温泉を賭けた戦い
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──翌日。旅館に泊まった君たちは、午前から夕方にかけてを、魔道の勉強に費やした。 | ||
や、やっと終わりました~……。 | ![]() | |
![]() | はぁ……こういうのは勘弁してほしいぜ。 | |
![]() | 会長、なんか上の空な感じだったけど、だいじょーぶ? けが、まだ痛い? | |
う、ううん……大丈夫よ。 | ![]() | |
![]() | やあやあ諸君! 勉強のはかどり具合はどうかね! | |
──戸を開けて部屋に入ってきたダンケルを、一同は、うろんな目つきでみやる。 | ||
学園長……あの『肝試し』、なんかサムライが出てきたんですけど……。 | ![]() | |
![]() | あれも修練の一環だ。だからツキカゲ君には模造刀を使ってもらったのだよ。 | |
そういうことじゃなくて! ふつー、もっとこう……違うでしょ!? | ![]() | |
![]() | そうそう、ノア君は大活躍だったね。ごほうびに、上位ランクの制服を授けよう! | |
わーい! ありがとうございます! | ![]() | |
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えええちょっと学園長甘くないですか!? | ![]() | |
![]() | 夏だからね。 | |
理由になってないっ!! | ![]() | |
![]() | それはさておき。実はこの旅館には、いい温泉が湧いていてね。 | |
![]() | 打ち身、きりきず、疲労回復に肌の保湿、ストレスの解消などにだいたい効く。 | |
効能がありすぎて、うさんくさいな……。 | ![]() | |
![]() | ははは、そう言わず、入ってみてくれたまえ。 | |
![]() | ──入れればの話だがな!! | |
は? | ![]() | |
![]() | ||
![]() | この旅館の温泉は、選ばれし者にのみ解放される秘伝の温泉……。 | |
![]() | あなたがたがそれにふさわしいか……このトモエが見極めさせていただきます! | |
旅館の女将さん!? | ![]() | |
![]() | まずは仲居たちがお相手いたします! さあ、私のもとまで辿り着けますか!? | |
──闇に呑まれ、姿を消す女将。代わりに、仲居たちが押し寄せてくる。 | ||
ちょ、あの女将さん何者なの!? | ![]() | |
![]() | ふ、さすがはブラッディ旅館の地獄女将──その腕はおとろえていないようだな……。 | |
が、学園長? 何旅館の何女将とおっしゃいました? | ![]() | |
![]() | そんなことを気にしている場合ではない! | |
![]() | 女将を倒せねば、学園の全員が温泉に入れぬと心得たまえ! | |
学園の全員が……ということは、学園長もなのでしょうか? | ![]() | |
![]() | あ | |
![]() | ……しょ、諸君! 勝て! 勝つのだ! ぜひとも勝ってくれたまえー!! | |
ノリでしか動いてねぇのかこのおっさん!? | ![]() | |
とにかく、みんなのためにやるしかないな。 | ![]() | |
ええ……そうね。行きましょう……。 | ![]() | |
──仲居たちを倒しつつ、君たちは女将を探して旅館を駆け巡る。 | ||
──ただ、昨日の戦いで足を痛めたニコラが辛そうだったため、休んでもらうことにした。 | ||
──イツキ、リンカをニコラの護衛につけて、君、ヴォルフ、シャーリーで探索を続ける。 | ||
![]() | ……あたし、転校初日に、生徒会のみなさんに助けてもらったんです。 | |
──道中、ノアがぽつりとつぶやいた。 | ||
え? そんなことあったっけ? | ![]() | |
![]() | はい。誰かが封魔の壺を割ってしまって、凶暴な魔物が現れて……。 | |
ああ……そういや、そんなこともあったな。 | ![]() | |
![]() | あのときあたし、魔物に負けちゃって……そしたら生徒会のみなさんが来てくれて……。 | |
![]() | みなさんの戦いを見て、すごい、って思ったんです。バッチリ戦ってるっていうか。 | |
んー。生徒の安全を守りつつ、互いをカバーし長所を生かして的確に動く、って意味で? | ![]() | |
![]() | そうです、そうそうそんな感じ! | |
![]() | でも、今はなんだかギクシャクしてて……なんでなんだろう、って……。 | |
俺のせいだ。 | ![]() | |
俺が動物を殴れなくてアテにならねぇから、みんなの動きが乱れちまってるんだ……。 | ![]() | |
イツキやリンカの雰囲気がいつもと違うのも俺が情けねぇところを見せちまったから……。 | ![]() | |
うーん……原因はそこじゃないと思うけどにゃあ……。 | ![]() | |
──そのとき、君たちは剣戟の響きを耳にした。 | ||
![]() | あっちで……戦ってる!? | |
イツキたちの方に女将が出やがったのか! ちくしょう、いま行くぜ! | ![]() | |
