ファーブラ軍への合流

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卿、名をなんと言ったかな。

君はふとルヴァルに呼び止められ、足を止めた。
天の使い〈ファーブラ〉の指揮官──ルヴァル・アウルム。
ディートリヒ同様、欠点のない見目形をしているが、彼は優しげな空気を醸している。
君は、自分の名前、ウィズの名前を名乗った。
ははは──失礼。卿は愛猫に名前をつけているのか。この地の人間にしては、珍しい。
愛猫ではない、と君は否定する。ウィズは、自分の師匠だ、と以前のように口にした。
重ね重ね異なことを。卿、よもや私をからかっているのか?


……アウルム卿。

プルミエ。何かあったのか。
プルミエ、と呼ばれた女性がいつの間にか、ルヴァルの背後に控えていた。
ここの人たちは、音もなく現れるのが好きらしい、などと君は思う。
ディートリヒ・ベルクがアウルム卿にお会いしたい、と。
構わん。通しなさい。
……はい。
天の使い、というのも頷ける。
羽が生えているとか、そう教えられたからとか、そんなレベルの話ではない。
オーラのような、あるいは超常的な空気感のようなものを、彼らは持っている。


相も変わらず、貴君らは私を毛嫌いしているらしい。

ディートリヒ・ベルクが姿を見せると、戦艦の空気が一変する。
今にも切れてしまいそうな張り詰め方に、君は息苦しさを覚えた。
卿はそれを自覚してなお、態度を改めるつもりはないようだ。
そうするだけの理由がない。
して、用件は? アウルム卿は、お前と違って暇ではない。
血の気の多いのは結構だが、戦場で野垂れ死ぬ間抜けは見せてくれるな。
煽るようにディートリヒが言うと、プルミエが自らの剣に手を伸ばした。
用件だけを言いたまえ。卿がここにいると、皆平静を失う。
そんなまるで人を悪魔のように言わないでも、と君は思った。
悪魔であるなら、幾分もマシなのだがな。
まるで心を読んだかのように、ルヴァルがそう言った。
貴君らは3日後、シャルルリエ軍団、竜騎〈ウォラレアル〉に合流してもらう。
内容は言うまでもないだろうが、〈イグノビリウム〉が占領する拠点を落としてもらいたい。
……そういえばここの船、人が少なすぎるにゃ。
〈ウォラレアル〉も同様だが、ドルキマス国軍とは違い、戦力に限りがある。
〈イグノビリウム〉が現れて以降、それを危険視したルヴァルが止めるために来たのだという。
神や天使も暇な生活を送っているわけではない。
なにも彼ら人間を救うためだけに働いているわけでもない。
だからこの件に割ける人数も限られていた。
貴君らに心酔する者は、決して少なくない。それを使うといい。
人を使う、などと貴様、何を驕っている。
プルミエ、卿は下がっていなさい。どうにも卿は彼に噛みつくきらいがある。
その地には我々が戦うにあたり、取り逃してはならない資源がある。
ディートリヒが地図を広げて、拠点のある場所を指し示した。
なるほど。ここを落とせば、山を越えることができ、さらにはその先の造船国を利用できる、と。
然りだ。〈イグノビリウム〉によって囚われているものの、人間は生きていると聞く。
拠点を落としてしまえば、人を解放し、ドルキマスに取り込むことができる。
小国……ドルキマスだけでは限界であった戦艦の増強ができる……ということだろうか。
卿は、やはり生まれる世界を違えた男であるな。まるで悪魔のごとき思想だ。
対して貴君は言動も思考も凡庸たる、まるで人間だ。せいぜい人を使いたまえよ。
……船があり、人がいれば戦力差を乗り越え、"どうとでも"なると言いたいようだ。
唖然とする君に向けて、ルヴァルは言う。
シャルルリエ中将が最も好む戦法ではある。そしてそれはドルキマスに合致した戦い方でもある。
励みたまえよ。私を落胆させてくれるな、アウルム卿。
ディートリヒが背を向けたのを見て、君は胸を撫で下ろす。
プルミエ
はい。では魔法使い殿、此度の戦について、最も重要なことを1点、説明させてもらう。
どこかで待機していたらしいプルミエが再び現れ、開口一番、そんなことを言った。
単純な話をすると、拠点を落とすことにあるのだが、これは知っての通り容易ではない。
〈イグノビリウム〉には攻撃がきかない、というような話を聞いた覚えがある。
敵戦艦に対して、こちらの戦艦の攻撃が通らないのでは、まるで意味がないとさえ思えた。
それは人が百万いようが千万いようが変わらない、歴然とした"差"だ。
卿の言いたいことはわかるが、ひとつ確実な方法が人間にはある。
船同士をぶつけ、彼らの動きを止めた後、そこに乗り込み切り崩す。非常に単純な戦法だ。
にゃ!? ぶつけるのかにゃ!?
〈イグノビリウム〉の戦艦を損壊させるのは、我々だけであれば容易だ。
しかし我々は人数も少なく、あれらの物量を考慮すると、それは得策とはいえない。
そして幸か不幸か、彼らは生身の肉体であれば、人間同様、傷がつく。
……それはつまり。
そう、人であっても彼らを倒せるということ。
プルミエの言葉に、ルヴァルが頷く。
あまりにも危険な賭けに思えた。
なにせ、過去にもそれを知って突撃したであろう軍、いや国があったはずだからだ。
彼らの言が事実であるならば、それらは既に〈イグノビリウム〉に支配されている。
もはや人間には、それ以外の有効な手段がないということだ。
卿、恐れることなく戦うというのなら、我々と共に来てほしい。
だけど君も、ここにきて退くことはできなかった。
既に戦う意志は告げている。それならば、とにかくやらなければならない。


よい瞳をしている。私が知る、戦士の瞳だ。

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