| アユ・タラのギルドマスター、ティアからの手紙が君の元へ届いたのは、今から数日前のことだった。 | |
| 手紙には、待ち合わせ場所の簡単な地図と、「問答無用で駆けつけろ」とだけ書かれていた。 | |
| いったいなんの用にゃ? 私たちだってそんなに暇じゃないにゃ! |  |
| ウィズの機嫌は悪い。 | |
| 報酬として、幻の魚料理と呼ばれる異国の味を堪能できる、そんな珍しい依頼を断ってやって来たのだ。 | |
| もうお腹ペコペコで歩けないにゃ! さあ、私を肩に乗せるにゃ! |  |
| 自分自身も歩き疲れていたのだが、君はしぶしぶウィズを抱き上げる。 | |
| お世話になったティアのお願いだし、断ることはできないよ。 | |
| そんな風になだめてみてもウィズの機嫌は直らなかった。 | |
| ご馳走を食べてからでも遅くなかったにゃ! それに君も君にゃ!私という師匠がありながら……。 |  |
| 仕方なく、君は不機嫌な師匠を肩に乗せたまま、手紙で指定された場所までやって来た。 | |

遅いぞ魔法使い! 何をのろのろしてたんだ!?
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| そこで待っていたもう一人の師匠、ティア・ソピアもまた、機嫌が悪そうだった。 | |

そろそろ、別の師匠を探す時がきているのかもしれない。
ふとそんな思いがよぎり、君は慌てて頭を振る。
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| なんでも、今日は魔道士ギルドの大きな式典があるって聞いたけど。 | |
| 君は気持ちを落ち着かせ、道すがら耳にしたことをティアに尋ねてみる。 | |
 | まあ、そんなところだ。 | |
| なんにゃ? 式典に用があるなら手紙にそう書いて欲しかったにゃ! |  |
| 式典に行ったことがあるの? 君はウィズに尋ねる。 | |
| キミ、誰に向かって聞いてるにゃ? 私は魔道士ギルドの四聖賢にゃ。 |  |
| ウィズの話によると、毎年この季節、新人魔道士を集めた式典が行われるらしい。 | |
 | まったく、ギルドというのはどこまでヒマなんだか……。 | |
| にゃはは! でも、ここに来てるってことはティアだって同じ位ヒマってことにゃ! |  |
 | 相変わらずうるさい猫だな、お前は。弟子なら弟子らしく、黙ってついてくればいいんだ! | |
| 私は弟子になった覚えはないにゃ! |  |
 | おっと、そろそろ時間だ! 急ぐぞ、お前たち! | |
| ウィズの言葉を無視して、ティアはどんどんと中へと入っていく。 | |
| 相変わらず人の話を聞かない師匠にゃ! 弟子からの指導が徹底していないからにゃ! |  |
| ウィズからの八つ当たりを受け流しつつ、君はティアの後に続いた。 | |
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| ティアの後に続いてやってきたのは、ウィズの話にあった通り、新人らしい魔道士が大勢いる大きな式場の中だった。 | |
| どうやら、今からギルドマスターの講演が始まるらしい。 | |
| ティアは何の為に呼ばれたにゃ? |  |
 | ……呼ばれなくて、来ちゃ悪いのか? | |
| 君はティアの声にいつにない怒気が含まれているのを感じ取った。 | |
| 新人魔道士に講演でもするにゃ? |  |
 | バカか、お前は。なんでボクが新人魔道士相手に講釈を垂れなければいけないんだ? | |
| ティアはいつにも増して辛辣な言葉をウィズに投げる。 | |
| バ、バカとは何にゃ。私はこれでも四聖賢のひとりにゃ! |  |
| 全身の毛を逆立てるウィズを、君は必死になだめるが──。 | |
 | ふっ。そんなに四聖賢が優秀なら、どうしてお前は猫なんぞになったんだ? | |
| どうやら今日のティアはとことん機嫌が悪いらしい。 | |
| そ、そこまで言うことないにゃ。私はただ、ティアは呼ばれてないのにどうして──。 |  |

呼ばれてないって言うなっ!
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| ウィズの言葉が気に触ったのか、ティアは顔を真っ赤にして怒り出す。 | |
| 何が彼をそうさせるのか……謎は深まるばかりだが、とにかく冷静になってもらわなければいけない。 | |
| 君は考えうる限り、最大級に低姿勢な態度で彼に事情を聞くことにする。 | |
(戦闘終了後)
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 | まあ、お前がそこまで言うのなら、話してやらないこともない。 | |
| 君の必死のヨイショが実を結び、冷静になったティアが口を開いた。 | |
 | 今日の式典では、魔道研究の発表も行われることになっていてな……。 | |
 | いつもはボクのところにも招待状が届くんだが、今年はなぜかそれがなかった。 | |
 | まったく、何をやっているんだ、ギルドの連中は……。 | |
| なるほど、招待状が届かなかったことにティアは腹を立てていたのか。 | |
| 今更ながら、君はティアの機嫌が悪かった原因を知る。 | |
| ティアの話では、魔導都市サイオーンを始め、各地の研究者による発表があるらしい。 | |
| それで、ティアはその発表を聞きにきたにゃ? |  |
 | まあな。もしかしたら、お前を元に戻す糸口になるかもしれないぞ。 | |
| ティア、だから私たちを……。 |  |
| そう言って、ウィズが目をうるませていると、式場の舞台に学者風の男たちが集まり始めた。 | |
 | ──お、そろそろみたいだな! | |
| どうやら、研究発表が始まるらしい。 | |
| 新人の魔道士たちも、前方へと集まっていき、またたく間に舞台の前に人垣ができてしまった。 | |
| うーん、全然前が見えないにゃ。 |  |
 | なにしろ、クエス=アリアス中の研究者が注目しているからな。 | |
| でも、これでは重大な発表があっても見逃してしまうかもしれない。 | |
| 君がそんなことを口にすると──。 | |
 | ふんっ。何のためにお前を呼んだと思っているんだ? | |
 | とっととボクを担ぐなり肩車するなりしろ! ボクが重要な発表を聞き逃したらどうする!? | |
| 師匠の口から飛び出した予想外の言葉に、君は目眩を覚える。 | |
| そんなことのために呼んだにゃ! |  |
| 言葉を失った君の代わりに、肩の上に陣取ったウィズが吠えた。 | |
| 全く師匠という人種は、どうしてこうも弟子の上に乗りたがるのだろう? | |
| 君はティアを担ぎ上げたまま、数時間にわたる研究発表を聞くことになった。 | |
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 | ふんっ。どうやら今年は大した発表はなかったみたいだな……。 | |
| 結局、長時間師匠を担ぎ続けた君の苦労が報われることはなかったが──。 | |
| にゃにゃ!? なんだか美味しそうな匂いがしてきたにゃ! |  |
 | ああ、発表会が終わった後は研究者同士の親睦会があるからな。クエス=アリアス中の料理が食べられるぞ。 | |
| そう言えば、すっかり忘れてたにゃ! |  |
| と、ウィズは目の前に並べられていく料理のひとつに目を留めた。 | |
| にゃ! あれは私が食べそびれた幻の魚料理にゃ!? 早速いただくにゃ! |  |
| どうやら、ウィズの苦労は報われたようだった。 | |