剣呑な空気
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妙に緊張した雰囲気のまま、君たちは道中を進んでいた。 | ||
その原因はもちろん……道連れとなったふたりである。 | ||
ディートリヒ……。 | ||
……。 | ||
唐突に話を振られても、ディートリヒ・ベルクという男は眉ひとつ動かさない。 | ||
そんな男だった。彼は鋭い双眸を少し動かしただけで、その返事とした。 | ||
その眼。その眼だ。貴様、人に頭を下げたことはあるか? | ||
ある。 | ||
意外だった。まるで生まれてこのかた、人に頭を下げたことなどない。 | ||
彼のことをそんな風に思っていた。よく考えればそんな訳はないのだ。 | ||
だがもう下げることはあるまい。その男はもう、いないからな。 | ||
いない……。ただそう言っただけのはずだ。そのはずだが……。 | ||
……なんか物騒な話に聞こえるにゃ。 | ||
いい答えた。独善、冷徹、凶暴、あらゆる要素が備わっている。 | ||
ディートリヒ・ベルクよ。我と手を組め。そして世界の頂点を手に入れるのだ。 | ||
このふたりが組む……。それがどのような結果をもたらすのか、君にはまるで想像できなかった。 | ||
恐ろしい出来事のようにも、心が躍るような出来事のようにも思えた。 | ||
君は自分の胸に生まれた矛盾する想いに、打ち震えた。 | ||
それはまるで、自分のなかの見たくない部分を出してしまったかのような……そんな気分だ。 | ||
断る。世界など……貴君の力を借りずとも手に入れられる。 それは不可能だ。ふたりでしか手に入れられない世界というものもあるのだ。 ならば、この私の代わりとなる者を探したまえ。死にぞこないたちの帝王よ。 どこかに私以上の者がいるならな。 | ||
ちょっともう……ケンカはだめよぉ。 | ||
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