魔王と天使
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![]() …………。 | ||
彼の名はアルドベリク・ゴドー。魔界の王の1人らしい。 | ||
彼はルシエラが異界を越えて、クエス=アリアスに行ってから、戻ってくるまでの間、 | ||
その歪みを拡げ、彼女を待ち続けていたらしい。 | ||
彫像のように、美しい顔が印象的だった。 | ||
それは表情が読み取れないという意味でも、同様だ。 | ||
けっこう長い間にゃ。だからルシエラはあんなに慌てていたんだにゃ。 | ![]() | |
うん、と君はウィズの言葉に同意した。 | ||
たぶん自分たちは、それをごまかすために、連れてこられたんだろう……。 | ||
それにしても……。 | ||
私たち、なんで魔界に来てるにゃ……。 | ![]() | |
あ、言ってなかったですか? 私、魔界から来たんですよ。見た目に騙されちゃいけませんね。 | ![]() | |
一言いってほしい。と君は率直に返答した。 | ||
![]() | ルシエラ。行き先を言わずに連れてきたのか? | |
言わなかったと言えば、そうですね。そうとも言えます。でも……。 | ![]() | |
最初から行き先がわかってたら、つまんないじゃないですか。 | ![]() | |
アルさんだって、私がいつ帰ってくるか分からないから、ワクワクしませんでしたか? | ![]() | |
![]() | そんなワクワクはいらん。それと……。俺の名はアルドベリクだ。 | |
そう言うと、アルドベリクは君の方を見た。 | ||
![]() | 迷惑をかけた。しばらく俺の城で、ゆっくりすると良い。 | |
![]() | ただ、ここは魔界だ。訳もなく、襲いかかってくる奴もいる。気をつけろ。 | |
安心して下さい。何かあったらアルさんがやっつけてくれますよ。 | ![]() | |
![]() | 勘違いするな。俺はそこまでお人好しではない。 | |
言葉とは裏腹に、なぜか彼の言葉は、人を安心させるような響きがあった。 | ||
道中に現れた魔族たちの大半は、アルドベリクのひと睨みで退散していった。 | ||
君は、恐怖で逃げることもできずに半狂乱で向かってくる者を退治するだけでよかった。 | ||
アルさんは相変わらずお人好しですね。 | ![]() | |
ルシエラがそういうのを聞いて、アルドベリクはそう言った。 | ||
![]() | ……アルドベリクだ。間違えるな。 | |
間違えていませんよ。アルドベリクだから、アルさん。それともアベさんが良いですか? | ![]() | |
アルさんとアベさんならどっちがいいですか? ルドさん、ベリクさんもありますよ。 | ![]() | |
![]() | ……アルドベリクだ。 | |
わがままですね! アルさんかアベさんのどっちかに決めてください! 贅沢は許しませんよ! | ![]() | |
![]() | アルさん。……いや、アルドベリクだ。 | |
んもう! わがまま大魔王! | ![]() | |
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このふたりは何をやっているにゃ? | ![]() | |
さすがに君も肩をすくめるしかなかった。 | ||
ふと禍々しい雲が覆う空に、人影が見える。その人影は、急速に拡大していた。 | ||
誰か来るにゃ。 | ![]() | |
やってきた人影は、君たちの前までやってくると、その場で羽ばたき、宙に浮かんでいた。 | ||
アルドベさん……。アルベさん……。やっぱりアルさんが一番しっくりきますね。 | ![]() | |
![]() | ……アルドベリクだ。 | |
彼女は、相変わらずルシエラと押し問答を続けていたアルドベリクに声をかけた。 | ||
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![]() | こんな所にいたのか、アルドベリク。 | |
……アルドベリクだ。 | ![]() | |
![]() | ……なんだ、急に。 | |
……すまん。間違えた。 | ![]() | |
うぷぷぷ……。 | ![]() | |
傍らで笑いを堪えるルシエラをけん制するように、アルドベリクは咳払いをする。 | ||
エストラ。俺の国に何の用だ。 | ![]() | |
![]() | 何の用だ、ではない。お前こそ、いままでどこにいた? | |
![]() | いや、そんなことはどうでもいい。至急、王侯会議を行うぞ。議題は……。 | |
そこまで言って、エストラは言葉を切った。 | ||
![]() | 言うまでもないな。 | |
確かに彼女の言う通りだった。 | ||
いつの間にか、神々しい光を帯びた白羽の兵士たちが、周りを取り囲んでいた。 | ||
![]() | 天界の奴らが攻めてきた。どうするかは、この場で即決しようか! | |
(戦闘終了後) | ||
他愛もない。 | ![]() | |
その言葉通り、彼にとっては、あの程度の敵を討つのは造作もないのだろう。 | ||
アルドベリクは、戦闘が終わってなお、涼しげな表情を崩さなかった。 | ||
![]() | こいつらは偵察の兵だろう。敵の本隊はおって到着するはずだ。ところで……。 | |
エストラは、訝しそうに、アルドベリクの側にいる白い翼を持った少女を見た。 | ||
![]() | なんだ、そいつは……。 | |
ルシエラと言います。よろしくお願いしまーす! | ![]() | |
睨みつけるエストラの視線を、まったく意に介さず、ルシエラはふわりと舞いながら、答えた。 | ||
さすがのエストラも気が抜けたのか、 | ||
![]() | まあ、いい。議場に向かうぞ。 | |
諦めたように、話題を元に戻した。 | ||
今回はどこで行う。順番で言えば、ジルヴァ家の国だが……少し遠いな。 | ![]() | |
![]() | 安心しろ、今回はここで行う。 | |
なぜだ? | ![]() | |
![]() | ここが、戦場だからだ。行くぞ、イザークが待っている。 | |
にゃ! | ![]() | |
初めて来た場所、初めて会う人、初めて聞く言葉の連続。 | ||
会話についていくのがやっとだった君にとって、その名は、特に懐かしく聞こえた。 | ||
それはかつて会ったことのある男の名だった。 | ||
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かつて天界の王の座を姉に譲り、魔界へと降りた男。 | ||
イザーク・セラフィムの名は、君にようやく、自分が今いる場所を教えてくれた……。 | ||
……ような気がした。 | ||
彼は、いまどうしているのだろうか。 |
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