頑固になった王様
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うう……あ、あの、こつぶちゃん。ちょっとこの馬車、狭くなーい? | ![]() | |
![]() | ……ちょ、ちょっと小さいくらいが愛らしいの。これが良さなの! | |
そうなのか……!? こ、これが良さか……! | ![]() | |
![]() | 良くても狭いのはヤだよー! | |
ピークさん、プレミオさん……耐えることで道が拓けることも……ありますから……! | ![]() | |
![]() | そうだぜ……石の上にも三年ってな……! | |
うう、でもこの狭さはちょっと私は苦手で……! | ![]() | |
と、ところでさ、プリンちゃんの言ってた「王様」ってのはカップスイーツ国の王様ってこと? | ![]() | |
![]() | ……は、はい。うちの国の王様は、物腰柔らかで穏やかな性格なのが売りなのですが……。 | |
![]() | ここのところ、世界が寒かったのが影響したのか、若干頑固で堅い性格になられまして。 | |
……この世界の住人は単純なのか繊細なのか時々わからなくなるにゃ。 | ![]() | |
ウィズのツッコミはもっともだが、今はそんなことを言っている場合ではない。 | ||
で、その頑固になっちゃった王様をなんとかしてほしい、ってこと? | ![]() | |
![]() | はい……我々もほとほと困り果てておりまして……。 | |
はぁ、とため息。だが、彼女はプレミアムピークの二人を見て、確信したようにうなずいた。 | ||
![]() | ですが、我が王はプレミアムピークの大ファンだとのことで!! | |
![]() | お二人が居ると、きっとお話が円滑に進むものと思われます! きっと! | |
……そうだといいのだがな。善処させてもらうよ。 | ![]() | |
とはいえ、一旦話を聞いてみなきゃいけないね……あっ、ほら! もうすぐ着くよ! | ![]() | |
皆の影からチラリと見える窓からは、カップスイーツ国の様子が見えてきていた。 | ||
![]() 見渡す限り、不思議な工場といった様子の国。初めて見る光景に、君は息を呑んだ。 | ||
![]() | ほら、私の馬車で向かって正解だったでしょ? | |
![]() | ちょっと狭いけど、ひとっ跳びでカップスイーツ国までいけちゃうんだから! | |
ほんとにひとっ飛びだったね! また乗せてね、こつぶちゃん! | ![]() | |
さて、それじゃあ王様にお話を聞きに行きますか。 | ![]() | |
最後の一仕事、とばかりに、グリの言葉に君もうなずく。 | ||
さーて、ポッキーみたいにまっすぐに! 出発、進行~! | ![]() | |
カップスイーツ国の中、最も冷え冷えの部屋に、王様は居た。 | ||
![]() | ||
![]() | ですから!! そんなんじゃ国民の皆様はぷるぷるな生活ができなくなっちゃいます!! | |
![]() | りんごだって色々譲歩してるんですから! ペンプッチン様も頑固なのやめてください! | |
![]() | りんごちゃん、いいですか、我々に必要なのは「ぷるぷる」ではなく確固たる意思なのです。 | |
![]() | 注がれる器に倣い、形をぷるぷると変えていては、それはアイデンティティの崩壊と言える。 | |
![]() | 即ち、我々は堅く、ゆるぎない意思の上に立ち、それを具現化した体で世に訴えるべきだ。 | |
![]() | よって、今をもって「ぷるぷる廃止令」「カラメル取締法」「プッチン禁止令」を施行する。 | |
ぷ、ぷるぷる廃止令……!! | ![]() | |
……ってなんにゃ? | ![]() | |
さあ……? | ![]() | |
……何か大仰なことを言っているのだろうが、さっぱり君たちには理解が及ばない。 | ||
だが。 | ||
![]() | な……!? ぷ、ぷるぷる廃止……カラメル……取り締まり……!? | |
プリンのこの驚きようを見る限り、何かとんでもない事が起きようとしているようだ。 | ||
今の禁止令とかで何か困ることがあるのかにゃ? | ![]() | |
な、何か取り締まられちゃう感じなのかな? よくわかんないけど……。 | ![]() | |
