イヴ
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№ | 466 | 467 | 468 |
名 | (A)村の林檎娘 イヴ | (A)愛の林檎娘 イヴ | (A+)禁断の林檎娘 イヴ |
AS | フロストリカバリー | スノウホワイト | スノウホワイト |
SS | 深紅の果実 | 深紅の果実 | 禁忌の果実 |
№ | 469 | 4148 | |
名 | (S)黄金の林檎娘 イヴ・フォルクロール | (L)甘い夢色林檎 イヴ・フォルクロール | |
AS | ホーリースコール | デリシャス・スウィート | |
SS | 楽園の果実 | ときめきの微笑み果実 |
バレンタインver
№ | 5676 | 5677 | 5678 |
名 | (SS)恋のチョコ林檎娘 イヴ | (SS+)妬きすぎ注意♪ イヴ | (L)愛の林檎パイ イヴ・フォルクロール |
AS | おいしいリンゴを召し上がれ♪ | あなたの恋を応援します♪ | あなたの恋を応援します♪ |
SS | アップル・ナックル | アップル・ナックル | アップル・ナックル・チョコレート |
共通情報
名前 | イヴ・フォルクロール | CV | 中恵 光城 | 種族 | 神族 |
登場 | - | ||||
世界 | 聖界 | ||||
所属 | 林檎売り | ||||
特徴ワード | 魅惑の果実 | ||||
関連キャラ | マーガレット | ||||
セリフ1 | 「まだ少し青いけど……めしあがれっ」 | ||||
セリフ2 | 「なんか、ごめんなさい。私のお客さん、勢いがすごいんですよ。」 | ||||
セリフ3 | 「ちゃんと熟した実から採ってくださいね。」 | ||||
補足情報 | “神秘の果実”とも呼ばれる味、香りとも抜群の林檎を売る少女。 その林檎は、人々だけでなく神々からのリピーターも絶えない程、見事な味と言われている。 異性から絶大な人気があり、熱烈なアプローチをいつも受けている。 |
パーソナルストーリー
バックストーリー
豊穣の大地から生まれる恵みの結晶、“神秘の果実”とも呼ばれる果物を売る少女
彼女が丹誠込めて育てた林檎は味も香りも抜群と、
神族のみならず神々からも愛され、リピーターも続出しているといいます。
彼女自身もまた、神々の血を引き高い能力を持つ神族の一人。
※話の最初に戻る
恋天使の決意
ここは光を司る神々が治める聖界──。 | ||
感じる。乙女たちの高鳴る胸の鼓動を……。 | ||
全力の恋天使、マーガレット・リルは下界を眺めてそう呟いた。 | ||
ついに、今年もこの季節がやってきたのね! | ||
彼女が御使いとして仕える愛の女神、ステラ・フェリクスの名を冠した"ステラの祝祭"── | ||
下界の女性たちが想いを込めたチョコレートを恋の相手に渡す祭りは、もう2日後に迫っていた。 | ||
ああ、ウズウズする。レクチャーしたい! 誰かの恋愛、成就させたげたいっ! | ||
恋の話が何より好きなマーガレットにとって、ステラの祝祭ほど胸躍る日はないのだが── | ||
これが弓矢(本物)だったらなあ……。 | ||
彼女は手元の弓矢(練習用)に目を落とし、大きくため息をついた。 | ||
マーガレットの言う、弓矢(本物)とは、ステラの持つ「恋の弓矢」の事である。 | ||
その弓矢(本物)で射られた者は、最初に見た者を永遠に愛してしまう、と言われている。 | ||
それは決して交わることの無い因果律、を超えて愛を成就させることすら可能な力であり── | ||
射手にはそれを使うだけの責任や使う相手を見極める力が求められる。 | ||
当然、マーガレットの弓矢(練習用)にそのような力はない。 | ||
当たっても、ちょっと痛いだけである。 | ||
みんな真剣勝負なんだもん。やっぱり本物じゃないとね。 | ||
