うわさの二人組
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はぁ……あったかいにゃ……。 | ||
しみじみと暖かさを噛み締めながら、君とウィズは温かい飲み物を手にホッと一息。 | ||
あら~、黒猫ちゃんもこの喫茶店「ろおすと」を気に入ってくれたみたいで嬉しいなぁ。 | ||
ここのホットミルクはナカナカの味にゃ! 猫舌の私にもピッタリにゃ♪ | ||
そんなにおだててもなんにも出ませんよ~、ふふっ。 | ||
おーい、追加のオーダー上がってるよ、神戸ちゃん! | ||
はーい、ビッテさん! それじゃ、私これで! | ||
ばたばたと忙しそうに走り回る神戸ローストショコラ。 | ||
ここは、グリに連れて来られたショコラ国の港にある喫茶店「ろおすと」だ。 | ||
初めて来たが、どうやら満席で大繁盛しているようだ。 | ||
このお店はいつもこんなに混んでるにゃ? | ||
ううん、ちょっとした偶然が重なっちゃってね。 | ||
偶然? | ||
ウィズの言葉に、リコとグリは顔を見合わせてため息をつく。 | ||
うん。実はね、この近くの海でお菓子のアーティストたちが海上ライブを企画してたの。 | ||
豪華客船「グリコロイヤルシップ」を使って、盛大にね。 | ||
でも、この寒さで海が凍っちゃってさ、船が立ち往生しちゃったんだよ。 | ||
そう! そのせいで、船の乗客たちやアーティストたちがこの国……。 | ||
ショコラ国に雪崩れ込んだ、ってわけ。それで港近くのこの喫茶店は大繁盛ってこと! | ||
なるほど、と君は思う。温かいホットチョコレートはこの寒さにはうってつけだ。 | ||
とはいえ、暖まるならどこでも出来る。わざわざここに連れてきた理由があると君は思った。 | ||
そのことをリコに聞いてみると、彼女はニッコリと笑って小さな声でこう返してきた。 | ||
鋭いねー黒猫の人は! 実はそうなの。よーく周りの声を聞いて欲しいんだけど……。 | ||
周りの声……? | ||
ふと耳を澄ますと、周囲のうわさ話が聞こえてくる。 | ||
ショコラ国の二人組ユニット、プレミアムピーク……って、あの最近人気の? | ||
ああ、あいつらが何か仕組んで、この寒さを引き起こしてるって噂だ。 | ||
本当かよ。あの二人、魔法使いとしての腕も確からしいけど……。 | ||
考えてもみろよ、なんでショコラ国の近くで船が立ち往生したと思ってんだ。 | ||
あいつらが自分たちの国でライブがしたかったから……? そんなまさか……。 | ||
なんだか同じ噂話がいっぱい聞こえるにゃ。 | ||
……そう、その噂を止めて欲しいの。私たちの力じゃなんともならないからさ。 | ||
つまり、それがさっき私が言ってた重大なミッションなんだよ。 | ||
リコはそう言うと、ずっと同行している謎の二人組に近づいていく。 | ||
……実はね、この二人は──。 | ||
と、リコが二人を紹介してくれようとした、その時。 | ||
おーい! あっちでプレミアムピークの二人を見たってよー! | ||
そんな声が聞こえ、店内がにわかにどよめく。君とリコは一瞬目配せをして立ち上がった。 | ||
……言ってみよう! 二人はここに居て! | ||
リコは変装した二人組に向かってそう言うが、彼女(?)たちはそれに対し首を横に振る。 | ||
いや、私たちも同行する。このまま変な噂を広められたら困るからな。 | ||
そうそう、旅は道連れ世は情け、ってね♪ | ||
……まさか、キミたちはプレミアムピー…… | ||
そこまで言おうとしたウィズの口を、グリはそっと人差し指で抑える。 | ||
それ以上は秘密で、ね♪ | ||
さあ、噂の真相を確かめに行こう! | ||
喫茶店「ろおすと」に居た数名とともに、君たちは海岸近くを探しまわっていた。 | ||
