風船少女ナナがゆく!

 
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■プロローグ■

一大イベントを控えたある日のこと。
君はバロンに呼ばれ、彼の手伝いをさせられていた。
次はここだ。各地からギルドマスターをはじめ、中央の人間も多く来るからな。気を抜くな。
イベントとは、クエス=アリアス全土を巻き込んだ魔道杯のことだ。
今までとは規模が違う、と聞かされ、君は妙に緊張していた。
普段は見かけない装飾や、魔道士たちのまとう雰囲気がそれをさらに膨れ上がらせる。
いいか、そもそも今回の催しは、未だかつてない魔道士のための──。
(また始まったにゃ)
肩に乗ったウィズが小さく呟く。
君は苦笑して空を見上げた。今日も快晴だ。
空は青く、雲は白く、
風船少女が空を飛び──。


──っ!?

風船少女が空を飛んでいる!

君は思わず二度見してしまった。
ほう。これは珍しい。
いつの間にかバロンが君の隣に並び、空を飛ぶ少女を見ていた。
彼女を見ることができた魔道士は、例外なく大成すると言われている。
いったいあの人は? 君はそんな疑問をバロンに投げかける。
彼女は魔道士──だが、中でも"特別な"存在だ。
特別──君はふと四聖賢の名前を思い浮かべた。
かの四聖賢ほど多方面に秀でた魔法を使うわけではないのだが……。
バロンはどこか楽しげに口を開く。
まるでお伽話や空想を語る少年のような瞳だ。
とある魔道の分野において"奇想天外の大魔道士"とも呼ばれる彼女の名前は──。
そこでふと風船がひとつ音を立てて割れ──。
途端に彼女が姿を消した。
君は驚きに目を見開き、バロンに目を向けたが……。
ふん、そこを含めて彼女は特別なのだ。
一羽の鳥とともに空を飛ぶ魔道士……ナナ・クラリィ。
これは、一大イベントに向けて奔走する、そんな彼女の物語。

■〈異界移動〉の少女編■



さてさて……。

ナナ・クラリィは、普通の魔道士では持ち得ない特殊な力を有していた。
ここはどこでしょう? モーリーおじさま。
ナナと一緒に旅をするドードー鳥のモーリーは、背筋を伸ばして周囲に目を向けていた。
…………。
なるほどー。わかりませんかぁ。
この異界でモーリーおじさまの奥さま見つかるといいですね~。
でも見渡すかぎりの草原。ここに奥さまがいるといいのですけど……。
モーリーの妻がどこかへ旅立ってから数年。
ナナとモーリーはこうして〈異界〉を回っているが、一向に見つからず……。
…………。
ふむふむ。まずはお仕事をしなさい、ですか。
そうですね。わたしもお仕事をしないと、生活ができませんから。中央にも怒られますし。
一大イベント──大魔道杯に向けて、様々な異界の住人と出会い、その力を借りる。
その住人と契約し、力を呼び出すことで「精霊」として様々な力を発揮してくれる。
ナナの受けた依頼は、異界の住人の力を借りることであった。
ナナ・クラリィは様々な〈異界〉に飛べる、特別な魔道士であった。
精霊たちの力、あるいはそれが悪しきものではないかを見極めるのも、彼女の大切な仕事だ。
精霊の力は、大魔道杯に参加し、めざましい活躍をした魔道士たちに与えられる。
さあ、この異界にはどなたか素敵な方はいますかね~?
〈異界移動〉は、ごく一部の例外を除き、使用することのできない特殊な魔法のひとつだ。
これを可能とするナナでさえ、〈異界移動〉をする際には様々な制限があるのだが──。
お……見つけましたよ、モーリーおじさま。
…………。
そうですね、なんだかとっても強そうです。
……とても危険そうな武器を持っています。モーリーおじさま、先にいってくれますか?
……!?
もー、冗談ですよ、冗談。だから風船を割ろうとしないでください。"飛ばされ"ちゃいますよ。
風船はナナの魔力が込められたものだ。一年に数個しか作ることができない。
そしてこれがなければ、〈異界移動〉はできないのだ。
とにかくお話だけでも聞いてみましょう! さあ、いきますよ!