よしっ! ダメ元で頼んでみますか! | ||
そう言って、彼女は宮殿「エークノーム」の中へと入っていく。 | ||
ステラ様ーー! もう明後日ですよ! 夜が明けたらもう明日! 待ったナシですよー! | ||
ステラの姿を見つけたマーガレットは、ものすごい勢いで彼女へ詰め寄る。 | ||
何ですかいきなり? | ||
”ステラ……様の祝祭”です! 恋のお祭りです! ラヴ・ジャンボリーですっ! | ||
ああ、もうそんな時期ですか……。 | ||
のんきに答えるステラに、マーガレットは唸り声を上げる。 | ||
うー! なんで毎年毎年そんなに興味ないんですか!? ステラ様のお祭りなのに! | ||
だってあれ、私の名前を勝手に使っているだけでしょ? それに甘いものにも興味ないし……。 | ||
確かに"ステラの祝祭"はステラ自身が定めたものではない。 | ||
想い人にチョコレートを贈るという風習に、いつの頃からか彼女の名がつけられただけである。 | ||
でも、みなさんステラ様の加護を求めているんですよ。私がやるしかないじゃないですか! | ||
お願いします! 自分の力で、誰かを幸せにしてみたいんです。 | ||
マーガレットは、そう言って深々と頭を下げる。 | ||
いつにもまして熱のこもったマーガレットの訴えに心打たれたのか、ステラが口を開いた。 | ||
……わかりました。あなたの弓矢(練習用)に一度だけ私の弓矢(本物)と同じ力を与えましょう。 | ||
そう言うと、ステラはマーガレットの持つ弓矢(練習用)を手に取り、力を込め始める。 | ||
瞬間、辺りが淡い光に包まれる。 | ||
さあ、これを持って行きなさい。いい恋、届けてくるのよ。 | ||
ステラはマーガレットに弓矢(恋×1)を手渡す。 | ||
やったー! ありがとうございますっ! いい恋、全力で届けてきます! | ||
念願叶って弓矢(恋×1)を手にしたマーガレット(彼氏ナシ)は、颯爽と下界へ飛びたった。 | ||
ふう……。これで明後日まで静かに過ごせそうね。 | ||
さてっと。恋する乙女はどーこですかー! | ||
下界へと降り立ったマーガレットは、さっそく祝祭ムード一色に染まった街へと繰り出した。 | ||
みなさーん! "神秘の実"はいかがですか? 採れたてですよー! | ||
おお! されはもしかして、ヒカリちゃんの言っていたメチャクチャ美味しいリンゴでは? | ||
と、マーガレットは広場で果実を売る少女を見つけると── | ||
すみませーん、ひとつくださーい! | ||
彼女のところへ駆け寄って行く。 | ||
その時──。 | ||
地を揺らす轟音と共に、 | ||
イヴちゃーん! | ||
と叫びながら、人の群れが押し寄せてくる。 | ||
ぎゃーーーー! | ||
猛突進してくる群衆に飲まれ、マーガレットは、体勢を崩してしまう。 | ||
空を仰ぎながら地面へと倒れて行く途中、広場に立つ屋敷の窓辺に立つ男と目があった。 | ||
次の瞬間、彼女の頭は激しく地面へ激突する。 | ||
(……なんか、ぱっとしない人だなー) | ||
薄れゆく意識の中で、彼女はふと、そんな事を考えた。 | ||
……あの、もしもーし! | ||
マーガレットは、少女の声で目を覚ました。 | ||
う……ううん……。 | ||
見ると、マーガレットの前に先ほどの少女が立っている。 | ||
大丈夫ですか? なんか、ごめんなさい。私のお客さん、勢いがすごいんですよ。 | ||
あれ、みんなお客さんですか? | ||
そうなんです。悪い人ではないんですけど……。 | ||
ただ、リンゴの事になると夢中になっちゃうみたいで──。 | ||
と、空になったバスケットをマーガレットに見せる。 | ||
ほら、すぐに売り切れです。 | ||
でもほら、ちゃんととっておきましたよ。お客さんの分♪ | ||
