卵になっちゃう
タグ一覧
>最終更新日時:
![]() | ||
![]() | いやです! 私は働きません! | |
もう、またそんなこと言って……ダメですよ、モミジ様。仕事は仕事です。 | ![]() | |
![]() | あの人がいなくなってからというもの……余計に働く気力を失いました。 | |
それはただちょっと遠くで働いているだけじゃないですか。しかも下界の時間で言うと1週間。 | ![]() | |
![]() | 1週間……その重みをあなたは知らないからそう言えるんです。 | |
モミジは布団に横になったまま、動かない。 | ||
それどころか苦しそうな表情を浮かべている。 | ||
![]() | もう今年は働きません。決めたんです。働かないと! | |
![]() | やれ祈祷だ、やれ祝詞だ、やれなんちゃらだって! 私は仕事したくないんです! | |
さすがのナゴミも絶句を禁じ得ない。 | ||
というよりもう手がつけられないかも、と思ったほどだ。 | ||
で、でもほら……あの、祈祷とか祝詞じゃない仕事ですよ、今回のは……。 | ![]() | |
すじこも1年分用意しましたし……。 | ![]() | |
![]() | 人前で解説だとか実況だとか無理です! 私、そもそもそういうの向いてないんで! | |
……はぁ。 | ![]() | |
いつものことといえば、いつものことだし、なんだかんだで毎度仕事は受けてくれる。 | ||
ナゴミはそう高をくくっていた。 | ||
いや、このぐうたら神様を”侮っていた”。 | ||
![]() | ……もうダメ。私はもうダメ。仕事もしたくない。外に出たくない。ほかの神に会いたくない。 | |
![]() | こんな自分を呪ってやりたい気持ちでいっぱいですけど、でもそれもしたくないんです。 | |
![]() | せめてあの人が帰ってきてくれれば……でもそれは無理かもしれない……。 | |
ああ……もう……。 | ![]() | |
後ろ向きな思考に突入したら最後。なかなか連れ戻すことはできない。 | ||
実況と解説の仕事を受けて、これからふたりえ頑張ろうというところだったのに……。 | ||
ナゴミはついため息をついてしまいます。 | ||
だいたいそうやってぐうたらしていたら、あの人とやらも戻ってきてくれませんよ……。 | ![]() | |
そして何となくつぶやいたナゴミの一言がきっかけとなり―― | ||
![]() | うぅうぅぅぅぅ……。 | |
モミジが発光し始めてしまった。 | ||
![]() えええっ!? | ||
そしてほどなくして―― | ||
![]() …………。 | ||
モミジは卵になってしまったのだった。 | ||
卵!? どどどどうして卵!? | ![]() | |
はっ!? 殻にこもる……いや、これは何の冗談ですか! | ![]() | |
![]() | …………。 | |
えっ、死ぬほど固い……。 | ![]() | |
コンコン、と叩いてみても反応がなく、ナゴミは自分の言ったことを後悔することになる。 | ||
余計な一言が、モミジを追い詰めてしまった。 | ||
いらない言葉でモミジを傷つけてしまった。 | ||
大会……そう、もうすぐ行われるミコト杯では、解説がいないことになってしまう。 | ||
どうすればいいのだろう……せめて卵のモミジだけでも連れて行こうか……いや……。 | ||
そんなことばかりが頭の中を駆け巡る。 | ||
ど、どうしましょう……というか、どうすればいいんでしょう……。 | ![]() | |
これ割っちゃったらまずいですよね……いや、でも……。 | ![]() | |
ナゴミ・オソドリの災難は、むしろここから始まるといっていい。 | ||
あの手この手を尽くした挙句、やはり諦めて卵の隣で実況をすることになるのだが―― | ||
この時のナゴミは知る由もなかった。 |
コメント(0)
コメント
削除すると元に戻すことは出来ません。
よろしいですか?
今後表示しない