風が……鳴いている。

ナナは、先ほど見かけた彼に近づき、声をかけた。
すみませーん!
……お前誰だ? ここの人間じゃない。
わたし、このモーリーおじさまの奥さまを探しているんですけど、みかけませんでしたか?
知らない。ドゥンバの森では、見たことがない。
うーん、残念でしたね。モーリーおじさま。
……! ……。
あっ、そうでした。自分の仕事をしなければ……。
ナナドゥンバに向き直り、再び口を開く。
お悩み事はありませんか?
……。
ドゥンバは訝しげに目を細めた。
わたし、人々のお悩みを解決しなければいけなくて。
ない。ドゥンバは悩まない。


おいおい、勇敢な戦士がそんな嘘をついていいのか?

突如として響いた声。
ナナは驚き振り返った。
姉さんと喧嘩して、帰るに帰れないんだろ?
声の主は、すらしとした女性だった。
その話は……しない約束だ。
わたしが解決しましょうか?
へえ、よそ者のアンタにそんなことができるのかい?
ボネット、余計なことを言うな。
ドゥンバをやや苛立っているように見える。
どこからきたお嬢さんかは知らないが、まあ悪い子じゃなさそうだ。話しぐらい聞いてやんな。
それとも何か? 嫁が鳴いているだなんだといって、逃げるのか?
鳴くのは……森だ。
ボネットはケラケラと笑いながら、ドゥンバから視線を外した。
助けてくれるっていうのはありがたいが、お嬢さんはいったいどうしてそんなことをしてるんだ?
見るからにここの住人ってわけじゃなさそうだ。そのあたりを教えてくれないか?
あっ! そうでした。とても大切なことでした。
さてさて、どこからお話ししましょうか。少し長くなりますが──。
……魔物だ。魔物の気配がする。
ナナの言葉を遮ったドゥンバが、武器を構えた。
あいつらを倒したら、たっぷり聞かせてくれ。
仕方ありません。戦うのは好きではありませんが、わたしも力をお貸ししましょう!

(戦闘終了後)

なるほどな。それでアンタは強そうなやつを探してるってわけか。
はい。お力を借りる代わりに、悩み事を解決しちゃいます。
自分が魔道士であること、遠いところからやってきたこと……。
そしてここに来た目的をかいつまんで説明した。
モーリーおじさまも、頑張ってお悩み解決するって言ってくれてます。ね?
…………。
え? ドゥンバさんの鼻が長すぎるって? ダメですよ、失礼なこと言っちゃ。
で、嫁さんと仲直りするいい方法でもあるのかい?
うーん……。
家に……帰れない。
ドゥンバのその言葉は、あまりにも切実すぎた。
モーリーおじさま、何かいいアイデアある?
…………。
おお、なるほど。その手がありましたか。
……どんな手だ。金はかかるのか?
がめついやつだな。だからガイドの仕事も減ってきてるんじゃないのか。
わたしの国には、幸せの果実の言い伝えがあって……ええっと……確かどこかに……。
ナナは風船をどけて、乗ってきたゴンドラの奥底を探る。
着替えや枕、お弁当にモーリーのベッドもこの中にある。
あっ! ありました! これです! 見てください!
うちの家庭菜園で作っていて、モーリーおじさまの大好物なのです。
……。
それは自分のだって? もう、モーリーおじさま、さっきも食べたでしょう?
それをドゥンバにくれるのか?
そうです。わたしの国では特別な日に食べる特別な果物なのです。仲直り待ったなし。
……感謝する。少女の戦士よ。
大きな果実を、ドゥンバに手渡す。
その代わり、お力を貸してほしいのです。
気に入った。あたしもアンタの力になろう。
え? でも、わたしボネットさんのお悩みを解決していませんよ?
いいんだよ、そんなことは。ドゥンバ共々、この力を好きに使ってくれ。
……ドゥンバは、まだやるとは言っていない。
それ受け取っておいてそんなこと言ってんじゃないよ、ドゥンバ
ボネットドゥンバの背を、どんっと叩いた。