と、彼女はマーガレットにリンゴをひとつ差し出す。 | ||
最初に、声かけてくれたの、あなたでしたから。 | ||
……あ、ありがとう。 | ||
マーガレットはリンゴを受け取り、口へ運ぶ。 | ||
美味しいいい! | ||
ふふっ。気に入ってもらえて嬉しいです! | ||
少女のはじける笑顔を見て、マーガレットは思った。 | ||
(なんていい娘なの! 決めたっ! 私、この娘の恋を成就させちゃうっ!) | ||
そう心を固めると、マーガレットはおもむろに口を開いた。 | ||
あなた、お名前は? | ||
イヴ・フォルクロールっていいます。 | ||
ねえ、イヴ。今度の祝祭では、誰かにチョコを渡したりします? | ||
え? まあ、そうですね。その予定です。 | ||
その予定、この全力の恋天使、ゼンリョク・ザ・マーガレットが全力でお手伝いさせて頂きます! | ||
全力……多くないですか……? |
※話の最初に戻る
街の外れにある森の奥の奥──。 | ||
そこに、イヴ・フォルクロールの住む家はあった。 | ||
どうぞ! ちょっと散らかっていますけど……。 | ||
イヴの部屋へと通されたマーガレットは、部屋中に積まれたプレゼントの箱に驚く。 | ||
どうしたんですか? このプレゼントの山は! | ||
私のリンゴに感動したお客さんがプレゼントしてくれんです。ポエムと一緒に♪ | ||
……ポエム? | ||
お代もちゃんと頂いているので、申し訳ないんですけど"気持ち"ってことらしくって── | ||
牛乳とか、タマゴとか、お砂糖とか……いろんなものをくれるんです♪ | ||
はは、あとは小麦粉があればパンケーキが出来ちゃいますね! | ||
そんな話をしていると、誰かがドアをノックした。 | ||
は~い♪ | ||
と答えてイヴはドアへ向かう。 | ||
マーガレットは、ふと壁にかかったレターラックに目をやる。 | ||
(なにこれ! すっごい数のポエム!) | ||
マーガレットさん、またプレゼントとポエムもらいました! これでパンケーキが出来ますよ♪ | ||
小麦粉の袋を抱え、上機嫌でイヴが戻って来た。 | ||
イヴはレターラックに貰ったばかりのポエムを入れると、キッチンへと向かう。 | ||
ポエムねえ……。 | ||
と、マーガレットはキッチンの様子を伺いながら、レターボックスに手を伸ばし── | ||
「豊かに実りし林檎の君へ」と書かれたポエムに手を伸ばす。 | ||
(……ぜ、全然ポエムじゃなああああい!) | ||
と、文面をみて顔を真っ赤にし、慌てて手にしたそれをラックに戻す。 | ||
(これ、全部ラブレターだ! イヴってメチャメチャモテるんだ!) | ||
ラックいっぱいのラブレターを前に、マーガレットはしばし言葉を失う。 | ||
ふふっ♪ それじゃ、マーガレットさんのご希望通り、パンケーキ作ってきますね。 | ||
そんなイヴの声で、マーガレットはようやく我に返り、 | ||
わわっ! 別に希望してないですよ! 祝祭までもう待ったナシですし、早く作戦を練らないと! | ||
慌ててキッチンからイヴを呼び戻す。 | ||
……そうですよね。せっかく手伝いに来てもらったのに。では、私と一緒に来ていただけますか? | ||
そう言って、イヴは空のバスケットを手にとった。 | ||
わっかりました! うんうん。外の方が話しやすいことってありますもんね! | ||
(モテモテガールの考える恋の大作戦! しっかり拝聴させていただきます!) | ||
着きました。 | ||
イヴに連れられてマーガレットがやって来たのは、リンゴ畑だった。 | ||
それじゃあ、まずはイヴの祝祭プランを聞かせてください! | ||
はい。では、まずマーガレットさんは右から、私は左から収穫していきましょうか? | ||
