最速への道
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じゃあ、行くよ! ……どん! | ||
言うや否や、マッハはカプリコ城目指して駆けていく。 | ||
あ。ずるいにゃ! 私たちも追いかけるにゃ! | ||
大丈夫ですよ。まあ、ゆっくりお話でもしながら行きましょう。ちゃんと方法は考えてますから。 | ||
ルシエラがそう余裕たっぷりに言うので、君は少し拍子抜けする。 | ||
何を考えているのかわからないが、彼女はふわふわとお菓子の道をゆっくりと飛んでいった。 | ||
ルシエラの白い翼を見て、ふと君はミレイユのある変化を思い出す。 | ||
いつの間にか彼女にも翼が生えている。 | ||
え? あ、すみません! 翼が出ちゃってますね……。 | ||
君の視線に気づいて、ミレイユは慌てて翼をしまう。 | ||
君もルシエラと同じ天使なの? と君は訊ねる。 | ||
て、天使……? 違います。あたし……。 | ||
彼女は少しだけ言いよどむ素振りをした。 | ||
驚かないでくださいね。あたし、〈フェニックス〉と合成された人間なんです。 | ||
〈フェニックス〉……。たしか物語に出てくる炎の鳥。 | ||
絶えず燃え続けるその炎の様子から、不死の力を備えているともいわれる。 | ||
それと、合成された人間? 聞きなれない言葉だが、それが持つ意味は分かる。 | ||
ただし、突拍子もない、現実味のない考えだが……。 | ||
あたしのなかに〈フェニックス〉のウィータがいるんです。とても賢い子なんですけど……。 | ||
たまにあたしの感情に反応して、〈フェニックス〉の力を表に出しちゃうんです。 | ||
さっきはマッハのせいで驚いたから、翼が出ちゃったんだにゃ。 | ||
この翼で飛ぶことはできないですが、〈フェニックス〉の力で、炎を使うことはできます。 | ||
あと、傷を癒したりもできますけど、天使じゃありません。 | ||
それだけ出来れば、充分天使っぽいにゃ。 | ||
なるほど、ミレイユさんは鳥さんなんですね。 | ||
と、鳥? えーと……。 | ||
天使よりは……鳥さんに近いですよね? えーと……。ど、どちらかといえば、そうですね。 | ||
認めなくてもいいよ……。と君は誘導されるミレイユに助け舟を出してやる。 | ||
当の天使がこれにゃ。どちらかといえばミレイユのほうが天使に見えるにゃ。 | ||
ルシエラは飛ぶ以外に何か力があるのかにゃ? | ||
えー、ありますよー。私も癒しの力です。 | ||
そう言われて、君ははたと考え込む。そんな力を見た覚えがなかったからだ。 | ||
覚えがないにゃ。 | ||
気づきませんか? 心を癒す。癒しの力です。 | ||
……さ、行くにゃ。 | ||
い、いいんですか? | ||
いいんじゃないかな? と君はルシエラをおいてウィズの後を追った。 | ||
しかし──。 | ||
ルシエラは大丈夫だと言うが、カプリコ城に向かっていったマッハの姿ははるか彼方にある。 | ||
さすがに心配になってきたにゃ。 | ||
そうですね。ここからどうやって逆転すればいいのか……。ルシエラさん。 | ||
ミレイユが不安げな視線をよこすと、ルシエラは、 | ||
わかりました。ではそろそろお菓子を食べましょうか。 | ||
と言って、一同にチョコで出来た小石を配った。 | ||
お菓子……ですか。 | ||
そう。お菓子ですよ。どれも甘くておいしいですよ。 | ||
君は怪訝に思いながらも言われるままに渡されたお菓子を口に放り込む。しかしこれでは……。 | ||
問題の解決になってないにゃ。 | ||
ウィズの言う通りだった。これで何が解決するのか。 | ||
またルシエラにはぐらかされているのだろうか? | ||
でも……甘くておいしいです。 | ||
だがそんな不安も、お菓子を口に入れた途端に広がる甘い誘いに、かき消される。 | ||
すると……。 | ||
[吹きすさぶ風] << 目次 >> [戦いの行方] |
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