任せておきな。何かあったらすぐ頼ってくれ。

ありがとうございます。嬉しいです。あの……。
──言葉を続けようとしたその瞬間。
バァン──と大きな音を立てて、風船が割れた。
あっ──。

瞬間、ナナの視界が真っ白になって……。

やがてドゥンバボネットの声が聞こえなくなってしまった。

■小さな無敵の海賊編■

いたたた……。
尻もちをついたナナが、木に手をかけて立ち上がる。
あの特殊な風船をモーリーが割ると、別の異界に飛ばされてしまう。
モーリーがいてこそ成り立つ特殊な魔法〈異界移動〉──飛ぶ場所まではわからない。
……も、森?
木々が立ち並び、その隙間から陽光が入り込んでいる。
どこか幻想的な色合いと空気が漂い、モーリーは喜びに羽をばたつかせていた。
おい! それはピレットが狙ってた木だ! はやくその手をどけろ!
ウキッ! ウキッキー!
わあ、可愛らしい女の子とお猿さん!
可愛らしいなんてひどい侮辱だ! 無敵の海賊ピレット・チャップだ!
ウキキー!
……ごめんなさい。ええとピレットちゃん……とモチピさん。
…………。
モーリーおじさまも、ごめんって言ってます。
わかればいいんだ、わかれば──ってお前、モチピの言葉がわかるのか!
小さな海賊、ピレット・チャップが驚き、声を張り上げる。
まあ、少しぐらいなら。こう見えても魔道士の端くれですし。
魔道士が皆、そのようなことができるかはともかく、ナナは謙遜しながらそう言った。
……? ……。
海賊なのに、森にいるなんておかしいって? それは思っても言っちゃダメなやつですよ。
ムキー! 丸聞こえだぞっ!
ピレットが小さな身体を大きく震わせた。
モーリーおじさまは、言いたいことを口に出しちゃうくせがあって……。
ふん、モチピとはえらい違いだ。
ウキッ、ウキ、ウキキーッ!
それだけを言い残して、ピレットが背を向け歩き出した。
あっ、ピレットちゃん、待ってください!
こうして出会ったのも何かの縁。そう思ったナナは、ピレットのあとを追う。


はぁ、はぁ……意外と歩くのが早い……。
どうしてついてくるんだ! ピレットは忙しいんだ!
ピレットちゃん、何をしようとしてるのかなと思って……。
森の奥深くまできたピレットは、木々を眺めていた。
ピレットは今から船を作るんだ。邪魔するなよ!
船? もしかして船がないのに、海賊やろうとしてるの?
違う! ピレットはずっと海賊だっ! 今はたまたま船がないだけで……。
当初の威勢のよさはどこへやら、語尾が弱々しくなっていく。
……モーリーおじさま?
…………。……。
困ったときはお互い様って言いますもんね。うん、手伝いましょう!
ピレットはひとりで船ぐらい作れるぞっ。
ふたりでやったほうが早く終わりますよ。さあさあ……。
し、しかし海賊が他人の助けを借りるなんて……。
実はわたし、日曜大工はお野菜を育てることの次くらいに得意なんです。
ま、まあ……お前がそこまで言うなら……手伝わせてあげないこともない。
ピレットの言葉を聞き、ナナはほっと胸を撫で下ろす。
そして何となく木に背を預けた瞬間、高くからドサリと魔物が落下してきた。
わわ……ぴ、ピレットちゃん下がってっ!

(戦闘終了後)

んしょ……よいしょ……っと。
魔物を何とか追い払ったナナは、ピレットと船を作り始めた。
お前、すごくいいやつだ。ピレットの船に乗せてやるぞ。
ふふ、それはちょっと楽しみです。いつかぜひ乗せてください。
いつでもいいぞ。今日はナナも忙しいみたいだからな。

女の子がふたりで作ったわりには、思いのほか頑丈なものが出来上がった。

この異界の木々は加工しやすく、楽だった。
ウキ、ウキッ?
……! …………。
モーリーとモチピは短時間の間に打ち解けたようだ。
ピレットは海賊だけど受けた恩は返すぞ。何かほしいものはあるか?
ひとつだけ。
なんだ? モチピはあげられないぞ?
ピレットちゃんの力を貸してほしいんです。大切な魔道士さんたちのために。
なるほど、まどーし。わかった、いいぞ。
おそらく欠片も理解していないだろうが、それでも悩むことなくピレットが頷く。