(ん……? 左右から何を収穫するの? 男子? ”ほかく”ってこと? 無理やり一網打尽に?) | ||
良からぬ妄想が暴走し、マーガレットは顔を赤らめる。 | ||
リンゴの収穫をお手伝いして欲しいんですが……明日のチョコリンゴを作ろうと思いまして……。 | ||
あ、なるほど! それじゃあ早速っと。 | ||
言いながら、マーガレットは手近なリンゴをひとつもぎ取ってみる。 | ||
ダメッ! | ||
え!? なに? | ||
その実はまだ若いんです。ちゃんと熟した実から採ってくださいね。 | ||
食べても酸っぱいですし! チョコリンゴにはなりませんから……。 | ||
確かに! まだ青いですね……失礼しました。 | ||
と、マーガレットがその若いリンゴをバスケットへ放り投げた。 | ||
では、はじめましょうか? ここのリンゴ、全部収穫しないといけませんから……。 | ||
え? これ全部チョコリンゴにするんですか? | ||
そうですよ。それでも足りないくらいです。 | ||
もしかして、本当に一網打尽……? 何人に贈るんですか? | ||
そうですね、出来るだけ大勢の人に贈りたいですね。 | ||
ちょ、ちょっと待って下さい。真剣勝負というのは普通ひとりに……。 | ||
困惑するマーガレットの声をさえぎるように、大勢の男たちがイヴの名を叫びながら向かってくる。 | ||
イーヴー! イヴちゃーん! L・O・V・E・E・V・E! | ||
(何て強い想いなの? しかもこんなに大勢! よりどりみどりってレベルじゃない!) | ||
向かってくる男たちを見て、マーガレットの中で何かが繋がった。 | ||
(そうか! だからイヴは、たくさんのチョコリンゴが必要なんだ! この恋、見切った!) | ||
イーヴちゃーん! | ||
行きます! サイフォン・メモワール! | ||
瞬間──、マーガレットの両の掌に桃色の光が宿る。 | ||
あなたたちのこと、根掘り葉掘り教えてもらいます! | ||
危険です! みんなリンゴに夢中で正気を失ってますから! ここは私に任せてください! | ||
そう言うが早いか、イヴは宙へ跳び上がり、木になっている赤いリンゴをもぎ取ると──。 | ||
はぁあああああ! アップルナックル! | ||
と、手にしたリンゴを男の口へと押し込んだ。 | ||
えーーーっ!! | ||
──うんまっ! | ||
リンゴをくわえた男は、そう叫んでその場に倒れこむ。 | ||
ええっと……。サ、サイフォンメモワール! | ||
戸惑いながら、マーガレットは倒れたその男の額に手を当てる。 | ||
ふむふむ。職業、教師。趣味、魚釣り。好きな女性は……っと。 | ||
マーガレットさん、何をしてるんですか? | ||
これは乙女の知りたい男子の基本情報を数値化、資料化して後で女子が盛り上がれるという……。 | ||
ちょっと何言ってるのかわかりませんが、そんなことより、次来ますよっ! | ||
あ、はいっ! | ||
(戦闘(?)終了後) | ||
イヴの戦いぶりは、見事という他なかった。 男どもの口に次々とリンゴをねじ込み、正気を取り戻していく。 | ||
どうも、とりみだしてすみませんでした。 | ||
いえいえ。リンゴは私が毎日、街までお届けしますので、安心して待っていてくださいね♪ | ||
男たちはイヴに深々と頭を下げてから、街へと戻っていった。 | ||
さあ、急いで収穫してしまいましょう♪ "ステラの祝祭"は待ってくれませんからね♪ | ||
わっかりました! 待ったナシで頑張ります! | ||
(ずいぶんと破天荒なプランだけど、私はイヴの味方だよ!) |
※話の最初に戻る
そして迎えた"ステラの祝祭"当日──。 | ||
バスケットいっぱいのチョコリンゴを持って、ふたりは街までやって来た。 | ||
いよいよ真剣勝負、待ったナシですね……。 | ||
