なにを思うか戦神
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マトイ、トミと別れた君たちは「喧嘩神輿とうなめんと」会場へと戻ってきた。 | ||
![]() お、やっと戻ってきたか? ……ったく! これから戦だっていうのに呑気なもんだぜ。 | ||
![]() スウちゃん、セイちゃん、ちょっとお話があります! | ||
と、ミコトはいつになく真剣な表情でずいとふたりに迫る。 | ||
![]() | ち、近いよお前……。 | |
ふたりは戦神なんでしょう? | ![]() | |
![]() | そうだけど……なんだよ今更? | |
なんで戦なんてするんですか? なんでやめてあげないんですか! | ![]() | |
![]() | なんでって言われてもよぉ……。 | |
セイちゃん! なんで? なんで? なんでなんでなんでナンデ! | ![]() | |
![]() | ちょ、ちょっと待てミコト。落ち着いて話せ。 | |
……だって、豊穣神のウカちゃんも、貧乏神のカフクちゃんも、変態狐のアツマだって……。 | ![]() | |
みんな戦で困ってて……。それになにより……下界の人たちが可哀想じゃないですか……。 | ![]() | |
戦なんて……全部やめちゃえばいいのに……。 | ![]() | |
![]() | ……戦は俺たちが起こしてるわけじゃないんだ。戦は人が起こすんだよ。俺たちじゃない。 | |
でも……戦する人の……悪い人の味方じゃないですか……。 | ![]() | |
![]() | ……悪人にも、神は必要じゃないか。……それに俺たちに手を合わせるのは戦人だけじゃない。 | |
![]() | ……戦場に出た息子の無事を必死に願う母親は、必死に手を合わせるんだ……。 | |
![]() | どっちが勝つとか……負けるとか……、そういうことじゃないんだよ……。 | |
![]() | 戦場の兵士だってそうさ。なるべく死なずに帰りたい、なるべく殺さずに帰りたい……。 | |
![]() | 本当は、そんな奴らの心の支えなんだよ。……戦神っていうのは。 | |
![]() | 戦場にいるのはそんな奴らばっかりだ。戦を望む奴は、矢の届かないところにいるんだ……。 | |
……戦神は戦を望まない……? | ![]() | |
![]() | ああ……俺たちはただ、兵士の無事を望む。 | |
……なんにも知らずに、変なこと言ってごめんなさい……。 | ![]() | |
![]() | 謝るなよ。お前はひとつも間違ってねえ……。 | |
![]() | 実際、戦神なんていなくなりゃ、下界はいくらかマシになるだろうよ。 | |
![]() | オレたちをダシにして戦を起こすバカも多いし、それに……カタバみたいなバカもいる……。 | |
![]() | アイツが頭領になってから、全てがおかしくなっちまった。 | |
……どういうこと? | ![]() | |
![]() | アイツはいたずらに人を煽り、あらゆる国を戦へと導いたんだ……。 | |
なんでそんなことを……? | ![]() | |
![]() | 戦になればそれだけ有難がられるからな、戦神ってのは……。社は栄えるし、神力も強くなる。 | |
酷い……。 | ![]() | |
![]() | ……喧嘩神輿でカタバが勝てば、奴は下界に降りて、自ら戦に参加するだろう。 | |
![]() | そうなれば、戦は果てしなく広がり、下界は今以上に悲惨なものとなる……。 | |
![]() | だからオレたちは負けるわけにはいかねぇんだ。何が何でもな……。 | |
うん。絶対勝とう! みんなのために! | ![]() | |
──そして君たちは、最後の喧嘩神輿へ臨む! | ||
ついに君たちは、決勝戦の舞台となる神輿の前までやってきた。 | ||
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![]() | 皆様、ついに八百万の頂を決する戦いが始まろうとしています! 寅の神輿に乗りまするは── | |
![]() | 喧嘩神輿の生きる伝説! 猫神様とそのご一行! | |
ナゴミの声に合わせて巨大な照明が君たちにあてられると、会場からは大きな歓声が上がる。 | ||
……何か私、すごく緊張してます。 | ![]() | |
緊張したところで強くなるわけじゃねぇよ。怪我しない様に、隅っこで和歌でも詠んどけよ。 | ![]() | |
あ、そか……和歌詠もう……。 | ![]() | |
と、ミコトは目を閉じ深く息を吸う。 | ||
だいじょうぶ、きっとかてるよ、だいじょうぶ、だいじょうぶだから、おちついてみよう……。 | ![]() | |
……それ、もはや和歌というか……。何か……必死さは伝わってくるが……。 | ![]() | |