お前はいいやつだ。だからピレットに任せろ。

あ、ありがとうございます、ピレットちゃん……。

じゃあ、ピレットはもう行くぞ。海が待ってる。
必ず、必ずまた来ます。
モチピと一緒に小さな体で小さな船を押していくピレット
いつかまた来られるよう、見えなくなるまでピレットの背を見続けていた。

■神々しいお戯れ編■



〈異界移動〉はナナだけではできない魔法だ。

ナナの魔力が込められた風船を、モーリーが割ることで何故か〈異界〉へ飛ぶことが可能になる。

好きなときすきなところに行けるわけではないし、クエス=アリアスに帰るのも一苦労だ。

しかしナナは、この力があることを誇りに思っていた。

異界の住人に出会えるのは特別なことだし、誰もしらない世界をたくさん見ることができる。

…………。
……?
あ、モーリーおじさま。
ピレットと別れ、モーリーに風船を割ってもらったのはいいが……。


……ってここどこですか!?

張り詰めて重苦しい空気に包まれていることに、いまさら気づく。
…………。
え? お腹が空いたんですか? うーん、ご飯はちょっとならあるんですけど……。
人の気配はなく、静寂……とにかく寒気がするような場所だ。
モーリーおじさま、こんな怖いところ早く抜けちゃいましょう……。
早く次の異界に飛びたかったが、モーリーが食事を終えるまでは出られない。
ひとまず少しだけ前進することにした。




旅人よ。ようこそいらっしゃいました。

──!? どどどどちら様でしょうか!?
歩くたびにどんどん空気は重くなって、体が押し潰されそうだった。
モーリーはすっかり怯え、食事も喉を通らないようだったが、こればかりは仕方ない。
私はゲネス・クリファ。おなたの来訪をお待ちしておりましたよ。
え? ええ?
ナナは困惑を隠し切れない。
とてつもないオーラの女性が、いきなり話しかけてきたのだ。
あまりの緊張に視線が泳いでしまう。
座りなさい、旅人ナナ・クラリィ。怯える必要はありません。
…………っ!
は、はい……。
あなたが来た理由はわかっていますが、ここは通常、人間の立ち入れる場所ではありませんよ。
あの……これには深い事情がありまして……。
見なさい。あの窓を一枚隔てた外は、魔物の巣窟です。
ナナは、中に入ってこようと窓を叩く魔物の群れに気づいた。
わかりますか? ここに人が入り込むことが、どれだけ危険なことなのか。
げ、ゲネス様は、どうしてこんなとろこにいるのでしょう?
魔物が人の世に落ちないよう、抑えつけているのです。
ただし、私は完璧でもなければ完全でもありません。ご覧なさい。
え?
ほらあなたの背後。とても醜い魔物が──。

(戦闘終了後)

ふふ……戯れが過ぎました。許してください、旅人ナナ・クラリィ。
まさか私が"魔物を侵入させる"なんて、気が緩んでいたのでしょうか。
は、はあ……。
ナナは気のない返事をした。
突然魔物に襲われ、放心状態だ。
そして彼女が魔物をここに立ち入らせたのは、間違いなく意図したものだ。
人と話をするのは久しぶりで、出来心で悪いことをしてしましました。
なにもとって食べたりはしませんよ。悪い人間には相応の報いを受けてもらいますが──。
旅人ナナ・クラリィはそうは見えません。とても済んだ心を持っているようですね。
ナナは安堵の息を漏らす。
私の力を借りるため、ここにきたのでしょう。この力を何に使うかは知りませんが……。


あなたとその小さな動物に祝福があるよう祈っておりますよ。

あ、ありがとうございます、ゲネス様……。
さあ、〈祝福〉はなされました。旅人ナナ・クラリィに幸多からんことを──。

そう言い残して、ゲネス・クリファは姿を消した。

再びの静寂。
……ちょっと怖かったですが、とても言い方でしたね。
…………。
ご飯? そうですね。まだクエス=アリアスに戻るには早いですし……。
モーリーのお腹を満たしておかないと、面倒なことになるのをナナは知っていた。
あっ! 次の異界に行ったら、とっても美味しいものを食べられるかもしれませんよ?
さあ、行きましょう!