真剣……勝負……? | ||
イヴは作戦通りにチョコリンゴをじゃんじゃか配っちゃってください! | ||
……はい! | ||
みなさ~ん。チョコリンゴですよー♪ 私からの贈り物でーす! | ||
イヴがそう呼びかけると、街の男たちが一気に駆け寄ってくる。 | ||
アップル・ナックル・チョコレーット! | ||
向かってくる男たちの口に、イヴはすさまじい速さでチョコリンゴをプレゼントしていく。 | ||
一方、マーガレットは── | ||
サイフォン・メモワールッ! | ||
チョコリンゴを受けとった男たちの額にふれ、乙女の欲しがる情報を収集して行く。 | ||
程なくして、チョコリンゴは全て男たちの口へと消えた。 | ||
じゃ、さっそく始めましょうか? | ||
と、マーガレットはピンク色の厚いノートを広げる。 | ||
このブックに私がサイフォン・メモワールしてきた、男子の情報が資料化されています。 | ||
それで何をするんですか? | ||
え? ですからチョコを配ってから、本命を選ぶ作戦ですよ。 | ||
本命? 選ぶ? さくせん!? | ||
想ってくれる男子が多すぎて、祝祭までに誰を本命にすればいいのかわからない── | ||
だからみんなにチョコを配って、あとから本命を決めるっていう……作戦じゃ、ないんですか? | ||
いいえ……全然違います。 | ||
え? ……違うの? なんで? 祝祭ですよ、”ステラ様の祝祭”! | ||
マーガレットは、バスケットの底に残った若いリンゴを手に取って、 | ||
じゃ、じゃあ本当は別にいるんですよね? 本気でこれを食べてもらいたい人が! | ||
と、イヴにそれを差し出した。 | ||
あ、そうですね。ひとり、いますけど……。 | ||
なーんだ! やっぱりいるじゃないですか! じゃ、早速行きますよ! その人の元へ! | ||
でも、そのリンゴは……。 | ||
チョコなんてかかってなくても平気です! 私にはコレがありますから! | ||
と、マーガレットは弓矢(恋×1)をイヴに見せる。 | ||
……それは? | ||
ちょっとちょっと! イヴ、何のために私が来たと思ってるんですか? | ||
リンゴを収穫するお手伝いでは? | ||
そうそう「さっきはまだ熟れてないリンゴ、採っちゃってすみませんでした」……ってちが~う! | ||
……違うんですか? | ||
とにかく、その本命男子のところに行きましょう! | ||
ふたりがやって来たのは、広場にある屋敷の一室だった。 | ||
このドアの向こう側に居るんですね。これを本命で食べさせたい人が……。 | ||
と、マーガレットは若いリンゴをイヴに手渡す。 | ||
はい……。広場でリンゴを売っていると、いつも窓から見てるんです、その人。 | ||
なるほど、それで一目惚れをしたと……。 | ||
いえ。……なんていうか、私のリンゴを食べてもらいたいなって。 | ||
イヴ、それを人は"恋"……と呼ぶんですよ。 | ||
そういうものでしょうか? 私はただ……。 | ||
安心して下さい! この弓矢(恋×1)には、人に恋をさせる力が宿っているんですから! | ||
私はただこのリンゴを……。 | ||
そう、イヴはただそのリンゴを彼の口へ放り込めばいいんです。私がコレで射抜いた後に……。 | ||
と、マーガレットは弓矢(恋×1)を引く。 | ||
マーガレットさん! 待った! 待ったです! | ||
イヴ、運命の弓はすでに引かれました! 待ったナシです! | ||
イヴの「待った」を振りきって、マーガレットが扉を蹴破る! | ||
放たれよ! 乙女の想い! | ||
マーガレットは一片の躊躇もなく、ベッドで寝ている男に向けて矢(恋×1)を放った。 | ||
(え! いつかの微妙な男子!?) | ||
矢(恋×1)は男の体を貫き、そのま乾いた音を立てて床に転がった。 | ||
