ターニャ

禁じられた芸術——それは悪か、それとも正義か。
奇跡の旋律が今、世界を極彩色に染め上げる。

表情を失い、生気のない目で黙々と歩く人々……。
とある広場の中心で、一人の少女が大鎌構え、すぅっと大きく深呼吸。

そこは芸術が禁止され、色彩を失った無味乾燥の異界。

ターニャがくるりと鎌を振るう——と、心が弾むような音楽が、あたりに響く。
人々は一斉に顔を上げ、彼女の奏でる世界へと取り込まれていく。

モノクロームの街に訪れた、ひとときの祝福。

弾ける笑顔、ある者はメロディを口ずさみ、ある者はリズムにあわせて舞い踊る。
一度ターニャの音楽を聞けば、もう、音楽を愛さずにはいられない。

憲兵が現れ集団を解散させたとき、ターニャは姿を消していた。
人々はまた無表情に歩き出し、街は白と黒の静謐を取り戻す。

——けれど、それでも。
彼らの胸には、奇跡の旋律が響き続けている。

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