夏を取り戻せ!
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![]() | 実は……この世界が冷え冷えになってる事件なんですけどぉ…… | |
![]() | 妹ちゃん、今年はどうしても行きたい場所があるから…… | |
![]() | 世界を相手にして、今回はやってやるんだ、って意気込んでて……。 | |
![]() | そうですね、あの子なら……世界中相手に魔法も使えると思います。 | |
![]() | なんてったて、私の妹なんですから♪ | |
ということは……つまり……? | ![]() | |
![]() | 妹ちゃんが多分、犯人っていうか……ええと……原因っていうか……。 | |
![]() | ごめんなさいね、私たちぜんぜん気づかなくて……。 | |
でもよ、さすがにいろんな世界に寒波が広がってる、ってくらいは分かんないもんなのか? | ![]() | |
![]() | ちょっと今年は過ごしやすいなぁって……そのくらいに思ってたんです。 | |
![]() | 私たち、この時期は外に出ませんから、よく周りの状況をしらなくて……。 | |
そっか、この時期アイスの国の人たち、だいたいインドアだもんね。 | ![]() | |
だから逆に気付かなかったというわけか……なるほど。 | ![]() | |
だいたいの状況は君も把握できた。 | ||
つまりは、アイスの実の妹、こつぶちゃんを止めれば…… | ||
この冷え冷えの状況を打破できるにゃ! | ![]() | |
そうなら、善は急げだ。彼女を説得し、海を溶かしてもらわなければ。 | ![]() | |
だよねぇ、ライブの続きもできないし、船旅の続きもしなきゃ! | ![]() | |
それに、やっぱり夏は暑くなくっちゃねっ! | ![]() | |
君はリコの言葉にうなずく。夏は夏らしくあればこそ、アイスも美味しいのだ! | ||
さあ、夏を返してもらいに行こう! | ![]() | |
こつぶちゃん! | ![]() | |
大きな声で、城のはずれにある物置の扉を開くリコ。 | ||
そこで見つけたのは…… | ||
![]() ……く、くるな! こつぶは、まだあきらめてないんだから! | ||
そう叫びながら、杖を振りかざす少女。彼女の杖には、尋常ならざる魔力が感じられる。 | ||
……どうやら、本当に彼女が今回の騒動の主役らしいな。 | ![]() | |
そうみたいだねぇ……どうしよっか。 | ![]() | |
だが、そんな彼女を前にして、リコは優しく話しかける。 | ||
……ねえ、こつぶちゃん。世界を元に戻して欲しいの。 | ![]() | |
せっかくの夏なんだし、みんな外に出て、海とかで遊びたいなーって思ってるんだよ。 | ![]() | |
暑いはずの夏が寒くって、みんなびっくりしてるんだと思う。 | ![]() | |
しかし、その説得を聞きながら、こつぶの表情はだんだんと曇り始めた。 | ||
そして……! | ||
ねえ、こつぶちゃん、だから── | ![]() | |
![]() | うるさーい! うるさいうるさいうるさーい! | |
![]() | こつぶは……こつぶは……「夏の海」を見てみたかっただけなのに! | |
カップスイーツ国も、ショコラ国も、ソルテ国も、みんなみんな行ってみたいのに! | ||
うっ……そ、それは……その……。 | ![]() | |
仕方ないよ。君たちアイス国の人たちは、暑さにとても弱いじゃないか。 | ![]() | |
![]() | そんなの関係ないもん!! こつぶはただ、外に出たいだけだもん! | |
![]() | でも、あんなに暑かったらお外に出れないでしょ!? だから冷やしてるの!! | |
こつぶちゃん……。 | ![]() | |
健気かつ必死さが伝わるワガママを聞いて、なんだか君も怒るに怒れない雰囲気だ。 | ||
とはいえ、このままではこの世界は全体的に冷え冷えのまま秋を迎えることになるだろう。 | ||
うっ……そ、それは困っちゃうね。なんとかしないと……。 | ![]() | |
でも、こつぶちゃんは聞いてくれなさそうだなぁ……。 | ![]() | |
考えこむ君たち。なるべく穏便にコトを済ませたいという考えはある……。 | ||
