ライバルは自分自身
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続々と人が集まってくるにゃ。 | ![]() | |
ロニールが、各地の調香師に呼びかけたあとから、この天上岬には調香師と名乗る人物── | ||
もしくは、調香師を目指す者たちが、あらゆる理由でファムたちを訪ねてきた。 | ||
![]() これ、そこの者。ちこう寄れ。 | ||
キミ、呼ばれているにゃ。 | ![]() | |
手に珍しい鳥を乗せた女の子が、君に手招きしている。 | ||
![]() | ここにファム・リリーという調香師がおるな? | |
君はうなずく。 | ||
いま、私の名前が呼ばれたような気がしましたー。 | ||
工房からファムの声が聞こえる。 | ||
ファムに用事があるなら、呼んでこようかと尋ねた。 | ||
![]() | よい。妾は、下々の者とは直接口をきけぬ立場なのじゃ。 | |
キミは、高貴な生まれだったのかにゃ? | ![]() | |
そんなわけないよと、君は苦笑する。 | ||
少女は恥ずかしそうに小さい肩をすくめていた。 | ||
どうやら、ファムに直接話しかける勇気がないだけのようだ。 | ||
ずいぶん、尊大な物言いだにゃ。 | ![]() | |
少女の手に乗った鳥が、キキーッと不思議な鳴き声を発した。 | ||
![]() | 当たり前じゃ。このしゃべり方は、王族として育ったゆえ……おっと。 | |
![]() | うっかり口を滑らせてしもうたが、妾のこと、他言無用ぞ? | |
女の子は、思い出したように手を打った。 | ||
![]() | ファム・リリーに伝えてくれ。このたびの大会、身分の差は関係ない。 | |
![]() | 調香師の腕前、思う存分競い合おう──とハナス・セオラが言っておったと伝えてくれ。 | |
君は、ちゃんと伝えておくよと答えた。 | ||
![]() | 頼むぞ。では、キッキー殿。去るとしよう。 | |
ハナスの手に乗っている鳥は、キッキーという名前らしい。 | ||
ハナスというどこかの王族らしき少女は、鳥の奇妙な鳴き声と共に立ち去った。 | ||
お久しぶりです。ルィナ先輩。 | ![]() | |
![]() | ||
君がハナスと話している間に、フェルチは、別の来客と対していた。 | ||
彼女は、ルィナ・アンシー。 | ||
フェルチが先輩と呼んでいるということは、彼女も調香師らしい。 | ||
![]() | わたしの愛しいフェルチさん。ご無沙汰しておりますわ。 | |
礼儀正しくお辞儀する。 | ||
![]() | ファムさん共々、お変わりないようで安心しました。 | |
![]() | 実は新作の香水を作ったのです。大会の前に、貴方の感想をお聞かせ頂きたくて。 | |
先輩の香水を? 嫌な予感がします……どんな香水ですか? | ![]() | |
![]() | これですわ。は~い、しゅっ、しゅっ。 | |
ルィナは、持参した香水をフェルチに噴霧した。 | ||
ちょっと! いきなりは……。ん? これは、ケ……ケロッ! ケロケロ。 | ![]() | |
![]() | これは、懐かしいお家に帰りたくなる香水ですの。 | |
![]() | 親不孝な子どもを家に帰らせたい時や、喧嘩の仲裁などに利用できると思いまして……。 | |
なんですか……ケロッ! これは……ケロコロッ! | ![]() | |
![]() | あら、その様子は……帰りたくなるじゃなくて「カエル」そのままですわね。 | |
ルィナは、手に持った香水の中身を確かめる。 | ||
![]() | どうやら、持ってくる香水を間違えたみたいです。 | |
そんな大事なことを、真顔で言う。 | ||
んもう……なんとかして……ケロケロ! | ![]() | |
![]() | ごめんなさいね。今すぐ、治してあげますから。 | |
![]() | あら、カエル語しか喋れなくなった人を戻す香水はどこだったかしら? | |
どうやらこのルィナという人は、おっとりした性格そのままに──。 | ||
頭の中も、相当のんびりした人のようだ。 | ||
大変な目にあったわ。 | ![]() | |
あの先輩は、ファム以上におっちょこちょいなんだから……もう! | ![]() | |
ようやくカエルから、元の人間に戻れたフェルチ。 | ||
![]() お久しぶりね、リリー姉妹。 | ||
あなたたちは、ロサとロレシャ!? まさか、ふたりも大会に参加するの? | ![]() | |
誰にゃ、このふたりは? | ![]() | |
ウィズが小声で囁く。 | ||
天上岬の近くの村に住んでいる調香師よ。ふたりの工房は、並んで建っているの。 | ![]() | |
腕はいいんだけど、ロサとロレシャは昔から犬猿の中だったはず……。 | ![]() | |
![]() | そうよ! でも、私たちは過去の因縁は忘れて──。 | ![]() |
![]() | 世界一の調香師の称号を勝ち取るために、手を組むことに決めたの! | ![]() |
どっちが喋ってるのか、区別つかないにゃ。 | ![]() | |
このふたり、昔から犬猿の仲だったけど、生まれた時からご近所同士。 | ![]() | |
それだけに付き合いが長く、妙に息が合うのよね。 | ![]() | |
![]() | あなたたちリリー姉妹には、絶対に負けないわ! | ![]() |
![]() | ……って、それは私の台詞よ! | ![]() |
![]() | なに言ってるの。別にどっちだっていいじゃないの!? | ![]() |
ますます、どっちが喋ってるのかわからなくなったにゃ! | ![]() | |
![]() | それよりもあんた、近すぎじゃないの? | ![]() |
![]() | そういうあんただって、もうちょっと下がったらどう? | ![]() |
![]() | 下がるのは、あんたの方よ! | ![]() |
喧嘩をはじめたふたりを見ながら、フェルチがやれやれとため息をついていた。 | ||
大変です! | ![]() | |
アネーロが、血相を変えて駆け寄ってくる。 | ||
どうしたにゃ? | ![]() | |
どうやら……他の調香師は、チームを組んで今回の大会に挑んでくるようです。 | ![]() | |
それを聞いたファムが、フェルチの手を握った。 | ||
だったら、こちらもチームで対抗するしかないですね、お姉様!? | ![]() | |
![]() | いいえ、今回はファムとは組まないわ。 | |
握られたファムの手を振り払う。 | ||
え、どうしてですか……。 | ![]() | |
![]() | 今回の大会は、ファムの力がどれほどのものか、世に知らしめるいい機会よ。 | |
![]() | だから私の力に頼らず、ファムはファムで自分のチームを組みなさい。 | |
そんな~。 | ![]() | |
![]() | 一人前の調香師を目指すつもりなら、この大会で実力を示すことよ。いいわね? | |
ファムは、姉のフェルチと手を組みたいらしく、まだ納得いかない顔をしている。 | ||
![]() | ファム、いいわね? | |
わかりました……。私も、お母様の血を継ぐ調香師です。 | ![]() | |
お姉様が、そうおっしゃるのでしたら、私も一番を目指して頑張ります! | ![]() | |
と、宣言したファムは、背後にいたエテルネを振り返る。 | ||
だから、エテルネちゃん──。 | ![]() | |
あなたは、あなたで私たちの力を借りずに、やれるところまでやってみなさい。 | ![]() | |
自分がひとり立ちするからといって、見習いのエテルネにまでひとり立ちさせることないにゃ。 | ![]() | |
でも、エテルネはファムの言葉を励ましと受け取ったようだ。 | ||
![]() | お母様に修行の成果を見せてご覧にいれましょう……です! | |
その心意気です。負けませんよ! | ![]() |
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