■ドラゴンと少年編■



ごくり……。

……。…………。

ふたりは言葉を失い、背筋に冷たい汗をかいていた。
身動きが取れない。
これは……少しまずいかもしれない。

──巨大なドラゴンが目の前にいた。

ああああ、あのですね、そのえっと……!
わ、わたしたちはそれほどいいものを食べて生活しているわけではないので──。
どどど、ドラゴンさん的には、美味しくいただけないかもしれません──!
グオオォォォと下腹部にずしんと響くドラゴンの咆哮……。
ヒィィ……。
ゲネスも怖かったが、目の前にドラゴンがいるのもかなり怖い。
この異界についたとき、赤いドラゴンが飛んでいるのを見て、すごいこともあると思っていたが。
まさかこんなことになってしまうなんて……。


おい、グウィス! 人を脅すんじゃない!

あっ……。
ドラゴンの上から人の顔がひょっこりと現れる。
悪かったな! こいつは人間が大好きで、遊んでもらいたがるんだ!
…………。
戯れといったゲネスといい、遊びたがるドラゴンといい……。
今回の旅行は、なかなか波瀾万丈だ。
あ、あのー……?
俺はリクシスっていうんだ。アンタは? 流れもんか?
ええっと、流れもの……というか、流されものというか……。
…………。
え? 空腹? モーリーおじさま、食べられそうになった直後によくそんなこと言えますね……。
しかし、ここに辿り着くまで様々な異界に飛ばされたナナたちに、食料のストックはない。
あわよくばこの異界で何か調達できれば……と考えていた。
なにせモーリーは、空腹になると風船を割りクエス=アリアスに帰ろうとする。
戻る手段がそれしかないから、最後はモーリーに頼るしかないのだが、今はまだ早い。
そっか。腹が減ってるんなら、俺のキャンプ地に来いよ。少しぐらいなら分けてやれるぜ。
……いいのでしょうか?
困ったときはお互い様さ。かわりに、アンタの旅の話でも聞かせてくれよ。


ナナは、ここに来た経緯についてを、異界の住人にもわかるように噛み砕いて話した。
自分がいる世界のほかに、別の世界──異界が存在することを知るものはほとんどいない。
旅先で山を吹き飛ばし星を落とした魔法少女がいたことや……。
自身の周囲が夏になってしまう船乗りの少女の話をすると、リクシスは楽しそうに笑った。
そしてわけあって力になってくれる人を探していることも、ナナはしっかりと話した。
アンタすげえな。そんな世界があるなんて、俺は知らなかったよ。
山をまるごとひとつ消し飛ばして、お空に浮かぶ星を落とした話を信じてくれるなんて……。
そういう女の子もいるってことだろうよ。俺は会いたくないけどな!
そう、ナナももしかしたらその魔法少女が力になってくれるかも、と考えたのだが──。
アレは災害だよと別の人に言われ断念した。
リクシスさんは、どうしてここでキャンプを?
俺は人探しだ。どうしても見つけ出したい子がいるんだ。
……子、というと女性ですか?
アンタ、顔に似合わず鋭いな。
顔に似合わず……ナナは、とりあえず褒め言葉として受け取っておくことにした。
俺と同じドラゴンに乗った女の子なんだが、こいつが最近行方不明でな。
そうなんですか……心配ですね。
全くだ。ドラコのことになると、それしか見えなくなる。
ドラコ?
ああ、俺の国にはドラゴンが2匹いてな。それがこのグウィスとドラコってわけだ。
……2匹? えっ? 2匹?
そうだ。赤いドラゴンがいるんだ。それがドラコっていうんだが──。
見ましたけど。
は?
ね、モーリーおじさま。ここに来たとき、赤いドラゴン見ましたよね?
…………。
知らんってそんな……でも本当に見ました! 北の、ちょうどあの山のほうに飛んでいきました。
なっ──! お、おいおい大手柄だ!
え、あっ、ありがとうございます……。
ナナはゴンドラに腰かけたまま、ドラゴンとリクシスを見上げた。
このあたりは魔物が多い。あいつとドラコは、それを退治しにいったのかもしれない。
ま、魔物……?
どこにいっても魔物魔物……ナナはだいぶ疲弊していた。
安全なところまで送ろう。なに、襲ってきた輩は俺とグウィスで蹴散らすさ!