ふー、何か落ち着いてきました! | ![]() | |
効果アリにゃ! | ![]() | |
![]() | 対する龍の神輿にのりまするは──八百万随一の武闘派、カタバ様率いる戦神四十七柱ご一行! | |
明るく照らされたカタバは、冷たい微笑みを君たちに向ける。 | ||
![]() | 決勝まで勝ち残ったか……半端な戦神崩れにしては上出来か……。 | |
……テメェにはずいぶん鍛えられたからなぁ。おかげ様で楽勝だったぜ。 | ![]() | |
![]() | フッ……。しかしおしい、阿呆のスオウはさておい、セイ、貴様まで私の元を去るとは……。 | |
あ! おいっ! さておいてんじゃねぇぞ! | ![]() | |
![]() | どうだ? 今ならまだ許してやる。四十七柱へ戻らんか? 私と共に暴れよう……。 | |
断る……。下界を乱して何が神だ……。 | ![]() | |
……あなたに勝たせるわけには行きません。 | ![]() | |
私、願いも決めずに出場しちゃったけど、今は違う。勝って、下界の戦を終わらせる! | ![]() | |
![]() | 戦は人の性だ。人が人である限り、戦がなくなることなどありはしない! | |
……ずっとは無理かもしれないけど、今起こっている戦だけは……あなたが始めた戦だけは──。 | ![]() | |
![]() 絶対に終わらせる! | ||
だとよ! | ![]() | |
![]() | いいだろう! かかってこい! | |
カタバの体から激しい闘気が立ち上る──。 | ||
そして試合開始の太鼓が鳴り響く! | ||
(戦闘終了後) | ||
おーと! 猫神様のお供が放った面妖な攻撃が的中! カタバ様の体が宙を舞ったぁー。 | ||
神輿から投げ出されたカタバは、そのまま地面に激突する。 | ||
![]() | 勝負アリ! 八百万の頂点は猫神様ご一行です! | |
やったにゃ! | ![]() | |
……やったね! 猫神様っ、スウちゃん、セイちゃん。 | ![]() | |
ミコトは飛び跳ねながら君たちの間を走り回って喜ぶ。 | ||
![]() | それでは猫神様、まずは副賞の目録を進呈いたします。 | |
と、ナゴミはウィズに薄い紙の包みを手渡す。 | ||
……(ゴクリ)。こ、これが神の願いを叶えるという目録……。 | ![]() | |
![]() | 中の御札に叶えたい願いをお書き下さい。 | |
(これでクエス=アリアスに帰れるにゃ) | ![]() | |
ウィズはそう君の耳元でささやいて、安堵の表情を見せる。 | ||
![]() | 願いはもうお決まりですか? | |
はい! 私も決まってます! | ![]() | |
![]() | ちょ、ちょっと待って下さい! ひとつだけですよ! 何個も願われても困ります! | |
え……そ、そんな話聞いてないよ!? | ![]() | |
ど、どうするにゃ……。 | ![]() | |
君はウィズと顔を見合わせる。 | ||
ミコトの願いを叶えれば、自分たちはクエス=アリアスに戻ることが出来ない。 | ||
![]() | やっぱり私、ウィズ様に願いを譲るよ……。 | |
ミコトは言いにくそうに続ける。 | ||
![]() | だって……ウィズ様たちをこの異界に引き込んだの、私の誤字のせいだから……。 | |
と、ミコトは懐から一枚の短冊を取り出す。そこには見覚えのある和歌が書かれている。 | ||
「まつりね、こきみはわたしの手を引いて、喧嘩神輿に挑まんとする」 | ||
ミコトがトミとマトイを喧嘩神輿に誘うために詠んだ和歌だ。 | ||
……これがどうしたにゃ? | ![]() | |
![]() | だからね……その……ウィズ様が「祭り猫」で、お供の方が……「キミ」で……。 | |
ミコトの言葉に君はふと、クエス=アリアスで祭りを楽しんでいたウィズの姿を思い浮かべる。 | ||
![]() にゃはは! 街の「祭り猫」とは私のことにゃ! | ||
ここへ迷い込む直前、ウィズは確かにそう言っていた。 | ||
そして君はミコトに出会った時、なぜか彼女の手を引いて喧嘩神輿に挑まんとしたのだ。 | ||
その時、君の中で点と点が線で繋がった──。 | ||
「祭り猫、キミは私の手を引いて、喧嘩神輿に挑まんとする」 | ||
![]() | ……そういうことです。ホントごめんなさい! ウィズ様とお供の方! | |
![]() | だからこの願い事目録は、ウィズ様に譲ります! これを使ってどうか元の世界へ……。 | |
と、ミコトは深々と頭を下げる。 | ||
ちょ、ちょっと待つにゃ! だったら私たちはミコトの和歌で戻れるんじゃないかにゃ? | ![]() | |
![]() | いやいやいやいや! 私、誤字りますよ! どこ行くかわかんないですよ! 命に関わります! | |
