占領された空の島
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卿。 | ||
声をかけられ、君は足を止める。 | ||
振り返った先には、ルヴァル・アウルムがいた。 | ||
卿が、我らファーブラに来てくれたこと、何より心強い。感謝する。 | ||
ルヴァルの言葉には、混じりけのない純粋さがあるように思えた。 | ||
君は、まだ何もしていないから……と伝える。 | ||
ディートリヒ・ベルクから話を聞いたときは、冗談も甚だしいと考えたが、なかなかどうして。 | ||
ルヴァルは君を見据えたまま視線を逸らさない。 | ||
卿の瞳の奥から、並々ならぬ魔力が見える。どこでこれほどの魔道を学んだのだ? | ||
そんなに褒められると、師匠である私も照れくさいにゃ。 | ||
君は曖昧な表情で、自分の国で、と告げる。 | ||
魔道、あるいは魔法が滅んで久しい世界だと認識していたが、卿の国には……ということか。 | ||
──否。そのようなことはあるまい。私は永くこの世界を見ていた。 | ||
鋭い……のではない。彼は知っているからこそ、そう言えるのだ。 | ||
彼らは、天の使いだと言っていた。 | ||
ならば人の世を知っていてもおかしくはないし、魔法が使える人間を訝しむのは当然のことだ。 | ||
アウルム卿。 | ||
どうした? | ||
答えに窮していると、偶然救いの手が差し伸べられた。 | ||
全軍出撃の準備が整いました。ドルキマス国軍も同様、既に出撃準備を整えています。 | ||
竜騎〈ウォラレアル〉は? | ||
彼の者の動きは掴めません。自陣に篭ったまま、出てくる気配がないようです。 | ||
あの者たちは、そもそも戦力として計算すること自体が間違っているが…… | ||
さあ、我々も行くとしよう。〈イグノビリウム〉という絶対悪を滅ぼさなければならない。 | ||
なんだかみんな落ち着いているように見えるにゃ。 | ||
確かに、これから戦争に行く、敵と戦う、そういう雰囲気には見えない。 | ||
どこか、ふらりと散歩でもするかのような落ち着きようで、君は逆に不安になってくる。 | ||
魔法使い殿。 | ||
プルミエに声をかけられ、ハッと我に返る。 | ||
どうしたんだ。行くぞ。 | ||
卿、恐怖があるのなら無理に来る必要はない。強要はしない。 | ||
どうする? 卿、私とともに来るか? | ||
君は少し悩んだあとで、行く、と答えた。 | ||
ここで退くこともできたかもしれないが、何故だかルヴァルのことが気になってしまった。 | ||
それはディートリヒ・ベルクから感じたものに近い、ある種のカリスマ性のようなものだった。 | ||
- и - ( まさかこのような大陸に、かくも美しい浮島があるとは。 ) - и - | ||
- и - ( なにも驚くことはない。人の世は、我々が考えるより遥かに"不可思議な"力に溢れている。 ) - и - | ||
- и - ( それは我々が預かり知らぬ神秘だ。──私が言うのもおかしな話ではあるがな。 ) - и - | ||
確かにこの大陸を見て思ったが、明らかに不思議な島がある。 | ||
それは君にはわからない世界なのかもしれない。 | ||
- и - ( しかし進むたび〈イグノビリウム〉の兵がいるのは、忌々しいことだ。 ) - и - | ||
……ちょっと進むだけで、あんなにいっぱい出てくるなんて、悪夢みたいなものにゃ。 | ||
- и - ( どうということはない。この程度、過去に幾度も幾度も見てきた。 ) - и - | ||
ルヴァルの言葉に、憎悪のような感情が宿っているのを、君は感じ取った。 | ||
- и - ( しかしアウルム教、だからこそあの方の力が必要だったのではないでしょうか。 ) - и - | ||
- и - ( …………。 ) - и - | ||
"あの方"というのが誰かはわからないが、ルヴァルが返答しないところを見るに、 | ||
あまりいい相手ではないのだろう。 | ||
- и - ( このまま進軍だ、魔法使い殿。 ) - и - | ||
プルミエが会話を区切るよう、君にそう声をかけた。 |
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