よろず誤字再び
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 ……ここは、どこにゃ？ | ||
| 目を開くと、そこは見知らぬ街……だった。 | ||
| 賑わう人々と、まるでお祭りのような空気感。 | ||
| 立ち並ぶ建物も見覚えがない。 | ||
| 飛ばされちゃったみたいにゃ。 |  | |
| 君は、そうだね、と口にするのがせいぜいで、困ったことに状況を把握しきれていない。 | ||
| 仕方ないにゃ。誰かに聞いて確認するしかないにゃ。 | | |
| たまたま通りかかった女性に、声をかけてみた。 | ||
 はい？ | ||
| 君はひとまず状況を整理するため、ここはどこなのかを尋ねてみた。 | ||
 | ここはですね、うーん、わたしも正式な名前は知りません。 | |
 | ただそのー、お祭りをやってます。それは確かです。 | |
| ではわたしはこれで～。 | |
| ものすごくぼんやりとした情報を伝えただけで、その場から立ち去ろうとする。 | ||
| 慌てて呼び止めて、君はひとまず自分とウィズの名前を告げた。 | ||
| わたしは、ツクヨです。かみ──じゃなくて、ええっとよく歌う人です。 | |
| よく歌う人……さらにぼんやりとした情報を。 | ||
| あ、そうだ。この街に詳しい人のところまでご案内しましょう。 | |
| ちょうどわたしも人を探していたんです。ふふ、よく迷子になる友だちなんですよ。 | |
| 仕方ないにゃ。キミ、ついていくといいにゃ。 | | |
| ある意味で、どこか危なげな空気が漂う少女についていくことにする。 | ||
| でもお祭りの雰囲気はいいにゃ。何も考えず、遊んでいたい気分になるにゃ。 |  | |
| そんな呑気なことを……と口にしようとしたときだった。 | ||
 | 喋る猫さんなんて、素敵ですね。ミコトちゃんが言っていた猫神様みたいです。 | |
| ウィズの囁き声まで聞こえるなんて、すごい──ではなく。 | ||
| ミコト──君はその名前に聞き覚えがあった。 | ||
| そうしてミコトという名前を聞いてから街を見渡してみると、 | ||
| どことなく、あの"とうなめんと"会場のような風情がある気がしてきた。 | ||
| ミコト……あのお騒がせ神様のことかにゃ？ |  | |
| もしかしてミコトちゃんのことを知ってるんですか？ | |
| あっ、いや……だとすると、あなたが猫神様？ | |
| そうにゃ。私が猫神のウィズにゃ。崇めるといいにゃ。 | | |
| ウィズが得意気に言う。 | ||
| そうなんですね～。はー、びっくりしましたー。 | |
| もう全くというほど驚いた表情を見せず、ツクヨがそう返してきた。 | ||
| わたし、猫神様なんて初めて見ました～。 | |
| そう言ってツクヨがウィズを抱きかかえてしまった。 | ||
| ちょっと待つにゃ。今の流れでどうして私を持ち上げるにゃ。 |  | |
| さあ、行きましょう。ミコトちゃんがどこかで待っていますよ、猫神様。 | |
 はぁぁ……今月もダメかぁ……。 | ||
 | なんだか世知辛い世の中になっちゃったなぁ。 | |
| ミコトにゃ。 | | |
| おーい、ミコトちゃーん！ | | |
 | あっ……ツクヨちゃん。 | |
 | ──って、猫神様！？ | |
| 君とウィズの姿を視界におさめたミコトが、ツクヨとは対照的な反応を見せた。 | ||
| にゃはは。ミコト、元気だったかにゃ？ | | |
 | げ、元気も元気。すっごく元気です！ 猫神様とお供の方もお元気でしたか？ | |
| ……あっ、猫神様じゃなく、ウィズ様ですね。ごめんなさい。 | |
| あるばいとはどうだったのー？ | | |
| えっ……。 | |
| …………。 | |
| そんなことよりウィズ様とお供の──魔法使いさん、どうしてここに？ | |
| どうしてと言われても困るにゃ。いきなりここに飛ばされてきたにゃ。 | | |
| いきなり？ そんなことあるのかなぁ……。 | |
| 久しぶりに会えたなんてよかったですね～。それじゃあ、わたしはこれで～。 | | |
| いや、待つにゃ。どうしてツクヨは何かっていうとすぐ立ち去りたがるにゃ！ | | |
| 何かとここから去ろうとするツクヨを呼び止め、諸々の疑問を投げる。 | ||
| ここは世界各地の神様が、お祭りを楽しんでいる場所なんです。 | |