イタッ……くない? 今、僕に何か刺さりませんでしたか? | ||
男が起き上がるやいなや、体に傷のない事を確認する。 | ||
さあイヴ、早く彼の前に! 早く彼にリンゴを! | ||
マーガレットはイヴの背中を押して強引に男の目の前に立たせる。 | ||
でも、私本当に── | ||
自分の心に嘘はつかないで! | ||
……は、はい。 | ||
マーガレットの気迫に押されるまま、イヴは男と向き合って── | ||
あの、これ……まだ少し若いんですけど……。あ、アップル・ナックル♪ | ||
と、彼の口に優しくリンゴを押し込む。 | ||
うぐ……う、うまあ! | ||
ふふふ。よかったです♪ 気に入ってもらえて。 | ||
うん、すごく美味しい……。想像していたよりも、ずっと、ずっと美味しい。 | ||
はい。私のリンゴは特別美味しいんです♪ | ||
あの……もしよかったら、また届けてくれないかな? 君のリンゴ。 | ||
はい。もちろん♪ 今度はもっと甘いのを♪ | ||
おおおお! これがカップル成立の、恋愛成就の瞬間なんですね! 私……涙で前が見えません。 | ||
感極まってむせび泣くマーガレットに、イヴが気まずそうに声をかける。 | ||
あの、感動してるところすみません。私、この方とお付き合いするつもりはありませんよ。 | ||
ええええ? だってさっき言っていたじゃないですか? リンゴを食べさせたい人がいるって! | ||
はい。この人、いつも窓から私を見てたから、もしかしてリンゴ食べたいのかなって……。 | ||
ええ。美味しそうだなと思って眺めてました。子供の頃から病弱で、外には出られないので……。 | ||
やっぱり……。私はそんな彼をみて、純粋にリンゴを食べてもらいたいな、と。 | ||
……それだけ? 恋じゃないの? 本命じゃないの? | ||
はい。ですから、私さっきから何度も止めていたんですけど……。 | ||
(ヤバッ! どうしよう。恋させた! 私、無駄に恋させちゃった!) | ||
あの、「やらかしたっ!」って顔しているところ、すみません。 | ||
と、男は青い顔をしているマーガレットに声をかける。 | ||
僕も、ただ純粋に、ただひたすらに、リンゴを食べてみたいなあって。恋愛感情とか全くないです。 | ||
え! どういうことですか? 私の矢、さっき当たりましたよね? | ||
当たった……かな? 確かに、ちょっと痛かった気がします。 | ||
ちょっと痛かった……だけ? | ||
と、マーガレットはベッドと壁の隙間に転がっている矢を拾い上げる。 | ||
矢についた(恋×1)の部分を剥がすと、その下から(練習用)の文字が見える。 | ||
なにこれ? (練習用)の上から(恋×1)の紙が貼ってあるだけじゃないですか! | ||
マーガレットは手にした矢(練習用)を握りしめ、悔しそうに床を叩く。 | ||
悔しいい……。全力で頑張ったのに……。全力で、全力でだまされるなんて……。 | ||
マーガレットさん。そんなに落ち込まないでください……。 | ||
悔しさに打ちひしがれるマーガレットにイヴが優しく声をかける。 | ||
はい、チョコリンゴ。マーガレットさんの分です。ちゃんとひとつ、取っておきましたよ♪ | ||
さあ、これ食べて、元気だしてください。 | ||
イヴは、マーガレットに優しく微笑んで── | ||
アップル・ナックル・チョコレート♪ | ||
と、マーガレットの口にチョコリンゴを押し込んだ。 | ||
うぐ……う、うまあ! 美味しい……。けどくやしい……。うう、でも美味しい……。 あらあら、泣くほど美味しいんですね……。 | ||
ふたりの祝祭は、こうして暮れていった。 |
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