だが! | ||
![]() もうすぐ、海まで行く準備が終わるんだから! 浮き輪も、水着も、用意したんだもん! こつぶの邪魔は……させないんだからぁーーッ!! | ||
そんな君たちの考えなど、こつぶちゃんには関係がない!! | ||
涙目のまま、こつぶちゃんは君たちへと突撃してきた! | ||
(戦闘終了後) | ||
数時間に渡る大暴れの末、こつぶちゃんはやっと落ち着きを取り戻した。 | ||
![]() | うぅ……ぐすっ、うう……。 | |
ただし、その目は真っ赤で、泣きべそは収まる気配が無い。 | ||
な、なんだか悪いことしてるような気分だなぁ……。 | ![]() | |
いいや、これは世界のためなんだから、ワガママは取り下げてもらわないと。 | ![]() | |
![]() | うう……! | |
うっ……た、ただし、まあ……その、罪悪感が無い形で、が理想だね。 | ![]() | |
確かに、こつぶちゃんもすこしかわいそうですよね……。 | ![]() | |
海が見てえってのに、暑いと外にも出られないんだもんな。 | ![]() | |
……なんとか、してあげたいですね。 | ![]() | |
うーん、とはいえ、どうすればいいにゃ……? | ![]() | |
こつぶちゃんの願いも叶えたいが、世界も元に戻したい──。 | ||
どうすればいいのか、皆が考えをひねり出そうと必死に頭を抱えていると…… | ||
![]() | ……あら、みなさん。こつぶちゃんを見つけてくれたんですね? | |
と、アイスの実がひょっこりと現れた。何やら、背後には大きな荷物が控えている。 | ||
そして、姉の姿を見て我に帰ったのか、こつぶちゃんは申し訳無さそうに彼女に話しかけた。 | ||
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おねえさま……あの、ご、ごめんなさい……。 | ![]() | |
![]() | ん? なんのこと? | |
わ、こつぶは……その……魔法を使って……ぐすっ、悪いことを……! | ![]() | |
![]() | ふふっ、こつぶちゃんはどうして泣いてるのかな? 何か悲しいことでもあったの? | |
……だ、だって、お外に出られないの、嫌だったから……ぐすっ……! | ![]() | |
だんだんと泣きべそをひどくしながら、こつぶちゃんはアイスの実に一生懸命話そうとする。 | ||
けれど、アイスの実はそんなこつぶちゃんに反して、にっこりと笑ったのだった。 | ||
![]() | それなら、きっともう泣かなくて済むわね。はいこれ、あなたへのプレゼントよ。 | |
そう言いながら、彼女は背後にある大きな荷物の包みを解く。 | ||
するとそこには、特殊な素材で作られた小さな馬車があった。 | ||
![]() | これはね、クーラーボックスを兼ねた馬車なの。どんなにお外が暑くても平気よ。 | |
![]() | これがあれば、あなたはどこまででも行けるわ♪ | |
微笑むアイスの実に、驚いた表情のこつぶちゃん。 | ||
……本当? これ、こつぶに……? | ![]() | |
![]() | ええ。夏の海が見たい、って言ってたから、急いで作らせちゃった。 | |
![]() | だから、ね。これで色んな所を旅していらっしゃい。 | |
……う、うわーーん、ありがとう、ありがとうおねえさま~!! | ![]() | |
感極まり、アイスの実に抱きつくこつぶちゃん。その様子を見て、リコたちもホッとしている。 | ||
……これで、一件落着、かな? | ![]() | |
そのはずだけどにゃ……何故か全く私たちが元の世界に戻る気配が無いにゃ。 | ![]() | |
そうなのだ。 | ||
これでこの世界での仕事は終わったと思っていたのだが……全くそんな気配は無い。 | ||
……もしかして、これはまた何か起きるんじゃ……? | ![]() | |
とウィズが鋭く冴えた言葉を口にした瞬間だった。 | ||
![]() すみませぇーん!! リコ様、グリ様ご一行とお見受けいたしますー!! | ||
厄介事が、空から降ってきたのだ! | ||
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