とこしえの転生
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![]() ──タネから生まれた少女は、ラルゴの背中ですやすやと眠っている。 ──ファムの膝を枕にして。 | ||
![]() | ファムがまさかお母さんになるなんてなぁ。 | |
ちょ、ちょっとその言い方、誤解を招くからやめてくれない? | ![]() | |
![]() | ボクは子供がいたとしても、ファムへの気持ちは変わらないよ。 | |
こらーっ! そういう言い方禁止! めっ! | ![]() | |
──君たちは、太陽の石を中心に、焚き火を囲むかのように談笑している。 | ||
──最初は夜に驚いた皆だったが、さすがに天上岬の住民だけはある。 | ||
──すぐにいつもの調子を取り戻し、今でははじめての夜を楽しんでいるかのようだった。 | ||
この子、"とこしえの樹"の赤ちゃんなの? | ![]() | |
![]() | そうみたい……この子から、この樹と同じ香りがするもの。 | |
──どこか甘く、それでいて爽やかで優しい、落ち着いた香り。 | ||
──ファムの言うとおり、エテルネからはそんな香りがしている。 | ||
……でも、大丈夫なのかな。 | ![]() | |
![]() | ん? どうしたアネーロ。何か心配事かな? | |
まあ、心配事といえば心配事なんだけど。少し前、泉で魔物に襲われたのよ。 | ![]() | |
確かそいつ、匂いを追ってきたって言ってて。 | ![]() | |
もしかして、その匂いってエテルネというか、"とこしえの樹"の匂いなんじゃないかな。 | ![]() | |
──君はアネーロの言葉にハッとする。香りに気を取られ、全く周囲の警戒をしていなかった。 | ||
──葉の端から下を見ると、"とこしえの樹"を魔物たちが登り始めている! | ||
![]() | アネーロの予想は当たってたみたいだね……。早く出発しないと、追いつかれそうだ。 | |
──君はブレドの言葉にうなずく。それと同時にギシリ、と樹がきしんだ。 | ||
うおっ!? な、なんだ、やばいぞ! | ![]() | |
![]() | ……あれっ? この子、すごい熱! | |
──エテルネの頭を撫でていたファムが、突然声を上げる。エテルネは荒い息をしていた。 | ||
──"とこしえの樹"に異常が出ているせいだろうと君は思う。 | ||
![]() | 急ぐぞ、もう本当に時間がない。 | |
![]() | 目指すぞ、頂上を! | |
──一行はついに"とこしえの樹"の頂上へと到達した。 | ||
──そこには、明らかに異質な何かが巻き付いている。 | ||
──禍々しいオーラを放つそれは、樹木の塊の様にも見える。 | ||
──先ほどまで漂っていた、"とこしえの樹"の香りは、いつの間にか消えていた。 | ||
![]() ファラフォリア……"常闇の樹"……! | ||
エテルネちゃん、起きたらだめ! | ![]() | |
──いつの間にかエテルネは目を覚まし、立ち上がっていた。 | ||
ファラフォリア……それがあの怪物の名前かにゃ? | ![]() | |
──ウィズの言葉に、エテルネは小さく頷く。 | ||
あの樹は光を嫌い、魔物を呼び寄せ、水の代わりに命を吸い上げます。 | ![]() | |
"とこしえの樹"……そして天上岬の天敵です。 | ![]() | |
──彼女はふらつく体をファムに支えられながら、視界の先でうごめく樹木の塊を睨みつけた。 | ||
──それは夜を背負うように翼を広げる。少し前、太陽を遮ったのはこれだろう。 | ||
──そしてついに、ファラフォリアは低く唸るような振動音を発し、巨大な体を起こした。 | ||
![]() エテルネ……"とこしえの樹"……。 | ||
しゃ、しゃべった……? | ![]() | |
気味が悪いです……! | ![]() | |
──見れば、ファラフォリアには腕らしきものも生えている。 | ||
──いびつな人型をし、禍々しい翼を広げるそれは、不思議なことに天使を連想させた。 | ||
![]() | さきほどまでは……閉じ込められていた……貴様の眷属(けんぞく)に……。 | |
──ギシギシと軋む指先をエテルネに向けながら、ファラフォリアは言う。 | ||
![]() | 貴様たちには……長く苦しめられてきた……この夜を、永遠のものに──! | |
──掴んだ杖を振りかざし、それは咆哮を上げた。闇色の魔力が集まり、形を成す! | ||