海風は強く、冷たい。真冬と言っても過言ではない寒さだった。 | ||
このドロリッチ様にはお前らの居場所はわかってんだぞーッ! ドコだぁーッ! プレミアムピィィークッ!! そうだ、このギャバナリオに対し、すみやかに噂の真相を明らかにしたまえ!! 我輩が許そう! 我輩がすーべーてー許す! さあ! さあ!! プレミアムピークの諸君ンン! | ||
大声で叫ぶドロリッチとギャバナリオに対し、もう一人脇に居る青年はうんざりした様子だ。 | ||
騒がしいなぁ……そんなに騒いだら出ようにも出られないじゃないか。 | ||
うるせぇぞカフェオーレ! 寒いから騒いでねぇとこちとらガチガチに固まっちまうんだよ……! | ||
フハハハ、我輩は比較的活動しやすい温度ではあるぞ! | ||
お前とか俺はまだいいよ、カップスイーツ国の奴らはもっと大変だと思うぜ。 | ||
あいつら、固まっちまったら性格まで変わっちまうらしいしよ。 | ||
……なるほど、こうして聞いていると、お菓子たちにとって気温はかなり重要らしい。 | ||
しかし、どうしてプレミアムピークたちが疑われてるんだにゃ? | ||
彼女たちはショコラ国の人々だ。暑さには弱いし、どちらかといえば寒いほうが得意なんだ。 | ||
だから、溶けるほど暑い夏を寒い冬に置き換えた……って噂では言われているね。 | ||
あのお二方は、そんな方ではありませんのに……。 | ||
そう! だから私たちが噂の元凶をこらしめなきゃいけないんだよ! | ||
そんな話を続けながら進むキミたちの前方に、ふと小さな黒い点が浮かんでいる。 | ||
その黒い点……否、小さな妖精のような生き物は、腕を組んで何か考え事をしていた。 | ||
……うーん、噂の流し方を間違えたかなぁ……姉ちゃんの人気を上げるのにはもっと……。 | ||
しまったなぁ……なんだか変な方向に噂が走っちまったし、これはどうすりゃ……。 | ||
……妖精のひとりごとを聞いて、君とグリは顔を見合わせる。 | ||
間違いない、この妖精が噂の出処だ。そう君たちが確信した瞬間だった。 | ||
あなたね! プレミアムピークの二人組の悪い噂を流してる張本人は! | ||
うわぁっ!? な、なんだよお前! 急に話しかけてくるなよ! | ||
いーえ話しかけます! 今の話聞いちゃったからには放っておけないもの! | ||
り、リコ、もうちょっと落ち着いて。ちゃんと事情を聞かないと……。 | ||
そ、そうにゃ、万が一ってこともあるにゃ。 | ||
えっ、そう? 私、また暴走しちゃって……。 | ||
なんとかリコをなだめるひとりと一匹。 | ||
しかし、その目の前の妖精は、君たちに対して低く笑い始めた……! | ||
……ククク、このクラッツ様の陰謀、暴かれちまったなら仕方ねえ……! | ||
貴様たちはここで、粉みじんに散ってもらうぜェーッ!! | ||
そう言うと、クラッツはバキバキ、と指の間でプレッツェルを割り砕く! | ||
その恐ろしい(?)音とともに、戦いが始まった! | ||
(戦闘終了後) | ||
えーいッ!! ギャーーーーッ!! | ||
リコの振り抜いた杖の先から、魔法の力がクラッツへとほとばしる!! | ||
次の瞬間には、こんがりと焼けたクラッツが地面に寝そべっていた。 | ||
ぐぅぅ……強いな、お前ら……! | ||
い、いやぁ……サイズ差もあるから、強いってほどでは……。 | ||
そう言う割には、結構全力で魔法使ってなかった? | ||
私はほら! 調整がヘタクソなだけで……。 | ||
わりとえげつないパワー系なんですね、リコさん……。 | ||
そ、そんなことないってばー! | ||
和気あいあいとした空気の中、ふと緊張がゆるむ。 | ||
だが、そのゆるみ切った空気を切り裂くように、黒い旋風が巻き起こった! | ||
誰だい、このクラッツィナ様の弟をいじめてる奴ァ!! 穏やかじゃないわね、何があったの? | ||
