番、そんなことを言った。 | ||
![]() | 単純な話をすると、拠点を落とすことにあるのだが、これは知っての通り容易ではない。 | |
〈イグノビリウム〉には攻撃がきかない、というような話を聞いた覚えがある。 | ||
敵戦艦に対して、こちらの戦艦の攻撃が通らないのでは、まるで意味がないとさえ思えた。 | ||
それは人が百万いようが千万いようが変わらない、歴然とした"差"だ。 | ||
![]() | 卿の言いたいことはわかるが、ひとつ確実な方法が人間にはある。 | |
![]() | 船同士をぶつけ、彼らの動きを止めた後、そこに乗り込み切り崩す。非常に単純な戦法だ。 | |
にゃ!? ぶつけるのかにゃ!? | ![]() | |
![]() | 〈イグノビリウム〉の戦艦を損壊させるのは、我々だけであれば容易だ。 | |
![]() | しかし我々は人数も少なく、あれらの物量を考慮すると、それは得策とはいえない。 | |
![]() | そして幸か不幸か、彼らは生身の肉体であれば、人間同様、傷がつく。 | |
……それはつまり。 | ||
![]() | そう、人であっても彼らを倒せるということ。 | |
プルミエの言葉に、ルヴァルが頷く。 | ||
あまりにも危険な賭けに思えた。 | ||
なにせ、過去にもそれを知って突撃したであろう軍、いや国があったはずだからだ。 | ||
彼らの言が事実であるならば、それらは既に〈イグノビリウム〉に支配されている。 | ||
![]() | もはや人間には、それ以外の有効な手段がないということだ。 | |
![]() | 卿、恐れることなく戦うというのなら、我々と共に来てほしい。 | |
だけど君も、ここにきて退くことはできなかった。 | ||
既に戦う意志は告げている。それならば、とにかくやらなければならない。 | ||
![]() よい瞳をしている。私が知る、戦士の瞳だ。 |
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