ドルキマス編
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クラリア・シャルルリエは、ブルーノ・シャルルリエの一人娘である。 | ||
ブルーノは、長くドルキマス軍に所属していた。 | ||
かの大国──ガライド連合王国に勝利したとき、最前線で戦っていたのは、他ならぬ彼だ。 | ||
ディートリヒ・ベルクが戦果を積み上げていくたび、ブルーノも軍内での評価を高めていった。 | ||
ブルーノは、どちらかというと有能な人間ではなかった。 | ||
しかし、ディートリヒと同じ軍に所属していた、ということ、 | ||
そして彼自身、ディートリヒとともに生きて戻ってきたということに尾ひれがつき、 | ||
「不死身のシャルルリエ」という異名で呼ばれるまでに至る。 | ||
彼自身の能力は大したものではなかったが、育成において飛び抜けた才能を発揮した。 | ||
ブルーノは、芝居がかった罵声を部下に浴びせることがあった。 | ||
それは彼なりの愛でもあり、そうすることで多くの軍人が育った。 | ||
その背中を見て育った少女──クラリアは、その言葉遣いを学んでしまうことになるのだが、 | ||
彼は止めるに止められなかった。 | ||
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ちんたらしているんじゃない! 男なら気概を見せろ! | ![]() | |
![]() | 無茶言わんでください……今は被害がないですが、このままじゃ全滅しますよ。 | |
進めば道が開かれる。振り返ればそこに道はない。前だ。前に行くんだ! | ![]() | |
彼女は、作戦行動において「進む」という以外の選択肢をほとんど選ばなかった。 | ||
それは幼い頃からディートリヒ・ベルク、ブルーノ・シャルルリエを見ていたからに他ならない。 | ||
しかしそんなクラリア──シャルルリエ軍団は、不思議と無傷で戻ることが多かった。 | ||
戦争において、どういうわけか死者が出たことはなく、 | ||
何より少女に鼓舞されることで士気が高まるともっぱらの評判なのだ。 | ||
![]() | シャルルリエ中将。 | |
なんだ! わたしは結構忙しいんだが! | ![]() | |
![]() | まあ、落ち着いてください。ほらいい茶葉が手に入りましてね。 | |
ふむ。 | ![]() | |
突撃型の少女を宥めるのは、ヴィラムの役割だ。 | ||
こうすることで多少は作戦指揮に冷静さが出る。 | ||
無論、そうしたところでまっすぐ進む以外の選択肢は、彼女の中にないのだが。 | ||
人の意見に耳を傾ける程度の余裕が生まれるのはいいことだ、とヴィラムは思った。 | ||
父上は偉大な軍人だった。 | ![]() | |
そしてそれは、ベルク元帥も同様だ。わたしの尊敬するふたりの軍人だ。 | ![]() | |
![]() | 元帥閣下に並び立つにゃあ、ちょいと頭のよさってのが足りてませんがね。 | |
なんだと貴様! 戦争のさなかでもまあまあ勉強してきたんだぞ、わたしは! | ![]() | |
実をいえば、勉強は苦手だが……それは隠しておくことにする。 | ||
![]() | そうそう。あの魔法使い殿の話。 | |
なんだ? 黒猫はほしいぞ? | ![]() | |
![]() | どうやら次の作戦で最前線に立つことになるらしいですな。 | |
ふん、的にされてやられるのがオチだ。まったくベルク元帥は何を考えてらっしゃるのだ。 | ![]() | |
でも仕方ないな。手を組んだ仲間同士だ。 | ![]() | |
あの小さな船が狙い撃たれないよう、多少の援護はしてやるとしよう。 | ![]() | |
クラリアは偉そうに腕を組む。 | ||
それは生前、ブルーノが船内でよくとっていた姿勢なのだが……。 | ||
当時、幼かったクラリアは知る由もない。 |
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