ね、姉ちゃん……! それにチーザさんも……! | ||
クラッツとは違い、彼の姉を名乗るクラッツィナは、ほぼ君たちと同じ身長。 | ||
そして、その身に宿る魔力もクラッツとは桁違いだ……。 | ||
何があったの? お姉さん達に話して──、 | ||
いーや! ウダウダ話すのは苦手なんだ、理由は魔法で聞かせてもらうよ!! | ||
問答無用の雰囲気に、君たちは戦いの構えを取った! | ||
ね、姉ちゃん……。やめてくれよぉ。 | ||
だがその一瞬即発の戦いの気配は、思いもよらぬ情けない声によって霧散した。 | ||
そんなことされたら、俺の立つ瀬がないじゃないか……。 | ||
な、なんだい、クラッツ。姉ちゃんはアンタの仇をとってやろうとしているんだよ。 | ||
それをやめてくれだなんて……。どういうことだい? | ||
そうだね、クラッツくん。事情を聞かせてくれるかな? 僕達もその辺りの事が気になるからね。 | ||
噂の元凶と目されるクラッツに、グリは優しく話しかける。 | ||
すると、クラッツはぽつぽつと事情を話し始めた。 | ||
……プレミアムピークが最近人気になってて、悔しかったからさ……。 | ||
俺の姉ちゃんもアーティストなのに、あいつらにばっかり注目が行って……。 | ||
だから、ちょうど異常気象が起きたタイミングで、あいつらの人気を落とそうと……。 | ||
そうすりゃ姉ちゃんだって、きっと喜んでくれると思って……。 | ||
そこまで話を聞いていたグリは、ふっと何かを考えこむような表情に変わる。 | ||
……ということは、この異常気象は君のせいではない? | ||
そう言ってるだろ! いいタイミングだと思ったから、つい……。 | ||
ふむ、と考えこむグリ。だが、対照的にクラッツィナはなんだか照れくさそうだ。 | ||
……アンタはホント馬鹿な弟だよ! | ||
そんなことやんなくたって、姉ちゃんは自力で人気を取っていける! | ||
姉ちゃん……俺……! | ||
それにね、あいつらと姉ちゃんとでは、客層が違うんだよ! | ||
……そうだろう、プレミアムピークのお二人。 | ||
不敵に笑うクラッツィナは、ずっと君たちについてきていた変装した二人組にそう言う。 | ||
すると、二人組は変装を解き、クラッツィナたちに笑いかけた。 | ||
……ふふっ、噂の出処は、姉を思う弟の気持ちか。それなら咎めることも出来ないな。 そうねぇ。まぁ、これくらいの逆境なら慣れっこだけれど♪ | ||
……ほら、謝りな、クラッツ! | ||
う……ご、ごめんなさい、悪かったよ……。 | ||
構わん構わん、事情を知ったからには何も言うまい。 | ||
そうよー、怒っても何も解決しないもの。……例えばこの異常気象……とかね。 | ||
ピークに言われ、君たちはハッとする。 | ||
そうだ、ひとまずの事態の解決は見えたものの、根本的な解決は見えていない。 | ||
しまったしまった……なんとなくもう解決した気でいたよ。あははは……。 | ||
……やっぱり、アイスの国に一度足を運んでみるべきかもしれないよ。 | ||
これほど強力な魔法なんだから、やっぱりどこかの国が影響してると考えるべきだ。 | ||
そうだねぇ……うう、もう寒いのは嫌なんだけど、なぁ……夏が恋しい! | ||
確かに、君も夏が恋しい。真夏はもう目の前だっとというのに、今は冷蔵庫の中のようだ。 | ||
よーし、そうと決まったら行こう! アイスの国へ! | ||
君も一度訪れたことのあるアイスの国。 | ||
夏になる今の時期、アイスの国はどう様変わりしているのか……少し気になる君だった。 | ||
[ひえひえの夏] << 目次 >> [再訪、アイスの国!] |
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