行き倒れた男
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![]() 「調香師フロリア・リリー記」 著:ロニール・クム フロリア・リリーは、王都にある小さな商家で生まれた。 商家には、いくつもの業者が出入りしていて、その中に当時流行の香水職人もいたらしい。 おそらく、その頃にフロリアは、香水というものの存在を知り、 将来、香水職人を目指そうと思ったのではないだろうか? フロリアは、商家の手伝いをしながら、香水の勉強をし── 10歳の頃には、既に独自の香水を作り始めていたという。 彼女の作る甘く優しい香りは、人々の心に安心と鎮静をもたらし、 フロリアの香水は、瞬く間に街の評判になった。 この時フロリアが作った「母の香りがする香水」は、 現在でも診療所や学校など、子どもたちが集まる場所で重宝されている。 | ||
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![]() | あ、こっちのお花、とてもいい香りです。お、これの素材に使えそうです。 | |
香水職人として独立したフロリアは、香水の素材を集めるために、街の外に出かけていた。 | ||
![]() | ここは素敵なお花ばかりで、摘んで行くのがもったいないです。 | |
![]() | 思い切って遠出したかいがありました。あれ……? | |
人が、花畑に埋もれるように倒れている。 | ||
フロリアは、持っていた篭を落として、その人物に近づいた。 | ||
![]() | 男の人ですね。行き倒れかしら? あらあら、どうしましょう……? | |
フロリアは、人を呼んでくるべきか、それとも男に声をかけてみるべきか迷った。 | ||
![]() | あ……あの、どなたか知りませんが、こんなところでお休みになられては、身体に悪いですよ? | |
男は、弱々しく目を開いてフロリアを見つめる。 | ||
その男は、どこか他の人間とは違う雰囲気を持っていた。 | ||
意識を取り戻した男は、フロリアの顔を見るなり、こう呟いた。 | ||
「天にもっとも近い場所へ……。天上岬へ、俺を連れていって欲しい」 |
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