かっこよさとは
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あ、あそこにさっきの人がいるよ! | ||
コヨミが指差した先には── | ||
あいてて……。足首の腫れが酷くなってきた。ボクとしたことが……。 | ||
先ほどの着地失敗で痛めた足をかばいながら逃げるハンサムがいた。 | ||
今のうちに捕まえちゃいましょう! | ||
任せとけ! 行け、クロ! | ||
ワンワン! | ||
もう追いついたのかい? なかなかやるね……。 | ||
こうなったら、ボクの美貌で、足止めしてみせる! | ||
ハンサムは、上体を捻って足首に負担のかからない格好いいポーズをとった。 | ||
くらえ! ハンサムフラァァァッシュ! | ||
ハンサムの全身からまばゆい光が放たれる。 | ||
……まぶしいにゃ! | ||
ボクのような美しい存在を目にしたことがないだろ? そのまま見とれ続けるがいいさ! | ||
あまりのまぶしさに、君もハンサムの輝きから目を逸らさざるを得なかった。 | ||
ウィズねーね、しっかり! | ||
コヨミ、あいつを見ちゃダメにゃ! | ||
おいおい。みんな、どうしちゃったんだよ? | ||
君を含む全員が、ハンサムの放つ美貌の輝きに苦しんでいるというのに── 驚くべきことに、キワムだけは平然としていた。 | ||
キワムにーには、平気なの? | ||
というか、みんながどうしてそんなに苦しんでるのかわからないな……。 | ||
そんな……ボクのハンサムフラッシュがきかないだって? | ||
ハンサム? お前、自分で思っているほど、ハンサムじゃないぞ? | ||
キワムは、平然と答える。 | ||
なっ!? な……なんだって!? そんなわけ──だってほら、ボクの格好を見ろよ。 | ||
ハンサムは、身につけている高級そうなスーツや、有名美容師に切ってもらった髪を自慢する。 | ||
格好いいって、そういうことじゃないと思うな……。 | ||
なななっ!? | ||
聞いたか? やっぱり子供は正直だよな。 | ||
子どものたわごとだ! ボクの格好よさは誰にも負けるわけがないんだ! | ||
でも、キワムにーにの方が強くて、優しいもん。 | ||
はは、なんか照れるな。 | ||
ハンサムは、怒りで全身を震わせた。 | ||
いつの間にか、全身から発せられていた光も消え失せている。 | ||
そんなださい奴がボクより格好いいだと? 認めない、そんなの絶対認めないからね! | ||
激高したハンサムは、我を忘れて君たちのもとに向かってきた。 | ||
きゃああああっ! | ||
危ないにゃ! | ||
君は、咄嗟にコヨミを守るために立ち塞がった。 | ||
退け! ボクの格好よさを、その子どもに認めさせるんだ! | ||
全く……おい、魔法使い。ここは力を合わせてあいつをぶっ倒すぞ。 | ||
君は、頷いて、ハンサムと戦う態勢をとる。 | ||
(戦闘終了後) | ||
ま……まさか、このボクが負けるなんて……。 | ||
観念しな。これ以上戦うつもりなら──来い、アウデアムス! | ||
アウデアムスが、キワムの前に立ち、ハンサムを睨みつける。 | ||
くっ……そんな脅して、このボクが怯むとでも思ってるのかい? | ||
ハンサムの全身から、さらなる闘気が発せられた。 | ||
まだ戦うつもりにゃ!? | ||
この世で一番ハンサムなのは、このボクなんだ! 醜い奴らは、全て滅びろ! | ||
ハンサムは、半ば自暴自棄になりながら拳を振り上げていた。 | ||
ほらコヨミ、巻き込まれないように下がってな。 | ||
キワムにーに……あのひと、すごく怖い……。 | ||
目に涙を浮かべるコヨミを見て、ハンサムの動きが止まった。 | ||
怖い……? このボクが……格好いいでも、美しいでもなく……怖いだって? | ||
うん……だって、さっきからずっと怖い顔してるんだもん……。 そんな怖い顔してないで、一緒に遊ぼう? そしたら、きっと楽しいよ。 楽しかったら、きっとそんな怖い顔しなくなるよ。ね? | ||
キャン! キャン! | ||
……ぼ、ボクをそんな目で見るな! ボクは美しく、誰よりも格好いいはず……! | ||
だが、終始コヨミは怯えた目でハンサムを見ている。 | ||
そ……そうなの……? | ||
ハンサムは、なにかを悟ったように表情を変えた。 | ||
ボクは……外見を磨くことばかり考えていた。中身を美しくすることを忘れていたんだ……。 | ||
アイスの床に膝を付くハンサム。 | ||
その身体が、ぼんやりとかすみ始める。 | ||
ハンサムの身体が、消えていくにゃ! | ||
元はデザートンの願望が生み出した分身ですから……。 | ||
今度こそ……ボクは、見た目も中身も……ハンサムな男に……生まれ変わるんだ……。 | ||
君たちに見守られながら、ハンサムは霧のように消滅した。 | ||
人騒がせなやつだったな。 | ||
でもこれで、このお城を抜けられるようになったわね。 | ||
コヨミのおかげだ。感謝するぞ。 | ||
えへへ、コヨミ、キワムにーにたちに助けてもらっただけで、なにもしてないよ。 | ||
でも、ほっとしたら眠くなってきちゃったの……。 | ||
倒れそうになるコヨミの身体を、キワムはしっかりと抱きしめる。 | ||
そしてそのままキワムに抱かれながら、コヨミは眠りについた。 | ||
疲れて眠っちゃったのね。 | ||
しょうがねぇ。コヨミが目覚めるまで、俺が傍にいてやるか! | ||
いいのかにゃ? | ||
そのデザートンって奴の退治はお前たちに任せたぜ。 | ||
任せてください。きっと見つけ出して、皆さんを帰れるようにしますから! | ||
ありがとう。頼んだぞ、魔法使い! | ||
キワムは、コヨミを抱いたまま、君に言った。 | ||
先を急ぎましょう! | ||
キワムがいれば大丈夫だ。 | ||
君たちは、アイスで出来たお城を後にした。 | ||
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