(戦闘終了後)

このあたりでいいだろ。悪いな、ろくにもてなせなくて。
い、いえ……。
ドラゴンが魔物を倒していくのは、圧巻の一言だった。
それとアンタ、ええっとナナだったか。
はい?
俺とグウィスの力が必要なら、いつでも使ってくれ。
え、あっ、いや、でも……。


アンタ、悪い人じゃなさそうだ。俺もグウィスもアンタのこと気に入ったよ。

ありがとうございます、リクシスさん……!

そういうわけで、俺は行かなきゃいけない。じゃあな。いい旅を!
リクシスとドラゴンが力強く飛び去った。
それはとてつもない速度で、一瞬でその巨大な体が見えなくなってしまった。
はー……貴重な経験ができましたね……。
……!? …………。
ご飯食べそこねた? 一応、もらっておきましたけど……。
うーん、でもそうですね。わたしたちもそろそろ帰りましょうか。
…………。
うん、奥さまはきっと元気です。またお腹いっぱいになったら旅に出ましょう。
ナナにとっての〈異界移動〉はモーリーがいてこそ成り立つ魔法だ。
モーリーにとっても同じ。ナナの魔力が込められたその風船がなければ旅立てない。
お互い、制限は多いものの、目的を果たすため、こうして〈異界移動〉を続けている。
…………。


はい、魔道士さんたちの大魔道杯──いいイベントになるといいですね。

今回も、力強く心強い異界の住人たちと出会うことができた。
それは巡り巡って、めざましい成績を残した多くの魔道士の力となりうるだろう。
ナナとモーリーは互いに顔を見合わせ、満足気に頷いた。
クエス=アリアスに戻り、少し休んだらまた旅に出よう。
次は──また新しい出会いがあるかもしれない。
せめて大魔道杯だけは見ていこうか。
心を躍らせながら、ナナは次に待つ楽しいことを思い浮かべ──
風船が割れる小気味のいい音に耳を傾けるのだった──。


ようやくバロンから解放された君は、夜空を見続けていた。
それは今日、バロンに聞かされたあの話──ナナ・クラリィのことを思い出したからだ。
ナナ・クラリィという子は、〈異界移動〉をして、様々な住人と会うんだにゃ。
大魔道杯でキミが活躍をすれば、精霊として契約できるようになるにゃ。
胸が高鳴る──と君は漏らした。
新しい精霊と契約を結べば、新たな世界が見られるようになるかもしれない。
だけど、どうして今までそのことを話してくれなかったの? と君は訊いた。
〈異界移動〉は特別中の特別にゃ。このことを話すこと自体、あまりよく思われないにゃ。
じゃあ、どうして今日は話してくれたのか、と君は再び質問を投げかけた。
うーん、それは要するにキミも特別に近づいたってことなのかもしれないにゃ。
君はその言葉の意味がわからず、首を傾げる。
イベントを前に、みんなどこか浮ついていて、それでつい口を滑らせてしまったのかもしれない。
ウィズを肩に乗せた君は、また空を見上げた。
満天の星空と、大きな満月──そして風船のゴンドラに乗った少女。


2回も見られるなんて、キミはついてるにゃ。

もしかしたら次の大魔道杯で、すごくいい成績を残せるかもしれないにゃ。

そうなるように頑張るよ、と君は意気込む。
大魔道杯はもうすぐそこまで来ている。
人知れず、大きな大きな仕事を成し遂げた少女を見ながら──
君はもう一度だけ「頑張ろう」と口にした。
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