![]() | な、何を言ってらっしゃるんですか! | |
![]() | 我々カップスイーツにとって、特にプリンにとってカラメルとぷるぷる度はアイデンティティ!! | |
![]() | それを廃止し取り締まられ、挙句プッチンも禁止されたら……私たちは……私たちは……!! | |
そう言うと、プリンはガタガタと震えだす。本来なら柔らかい微笑みも、今は暗い……。 | ||
![]() ……君たち、何か用かな。私は今国政業務に堅い意思を持って取り組んでいる。 邪魔をするなら断固として、こちらも確固たる対応を取らねばならないが……? | ||
冷えきった部屋の空気が、また一段と引き締まる。 | ||
どうやら、ペンプッチンの意思は、見た目通りとは行かないようだ。 | ||
……魔法使いさん、最後のお仕事……また手を貸してくれる? | ![]() | |
最後まで、また君に頼ってしまって申し訳ないけれど……。 | ![]() | |
君はもちろんだ、とうなずく。乗りかかった船だ、最後まで付き合うよ、と。 | ||
わ、私もキッチリサポートします! | ![]() | |
俺も手を貸すぜ、お前らだけにいいカッコさせるかよ。 | ![]() | |
そういうことです。参りましょう。 | ![]() | |
そして新たな仲間の心強い声援を背に、君とペンプッチンの最後の戦いが始まった! | ||
(戦闘終了後) | ||
戦いを終えた君たちは、疲れきった影響か、肩で大きな息をしている。 | ||
![]() | ……なかなかやるね、キミたち。 | |
だが、どうやらペンプッチンはまだ余力を残しているようだ。 | ||
これはまずい……そう思い、君は額に浮いた汗を拭う。 | ||
……汗? | ||
……ん? あれっ、なんだか部屋の温度が少しだけ上がった気が……。 | ![]() | |
うう……こつぶにとっては少し暑いです……。 | ![]() | |
![]() | そ、それって……つまり……。 | |
そう、キミたちの戦いの影響で、室内温度が少しだけ上がっていたのだ。 | ||
それはつまり、カップスイーツ国にとっては「ちょうどいい」温度になったということ。 | ||
そして、それが意味するところは……! | ||
![]() まあまあ、みなさんそうカッカせずに。 ぷるぷるでいきましょう、ぷるぷるで。 | ||
![]() | わーーーー! 王様! 正気に戻られたんですね! | |
![]() | もとから僕は正気だよぉ。ぷりんちゃんはおかしなこと言うなぁ。 | |
抱きつくプリンに対し、ぷりんぷりんとした態度でペンプッチンは言う。 | ||
どうやら、予想通りペンプッチンの頑固さは消えてなくなったようだ。 | ||
ふふっ、これで本当に一件落着、かな? | ![]() | |
そうみたいだね。魔法使いくん、そしてウィズ。本当にありがとう。色々と付き合ってくれて。 | ![]() | |
なぁに、別に大したことじゃないにゃ。また呼んでくれて構わな…… | ![]() | |
あ! | ![]() | |
そろそろシメの段階に入ろうとした君たちの雰囲気を、ウィズは大きな声でぶち壊す。 | ||
そうにゃ! 今度こそ美味しいお菓子をたらふく食べて帰るって決めてたんだにゃ!! | ![]() | |
そうと決まったら、最初に行ったショコラ国の豪華客船に乗り込んで、レッツ食べ放題にゃ! | ![]() | |
君の肩を飛び下りて、走り去ってしまうウィズ。 | ||
そんな彼女を追いかけて、君のお菓子の国での旅はもう少しだけ続きそうだ。 | ||
……………… | ||
………… | ||
…… | ||
……そういえばさぁ、プリンって冷凍させてもアイスみたいで美味しいらしいよ? | ![]() | |
![]() | 興味深いね。今度試してみようかな。 | |
そう、お菓子にも、いろんな楽しみ方がある。お菓子にだって、いろんな面があるのだ。 | ||
そして、それを追求するのもまたひとつの楽しみ。みんなでその楽しみを共有すれば…… | ||
世界はもっと、おいしくなる! | ||
![]() そう思う、リコなのでした! | ||
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