プルミエ

強すぎる力は、悲劇を生む。
本人の意図に関わらず、望まぬ地獄を世にあらわす。
その歪みを断ち切ることは、力の主自身にすらできない……


「おまえの因果を、打ち砕く」


蒼い双剣を手にした翼ある乙女が、冷然と告げる。
目の前には、醜い姿の怪物がいた。

怪物は、かつては人間の戦士だった。
彼は、恋人を救うため、大いなる力を求めた。
そして、苦難の果てにその力を得て、敵の軍勢を吹き飛ばしたのだ。
大きすぎる力ゆえに――救うはずだった恋人ごと。


「歪んだおまえの宿業を、斬り砕く」


なおも暴走する力のために、もはや理性もない怪物に、言う。

右手には、天剣《ベク・ド・コルヴァン》。
戦場を馳せる魔鳥のくちばしのごとく、敵を穿つ。

左手には、神剣《クー・ド・グラース》。
力の悲劇、歪んだ因果、そのすべてにとどめを刺す。


「解放しよう――おまえを縛る、すべてから」


冷徹な光が、翼ある乙女の眼に宿る。
だが、その光は別の名を持ってもいた。

――〝慈悲〟という名を。


「因果、宿業、輪廻、運命――あまねく我が手で無に帰さん！」

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