そう必死に否定するミコトにウィズは微笑む。 | ||
きっと今のミコトなら大丈夫にゃ! 自信持つにゃ……。 | ![]() | |
![]() | ま、この際、そうするしか無いんじゃねぇの? | |
![]() | ……とりあえず、目録に願い、書いてみろよ。誤字らないようにさ……。 | |
![]() | ……わかった。……やってみる。 | |
ミコトは深く頷いて、懐から筆を出す。 | ||
その時──。 | ||
一振りの刀が君たちに向かって飛んできた。 | ||
伏せろ! | ![]() | |
スオウは寸でのところでその刀をはじくと、地上のカタバを睨みつける。 | ||
テメェ、何しやがる! | ![]() | |
![]() | 愚かな……戦あっての戦神だぞ! 戦が無くなれば、我らなど無用の神にすぎん。 | |
人あっての神だ。戦は人の起こすもの。我らが介入すべきものではない。 | ![]() | |
……戦がなくなるのなら、俺は喜んで無用の神になるぜ。 | ![]() | |
![]() | ……スオウ、セイ、これで終わると思うなよ。いつか必ず後悔させてやる……。 | |
そう吐き捨てるようにいい、カタバは会場をあとにする。それを見てミコトは、 | ||
![]() | それでは改めまして……。 | |
と、目録に願いを書き込んでいく。 | ||
![]() | ……今、下界で起こっている、戦神カタバの起こした戦を全部おわらせて欲しい……っと。 | |
お、奇跡! 誤字なし! | ![]() | |
![]() | へへへへ。うん。ちゃんと書けたね。 | |
![]() | あ、ちょっとその願いは……。 | |
![]() | え? | |
![]() | 神の所業にかんすることですので……別途ご利益ぽいんとが必要になりまして……。 | |
![]() | そ、そんなぁ……。な、何ポイント必要なんですか……。 | |
![]() | ざっと……8000万ぽいんと位ですかね……。ですからこちらの願いは無効に──。 | |
ナゴミは目録を持ってその場をさろうとする。 | ||
その時。 | ||
ちょっとお待ちなさい! | ![]() | |
私のご利益ぽいんとをお使いなさい! | ![]() | |
全ての恋する乙女の為に、私のぽいんともつかうがいい。 | ![]() | |
![]() | あ、マトイちゃん! ジョゼフィーヌちゃん! | |
私の貯めた、800万ぽいんとを全てあなたに託します。 | ![]() | |
……ワタチのも使うのじゃ! | ![]() | |
![]() | ……なるほど。若干反則っぽいですけどこれならなんとか……。 | |
![]() | ……ありがとうみんな。 | |
そして目録は願いが叶えられたことを告げるように優しい光を放った。 | ||
……これで少しは下界もマシになるだろうよ。 | ![]() | |
![]() | ……私、なるべく戦が起こんないよう、和歌でみんなの心を支えてあげるよ。 | |
刀を捨てて、筆を持て……か。スオウ、俺たちも習ってみるか? | ![]() | |
……わるくないな。どうせこれからしばらく暇だしな! | ![]() | |
![]() | まっかせなさい! | |
じゃ、先生。早速手本を見せてもらおうかな? | ![]() | |
そうミコトに言って、セイはウィズの方を見る。 | ||
よろしくお願いしますにゃ! | ![]() | |
![]() | はいは~い。 | |
と、ミコトは短冊に筆を走らせる。 | ||
![]() さようなら、神の祭りで会った君、ウィズという名の猫の神様……。 | ||
ミコトが筆を止めるとウィズと君の体がうっすらと消え始める。 | ||
さすが神様にゃ! ありがとう! 楽しかったにゃ。 | ![]() | |
![]() | さようなら、私の猫神様……とお付きの方。この御恩は絶対忘れませんから! | |
![]() | ……達者でな! | |
![]() | じゃぁな! | |
目を開くとそこは、見慣れた街の広場だった。 | ||
![]() | どうやらミコトは誤字なく私たちを送り届けてくれたみたいにゃ! | |
君はウィズに頷いて、改めて辺りを見回してみる。 | ||
収穫祭はまだ行われているが、お祭りはもう十分だ。 | ||
さぁ帰ろうか? 君はウィズに声をかけようとするが──。 | ||
![]() | にゃにゃ!? キミ、向こうの出店で焼きたてのパイを売ってるにゃ! 私に続くにゃ! | |
とウィズはキミの肩から飛び降りて、すごい速さで走って行く。 | ||
つくづく「祭り猫」だ……。キミは小さくため息をついて、その小さな背中を追いかけた。 | ||
君とウィズのお祭りは、まだもう少し……続くようだ。 |
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