近くて遠い一歩の距離
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(どうしよう、色々準備してたらこんな時間になっちゃった……)
生徒会室の前。
アーシアは綺麗に包装されたチョコレートを手に、
その扉を開けるか開けまいか悩んでいた。
(もしかしたら帰っちゃってるかもしれないし……明日のほうがいいかなぁ。
でも明日になっちゃったらもっと渡しづらくなるし……
でもひとりで居るとは限らないし、誰か他の人がいたらどうしよう……
聞き耳立てるのもなんだか失礼だし……う~~ん……)
そんな風にいろんな可能性を考えてしまい、
アーシアは退くことも進むこともできなくなってしまう。
誰か自分の背中を押してくれればいいのに──と思いながら、
彼女が小さなため息をついたその時だった。
ガラリ、と目の前の扉が開く。
想像もしていなかった出来事に、アーシアはビクッと体を固くし、
小さく声を上げてしまう。
「あ……」
扉を開けたのは、アーシアと同じく驚いた顔で固まっているニコラだった。
その肩越しに、こちらを見ているイツキの姿がある。
「アーシア、どうしたんだ?」
彼は小さな箱を持っていて、
それにはアーシアのチョコレートと同じく、青いリボンが巻いてあった。
ニコラもそれに気づいたのか、
アーシアの持っている箱とイツキの持っている箱を交互に見比べて、
戸惑いの声を上げる。
「えっ、アーシア、それ……」
「あ、うん、えーと、チョコを……持ってきました……」
(バカバカバカバカ、なんで正直に言っちゃうのよわたし!
でも違うって言ったら渡せなくなるから結果的によかったのかな!?
でもニコラさんもイツキくんにチョコ渡してるみたいだし、
これわたしまさかお邪魔だったんじゃ
いやでも今ニコラさんが出て行こうとしてるしこれどういう状況)
完膚なきまでに混乱しながら、アーシアはすごい勢いで目を泳がせる。
傍目に見ても大慌てのその状況に、目の前のニコラも心配そうな表情に変わった。
「……アーシア、大丈夫?」
「だっだだだ大丈夫、うん。平気。わたし落ち着いてるから」
「そ、そう……?」
「大丈夫、うん、わたしはだいじょうぶ。
チョコ渡したら帰るから、い、イツキくん、これ!」
生徒会室の入り口から一歩も動かないまま、
アーシアはイツキの方向にチョコを突き出す。
「おっ、おう……」
アーシアのよくわからない勢いに圧倒され、
イツキはアーシアのチョコレートを受け取るために立ち上がると二人に歩み寄る。
首をかしげて苦笑しながら、イツキはアーシアから青いリボンの箱を受け取った。
「ありがとな、アーシア。大事に食べるよ」
そうイツキが言った、次の瞬間だった。
「どういたしまして!」
「ングォッ」
言葉と同時に勢い良く礼をしたアーシアの頭が、イツキの顎を直撃する!
「ひゃっ……!」
「だ、大丈夫アーシア!? イツキ!?」
倒れこむイツキ、
びっくりして飛び退くアーシア、
あまりの出来事に慌てるニコラ!
そして悪いことにそのタイミングでリンカが戻ってくる!
「……イツキ、なにしてるの?」
彼女の目には、
突き飛ばされたイツキと、
涙目のアーシア、
そしてそれを慰めるニコラという構図に映る!
あわや大惨事!!
「あわわわわわ……」
さらに廊下の角からシャーリーは見た!
なんだかすごい修羅場を!
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