──その頃、イツキたちは女将と遭遇し、戦いを始めていた……。 | ||
『私のもとまで辿り着けますか』って言っておいて、なんで奇襲をかけてくるんだ!? | ![]() | |
![]() | 相手の言葉をうのみにするなんて若いですね。それに、仲間を守りながらで戦えますか!? | |
イツキ! かばわれなくても、私はちゃんと戦えるわ! | ![]() | |
リンカもニコラも、まだ痛みが引いてないんだろ! 強がるなよ! | ![]() | |
でも、これじゃイツキ君が。 | ![]() | |
![]() | ほほ──乱れた心で私を倒そうとは笑止千万! 受けなさい、仲居投げ! | |
──割り込んだヴォルフが、仲居を受け止め、防ぐ。 | ||
おらぁっ! | ![]() | |
ヴォルフ! 魔法使いたちも! | ![]() | |
すまねえ、イツキ、リンカ! 俺が情けねぇせいで迷惑かけちまって! | ![]() | |
は? | ![]() | |
──唖然となるイツキとリンカに構わず、ヴォルフは叫びを放つ。 | ||
俺は……生徒会に来て、初めて仲間ってもんを知った。おまえらにはよ……感謝してんだ! | ![]() | |
ノアが言ってた。俺らの戦い方はすげぇって。生徒会は、バッチリ戦ってたって! | ![]() | |
俺のせいでそれが崩れるなんざ我慢ならねぇ。俺は、おまえらとバッチリやっていきてぇ! | ![]() | |
俺のふがいねぇところはいくらでも謝る! だから──だからよ……!! | ![]() | |
──イツキとリンカは、ぽかんとした顔を見合わせ……。 | ||
──そして、苦笑を浮かべた。 | ||
……こっちこそ、わりぃ、ヴォルフ。 | ![]() | |
原因は、オレの心の弱さだ。でも……そんなこと、言ってる場合じゃなかったな。 | ||
私たちは生徒会……学園を守るために、力を合わせて戦わなければならない! | ![]() | |
そうだ……悩もうが、迷おうが──オレたちはそこだけは外れちゃいけなかったんだ! | ![]() | |
イツキ君、リンカ……! | ![]() | |
新入りだって見てるんだ。気合入れなきゃな! 行くぜ──みんな! | ![]() | |
──ニコラとシャーリーの射撃がトモエを襲い、回避行動を取らせて攻撃を封じる。 | ||
──そこへ、イツキとリンカが左右から突進。水の剣と炎の刀が、トモエをはさみ撃ちにする。 | ||
![]() | 仲居シールド、番頭ウォール! | |
──無数の仲居と番頭を展開し、両の剣撃を防ぐトモエだが、 | ||
かますぜ新入り! | ![]() | |
──ヴォルフとノアの力任せの攻撃が、仲居と番頭をはじき飛ばしていく。 | ||
──そして、防御手段を失ったトモエへと、君の狙いすました魔法が炸裂し…… | ||
![]() | くうっ……! | |
──防御姿勢のまま吹き飛ぶトモエ。壁を破壊し、露天風呂まで押し込まれていく。 | ||
![]() | やってくださるものですね! ならば、これで! | |
──トモエが腕を振るうと、温泉の湯が竜のごとき形となって、こちらに向かってくる。 | ||
押し返すぞ、みんな! | ![]() | |
ハイパー生徒会キャノンですね! | ![]() | |
そんな名前はつけてないけど、たぶんそんな感じだ! | ![]() | |
見せましょう……クロム・マグナ魔道学園生徒会の力を! | ![]() | |
──君たち全員の魔力が放出され……湯の竜を打ち砕き、トモエを直撃した。 | ||
![]() | ああっ……! | |
──くらりとよろめき、倒れ伏すトモエ。 | ||
![]() | や、やった……! | |
やりましたー! | ![]() | |
──みなの力で得た勝利に、生徒会の面々は純粋な喜びをあらわにする。 | ||
![]() | 悪かった、ヴォルフ。おかげでアタマ冷えたよ。 | |
![]() | 私からも、ごめんなさい。そして……ありがとう。 | |
へ? なんで俺が謝られてんだ? | ![]() | |
ま、なんにしても……よかったぜ。やっぱ、生徒会はこうでなきゃな! | ![]() | |
![]() | はいっ! ですよねー! | |
ありがとうよ、ノア。おまえのおかげだぜ。 | ![]() | |
![]() | いえいえ! えへへっ | |
──ヴォルフの大きな手で頭をなでられ、ノアは恥ずかしそうに笑っている。 | ||
──それを見つめるリンカの肩に、ニコラが、からかうように、あごを乗せた。 | ||
![]() | あれはねぇ……たぶん、小動物を愛でるようなノリだと思うんだよね~……。 | |
わ、わかってるわ。もうっ……。 | ![]() | |
──笑顔を交わす彼らの間に、気まずい空気はもはやない。君の頬にも笑みがこぼれる。 | ||
……それはいいけど。 | ![]() | |
──肩の上で、ウィズがぼそりとつぶやいた。 | ||
今の戦いで、温泉の湯が吹っ飛んじゃったにゃ……。 | ![]() | |
──生徒会の面々がそのことに気づいて絶叫するのは、もう少し後のことになる。 |
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