| いわゆる下界と似たような趣向で、街が作られています。 | |
| ……相変わらず自由な神様たちにゃ。 | | |
| このお祭りは１年に１度しかないから、皆さんとても楽しみにしていたんですよ。 | |
| とうなめんとはもういいのかにゃ？ | | |
| はい！ 喧嘩神輿とうなめんとは、また違った催しですから！ | |
| だけど、神様たちが遊んでいてもいいのだろうか？ | ||
| あのとき、あの場で下界の戦争を終わらせたけれど……。 | ||
| ふふん、いい質問ですね、お供の方。 | |
| 普段はみんなお仕事お仕事の毎日ですから、たまには羽を伸ばさないとって。 | |
| 神様たちの会議で決まったことなんです。 | |
| ……呑気な神様にゃ。 | | |
| 仮にも神様に、そんな失礼なこと言っちゃダメだよ、と君はウィズに言った。 | ||
| あはは……でも中には、今日こういう日だからこそ忙しい神様もいるんですよ。 | |
| ミコトもかにゃ？ | | |
| 私は……。 | |
| ミコトは、神様として暇だからお祭りに来たってことかにゃ……。 | | |
| そんなことないですよ～。ジョゼフィーヌちゃんに"あるばいと"を紹介してもらったんです。 | |
| ジョゼフィーヌというのは、あの商いの神様……トミ・コトブキのことだ。 | ||
| 頑張って働いて、年越しに備えていたんです。だからミコトちゃんは、暇じゃないですよ。ね？ | |
| うっ……。 | |
| あるばいと……何か仕事をしていたらしい。 | ||
| ミコトは、まだあんまりお参りしてもらえてないにゃ？ | | |
 | そ、そんなことありませんよ！ あの喧嘩神輿とうなめんとで優勝してから、私も成長したんです！ | |
| あれがきっかけで私も誤字が少なくなり、あれよあれよとお参りの方が増えました。 | |
| それはもうすごかったんです。一時はトミちゃんや、マトイちゃんを凌ぐほどの参拝客で……。 | |
| マトイはミコトの友人の神様……だったはず。 | ||
| はぁ……。 | |
| あの頃はよかったなぁ……。 | |
| だとしたら、どうして"あるばいと"をしなくてはならなくなったのか…… | ||
| 恐らくウィズも同じ疑問を抱いているに違いない。 | ||
| それはですね……。 | |
| 寄付！？ | | |
| ……はい。 | |
| ツクヨの説明によると、神様たちの間で、何かしらの"寄付しすてむ"というのがあり、 | ||
| ミコトは率先して寄付することにしたらしい。 | ||
| だがたとえば、"１０"と書いて寄付しなければならないところを、 | ||
| あろうことかミコトは"１００"、あるいは"１０００"と書き記してしまったのだとか。 | ||
| 年越しのためのモノを失ってしまい、ひもじい思いをすることになったミコトだが、 | ||
| それを憐れに──ではなく、可哀想に思ったトミが、"あるばいと"を紹介してくれたという。 | ||
| ジョゼフィーヌちゃんは、商いの神様だから、紹介先もたくさんあるって言ってました。 | |
| こんな初歩的な失敗をしたせいで、お金の重みを知ることになりました……。 | |
| でもミコトちゃんなら大丈夫。うん、頑張ろうね！ | |
| 頑張らないと、年を越せない……はぁ……。 | |
| どこかの神様が、私を助けてくれたりしないかなぁ。 | |
| 神様が他力本願でどうするにゃ！ |  | |
| ウィズの激励はしかし、落ち込んだミコトには届いていないようだった。 | ||
| ねがてぃぶはいけませんわ！ ってジョゼフィーヌちゃんも言ってたよ！ ね、頑張ろ！ | |
| ところで"あるばいと"っていったいどんなことをしていたの？ と君は訊く。 | ||
| えっと……お野菜を売ったりとか……。 | |
| ちょこれいとを売るために、衣装を着たりとか。あれすっごく可愛かったよ！ | |
| こんなに忙しくなるなんて……どこかで一攫千金を……。 | |
| ミコトは、すっかりやさぐれてしまっている。 | ||
| ──おお、いたぞ、セイ。あそこだ。 | ||
| 探したぞ。道もわからないのに何故ふらふらと……。 | ||
 ん？ おお、お前ら！ あんた──確か猫神様、を名乗ってた猫とその使いの者。 | ||
| 声をかけてきたのは、あのとき君と一緒に喧嘩神輿とうなめんとに参加した── | ||
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