おかしなお菓子たち
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……て、起……てよ……! | ||
どこか遠くから声がする。聞き慣れたウィズのそれでは無いのは分かった。 | ||
ただ、なんとなく目をさますのが億劫で、君はそのまま闇の中に意識を落とす。 | ||
て、おき……ほら……起き……て……! | ||
……起……て、起きてよ、ほら! ええっと……魔法使いさん! | ||
![]() 激しい明かりに目を細めながら、君は聞こえてきた声を頼りに周囲の様子を伺った。 見渡す限りお菓子の世界。それも、どこか懐かしく、昔を思い出すような……。 甘く香ばしい匂いに胸をいっぱいにして、君は思わずため息をついた。 | ||
![]() | ||
![]() | 気づいたかい? ええと……まず自己紹介からかな? | |
![]() | 僕はこの世界の魔法使い、名前はグリ。よろしく。 | |
![]() | こっちは、双子の姉さんのリコ。 | |
![]() | よろしく! やっと目が覚めたみたいね、魔法使いさん! | |
![]() | それから……そちらの、小さなお連れさんもね? | |
苦笑するリコの指す先君の足元では、ちゃっかりとウィズがお菓子を手に座っている。 | ||
うーん……? これは……んにゃ? | ![]() | |
![]() | ん? どうかしたの、猫ちゃん? | |
にっこり笑ってウィズの顔を覗き込むリコ。 | ||
だが、リコを見上げるその表情は困惑の色に満ちていた。 | ||
……ここのお菓子はどうして全部ワリとパンチのきいた塩味なんだにゃ? | ![]() | |
ウィズの言葉を聞いて、君は驚く。思わず近くにあったチョコに手を伸ばすが……。 | ||
確かに、その味はチョコレートには不自然に塩辛い。 | ||
![]() | ……よくぞ聞いてくれたね、黒猫さん。僕らは、その異変を解決しようとしてるんだ。 | |
![]() | それで、君たちにちょっとチカラを借りたくて。……いいかな? | |
君はウィズと顔を見合わせる。どうやら今回の冒険は、甘くは済まなさそうだ。 | ||
そんなことを思いながら、君たちはリコとグリの背中を追った。 | ||
お菓子の森を歩きながら、君たちはグリとリコに事の顛末を聞いていた。 | ||
話によれば、この『お菓子の世界』の王様が『とても悲しい気持ち』になった事により……、 | ||
全てのお菓子が、『涙味』になってしまったそうだ。 | ||
![]() | ただね、そこまでは分かるんだけど。 | |
![]() | 王様が『とても悲しい気持ち』になった原因って、なんだろう? と思って。 | |
![]() | 今、事情を知ってる人に会いに行ってるんだ。確かこの先に居たと思うんだけど……。 | |
キャンディの茂みに分け入り、チョコレートの木を避けた先は、小さな広場があった。 | ||
その中央では、小さな生き物がフンフンと興奮気味に鼻を鳴らしている。 | ||
![]() フン、フンフンフン、フンフン! | ||
な、なんだか話を聞ける雰囲気じゃ無いにゃ……。 | ![]() | |
![]() | そうなの。実はちょっと前に話を聞こうとしたんだけど、手がつけられなくて……、 | |
![]() | それで、コロンに話を聞くの、誰か手伝ってくれないかなぁと思ってさ! | |
![]() | どうだろう。急な話だろうけど、僕らも他にアテが無いんだ。 | |
![]() | 頼まれてくれないかな。 | |
真っ直ぐなリコとグリの視線を受けて、君はウィズと一度顔を見合わせた。 | ||
見る限り、リコとグリはあまり荒事に向いていないように見える。 | ||
それに、相手は可愛らしい見かけとはいえ野生の生物。近寄るには危険が伴うだろう。 | ||
そこまで考えた時、君は自然と二人に対しうなずいていた。 | ||
![]() | ……ありがとう。それじゃあ、早速手を貸して。 | |
と、その時! グリと君の間に、素早く何かがひるがえった! | ||
![]() | フン! フンフンフン! | |
コロンは何か言いたげに身振りをしたあと、抱えたお菓子の大砲を君たちへ向ける。 | ||
な、なんて言ってるんだにゃ……!? | ![]() | |
……えっと、ちょっとまってね。 | ![]() | |
『コソコソ嗅ぎ回りやがって、オレの狙いは甘くないからな、覚悟しとけよ!』 | ![]() | |
――だってさ。アハハ……。 | ![]() | |
![]() | フン! フンフンフン! | |
どうやら、プンプンと可愛く怒るコロンは、君たちを許してくれそうになさそうだ! | ||
(戦闘終了後) | ||
![]() | ……ウゥ……。 | |
君たちは構えを解き、少し涙目のコロンの頭をそっと撫でた。 | ||
……『負けたわけじゃねーし、これはいわば休憩みたいなもんだし!』だって | ![]() | |
苦笑しながらリコは言い、それにつられてグリも微笑む。 | ||
これで仕事は終わりにゃ? | ![]() | |
満足げに頷くウィズに、グリはかぶりを振る。 | ||
![]() | ……実は、本当のお願いはここからなんだよ。 | |
少し真面目な表情で、グリは続ける。 | ||
![]() | さっき言ったろう? 王様が『とても悲しい気持ち』になった、って。 | |
![]() | 僕たちは『どうしてそうなったか』がすごく気になるんだよね。 | |
![]() | フン……、フン、フンフン。 | |
えーと、なになに……『あいつは昔からすぐにナーバスになる』……。 | ![]() | |
……『特に恋愛事となるとなおさらだ』……って、どういうこと? | ![]() | |
さあ……? | ![]() | |
それから、コロンは何も言わなくなってしまった。 | ||
……て、手がかりはもう無いのかにゃ? | ![]() | |
ざっ、ざんねんながら……。 | ![]() | |
明らかに肩を落とすリコと、苦笑しながら肩をすくめるグリ。 | ||
前途多難、という言葉がピッタリの状況、君は『涙味』の世界でひとつため息をついた。 | ||
目次 >> [コロンの弟分] |
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