![]() | 枯れ果てよ、陽の光に祝福されし者共よ……。 | |
![]() | 我が夜に、沈め……! | |
──凶気を携え、夜が来る! | ||
(戦闘終了後) | ||
──息の合った君とファムの一撃が決まり、ファラフォリアはゆっくりと倒れる。 | ||
![]() 今なら……! | ||
──君やファムたちの間を縫うように、エテルネはファラフォリアに向かって駆け出した。 | ||
──だが。 | ||
![]() | 待って! | |
むぎゅ。 | ![]() | |
──突然目の前に現れたファムの胸に、エテルネは思い切り顔をうずめてしまう。 | ||
ぷはっ、えっ……お、お母さま? | ![]() | |
![]() | エテルネちゃん、何か……隠し事してない? | |
……! ど、どうしてそれを……。 | ![]() | |
──ファムは逃げようとしたエテルネの手を取ると、自分へと向き直らせた。 | ||
離してください、私は、もう──。 | ![]() | |
![]() | エテルネちゃん。 | |
![]() | ……私のこと、お母さまって呼ぶんだから。あなたは、私の娘よね? | |
──まるで母親が子供に尋ねるように、ファムはエテルネに優しく話しかける。 | ||
……はい。 | ![]() | |
私を、ここまで運んでくれました。私を育ててくれました。 | ![]() | |
あなたは……間違いなく、私のお母さまです。 | ![]() | |
──絞り出すように言うエテルネの言葉を、ファムはうんうん、と頷きながら聞いていた。 | ||
──震えるエテルネの手を、優しく、しっかりと握りしめながら。 | ||
![]() それなら、怖い時とか、不安な時は……真っ先に私に頼って? ほら、今みたいに、あなたの手を握ってあげることくらいは……出来るから。 | ||
──ファムは、エテルネの肩越しの景色を見て微笑む。 | ||
![]() ──ベアードはアネーロの手をしっかりと握っていた。今のファムとエテルネのように。 | ||
お母さま……! | ![]() | |
お母さま……私……! | ![]() | |
![]() | 大丈夫、大丈夫だからね。……ずっと、私がそばにいるから。 | |
──静かにファムの胸に顔を埋めるエテルネ。震える背中を、優しくファムは撫でた。 | ||
ファムは将来、いいお母さんになるにゃ。 | ![]() | |
──そうだね、と君もウィズに同調する。 | ||
──その時、夜が白み始め、落ちた陽が登り始めた。 ──夜を切り裂いて、朝日が空を満たしていく。 ![]() ──赤く燃える朝焼けが、君たちの肌に柔らかなぬくもりを運んできた。 | ||
![]() | 綺麗……。 | |
──君が、寄り添いながら太陽と花を眺める二人を見ていると……。 | ||
![]() ──エテルネの居た場所から、枝がするりと立ち上がり、花を咲かせた。 | ||
──"とこしえの樹"の花。それは、優しい香りをフワリと君の元へ運ぶ。 | ||
![]() | エテルネちゃん……!! | |
──花を見つめ、ファムは静かに涙を流す。 | ||
──そこにはもう、エテルネの姿は無い。 | ||
仕方ないのにゃ……これで……私達の役目も……。 | ![]() | |
──どこか甘く、それでいて爽やかで優しい、落ち着いた香りがする。 | ||
──その香りに、包まれていくにつれ……君の体は、ゆっくりと力を失っていった。 | ||
![]() | ……にゃ、起きるにゃ! | |
──ウィズに頬をぺしぺしと叩かれ、君は目をこすりながら立ち上がる。 | ||
![]() ──いつもの何の変哲も無い、ただの路地。 | ||
![]() | 街の香りは、なんだか味気ないにゃ。 | |
──ウィズの言葉に、君は先ほどまで自分の居た天上岬を思い出す。 | ||
──花や樹の香りに包まれていたあの場所は、素晴らしい香りが満ちていた。 | ||
──特に"とこしえの樹"の香りは、素晴らしかった。 | ||
──ふと、柔らかい風が、路地を吹き抜ける。一枚の花びらが、風に舞っていた。 | ||
──どこか甘く、それでいて爽やかで優しい、落ち着いた香り……。 | ||
![]() | そうそう、こんな匂いだったにゃ。 | |
──君たちは空を見上げる。どこまでも青い、天上岬の空に似た、晴れた空を。 |
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