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アクアシアの大教室には既に数百人ほどの学生たちが集まっていた。 | ||
……結構な数の生徒たちがいるにゃ。 | ||
アクアシア2、3年組に加えて、まだ正式に所属してない1年も混ざってるからな。 | ||
イツキ君、これ……。 | ||
と、指揮官服を着たアーシアがイツキにも同じ指揮官服を手渡す。 | ||
ありがとう。 | ||
とりあえず、アクアシアのみんなを集めておいたけど……。後はお願い出来るかな? | ||
……わたしには、みんなを指揮するなんて、とても出来そうにないから……。 | ||
わかった。任せとけよ。 | ||
と、イツキはみんなの前に立つ。 | ||
みんな聞いてくれ。オレは可能な限り戦闘を避けようと思う。 | ||
これは実戦で、しかも相手は敵じゃなくて仲間だ。だからまずは話し合って……。 | ||
ふんっ。グリングラードのエリートがどんだけ優秀かと思ったら……がっかりだぜ。 | ||
と、最前列にいたユキヤが声を上げた。 | ||
……どういうことだよ? | ||
もっと現実を見ろよ! 卒業すればオレたちはみんなそれぞれ違う国へ戻る、敵同士なんだぞ! | ||
わかってるよ。でも……だからこそ、学園にいる間は仲間として……。 | ||
そいつが……仇だとしてもか? | ||
え? | ||
違う国から来てるってことは、親を殺した敵国のガキがいるかもしれないってことだろうが!? | ||
ユキヤの言葉にクラス仲が重たい空気に包まれる。 | ||
……オレの生まれた国は、毎年毎年名前が変わるんだ。 | ||
君にはユキヤの言ったその言葉の意味がわからない。 | ||
戦いに負けて、占領されて、その国がまた負けて……それの繰り返しなんだ……。 | ||
だからオレはこの学園に入ったんだ。強くなって、故郷を守るために……。 | ||
ユキヤ……。 | ||
悲しみと憎しみが込められた彼の言葉に、イツキは返す言葉を失う。 | ||
どうせ将来戦う相手なんだ。今の内にオレの怖さを叩き込んでやる。 | ||
お前らもこんな不抜けた指揮官に付いて行くつもりかよ!? | ||
と、ユキヤはクラスメイトたちに呼びかけ始める。 | ||
こっちが手を出さなくても他のクラスは攻めてくるぞ。戦う勇気のあるヤツはオレについて来い! | ||
そう言い放ち、ユキヤは数人の学生とともに教室から出て行く。 | ||
おい、ちょっと待てよお前ら! | ||
イツキ、どうするにゃ? | ||
止めに行くに決まってんだろ! | ||
アーシア、オレがいない間、アクアシアを頼む。 | ||
……わたしになんて無理だよ。 | ||
アーシアだってグリングラードなんだ。……自信持てよ。 | ||
イツキはアーシアの肩にポンッと手を乗せ、じっとその瞳を見つめる。 | ||
イツキ君……分かった。 | ||
そう言って、アーシアはコクリと頷いた。 | ||
イツキ君、私は他のクラスの様子見てくるね。 | ||
ひとりで大丈夫か? | ||
任せておいてよ。得意なんだよね、そういうの。私すばしっこいしさ。 | ||
そう言うが早いか、エマはひらりと身を翻し、窓から外へ飛び出した。 | ||
よし、魔法使い、オレたちも急ごう。 |
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