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| ああ、キワム。どこに行ってたの? 探してたのよ。 | |
| どこって……散歩だよ。 | |
| トキオさんとスミオが戻ってないの。どこに行ったか知らない? | |
| ……いや、見てないけど。 | |
| さっきばったり出会ったシキは、もしかするとトキオとスミオを探していたのかもしれない。 | |
| しかしスミオはともかく、トキオが何も言わず出てしまうなんてことがあるだろうか? | |
| ……心配だな。 | |
| 心配って……いや、私は別にどこに行ったのか知らない? って聞いただけで……。 | |
| わかった。俺が探してくる。 | |
| 言うが早いか、キワムは走りだしてしまった。 | |
| もう……心配性は相変わらずなんだから……。 | |
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| トキオたちを探し回って見たものの、そうそう簡単には見つからない。 | |
| 少し離れたところに見えるスザクロッド――あの周辺にいるのかと思い、向かったが…… | |
| アテが外れてしまった。 | |
| ……くぅ~ん。 | |
| ごめんな、クロ。夕食までには帰るから、もう少し付き合ってくれるか? | |
| さすがのクロも、疲れがたまっているようだ。 | |
| だがそれにしても、いったいトキオとスミオはどこに行ったのか……。 | |
| そればかりが気がかりだった。 | |
| だけど闇雲に探したところで見つからないだろうし……。 | |
| スザクロッドを狙う収穫者の手先が現れないとも限らない。 | |
| そうなればロッドを守るため、トキオたちは戦うだろう。 | |
| そこで傷つき、倒れてしまうことだって――。 | |
| しかし、トキオとスミオのふたりがいて、あんな連中に負けるとも思えない。 | |
| だが仮にそれが思いもよらない集団であったり、彼らを上回る強さであったら……。 | |
| いや―― | |
| うおおお、ダメだ! 悪い方向に考え出してどうするんだ、俺! | |
| とにかく、今はトキオたちを探すことを優先させなければ……。 | |
| クロ、お前の嗅覚で見つけることってできないか? | |
| ワンッ! | |
| おお! そうか、いけそうか! さすが! すごいな、クロ! | |
| じゃあ、頼んだ――それを言った瞬間、クロは脇目もふらず進んでいった。 | |
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| クロの後を追って走り、辿り着いたのはつい先ほどヤチヨと別れたところだった。 | |
| …………。 | |
| なあ、クロ……? | |
| ワン! ワンワン! ハッハッ……。 | |
| キワムの周りをぐるぐると回りながら、クロは再び尻尾を振る。 | |
| もしかして、腹が減ったから帰ってきた……? | |
| ワンッ! | |
| よくわかってるじゃないか――まるでそう言いたげなクロの瞳。 | |
| キワムは盛大に嘆息して、その場にへたり込んでしまった。 | |
| はぁ……そうか。腹減ったよな、そりゃ。 | |
| ハッハッ、ハフッ……ワンッ! | |
| おい、キワム。何してるんだ、こんなところで。 | |
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| 散歩にしたって、そんな汗だくになるもんじゃねえだろ……。 | |
| ……と、トキオさん。 | |
| その隣には、スミオの姿もあった。 | |
| ん? どうした? | |
| 探していたトキオは、思いがけないタイミングで現れた。 | |
| お前、どこに行ってたんだ。ヤチヨが心配していたようだぞ。 | |
| い、いや……俺のほうこそ、トキオさんがいなくなったって聞いて……。 | |
| 俺は食料の調達にでていただけだ。スミオを連れてな。 | |
| トキオは、当然だと言わんばかりの表情で、キワムを見据える。 | |
| お前がいきなり走っていったから、ヤチヨが心配していた。早く戻ってやれ。 | |
| ああ……うん……。 | |
| けど食料って、まだ備蓄があったはずだけど……。 | |
| ああ、たまにはな。 | |
| たまには……? | |
| キワムは未だ要領を得ず、首を傾げた。 | |
| だがそれを知ってか知らずか、トキオはキワムに背を向けて言う。 | |
| 先に戻ってる。お前も早く帰って来い。 | |