クロム・マグナ生徒
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「アキラくん!」
教室の隅で帰り支度をしていた赤毛の少年──アキラは、
1人の少女に声をかけられた。
くくった髪を活発に揺らす、ジャージ姿の女の子だ。
「どうしたよ、転校生」
「ノア、だってばっ!そろそろ覚えてよ~」
「悪ぃ、悪ぃ。で、オレに何か用?」
「うん! アキラくん、お兄さんが生徒会の副会長なんだって?」
「おう、まあな」
とたん、ノアの瞳がきらきらと輝いた。
「じゃあさ、じゃあさ、他の生徒会の人たちとも知り合いだったりする?」
「あったりまえよ! 会長のリンカさんとはたまに組手するし、
書記のシャーリーやヴォルフ先輩とはよくメシ食いに行くし、
会計のニコラさんにはよく勝手に屋台こしらえて怒られてるぜ!」
「すごーい!」
「すごいだろー!」
自慢げに胸を張って、アキラは、はたと気づいた。
「あれ? おまえ、生徒会に興味あんの?」
「うん!」
ぶんぶんと、勢いよくうなずくノア。
「先週さ、学園に魔物が出てきたじゃん?」
誰かがうっかり魔法の壺を割ってしまい、
封じられていた魔物が何体か、校内に出現したのだ。
すぐに教師たちが駆けつけて戦いを挑んだほか、アキラの兄──
イツキたち生徒会の面々も、生徒を逃がしながら魔物と戦っていた。
「そのとき、実はあたし、生徒会の人たちに助けてもらってさ!」
ノアは、あこがれの瞳で語る。
「あたし、近くにいたから戦おうとしたんだけど、手も足もでなかったの。
でも、生徒会の人たちは、みんなで協力して、すごく、こう……
バッチリ戦ってたの! だから、ホントすごいなー、って思ったの! それで……」
ぎゅっ、とノアは胸の前で固く拳を握った。
「あたし、すごくあこがれて……生徒会に入りたいって思ってさ!
だから、アキラくん! あたしを生徒会に紹介してくれない!?」
アキラは、ノアの瞳をじっと見つめた。
(──熱い)
直感する。
(こいつの瞳は、本物だ。夢に燃え立つ炎の瞳だ! 例えるなら、
鉄板で焼かれ香ばしく踊る焼きそば! いや、丸いからタコ焼きか……!)
「わかった!」
アキラは、ドンと自らの胸板を叩いた。
「おまえの熱意に負けたぜ! 兄ちゃんたちに紹介してやらァ!」
「わーい! ありがとー!」
「でもな、ノア。オレにできるのは紹介までだ。
おまえが生徒会に認められるには、アピールってもんがいる!」
「アピール! どうすればいいの?」
「おまえのやる気とガッツを、熱く示さなきゃなんねー。
そのために必要なのは……決めポーズだッ!!」
「決めポーズ!?」
「そう! 誰が見ても『こいつはやる気だ!』とわかるポーズ!
そいつを見せりゃ、兄ちゃんたちも一発で納得って寸法よ!」
「そうなんだ! じゃあ……こんなのどうかなっ?」
「お! いーんじゃねーか? けど、ちょっと足りねーな。
指は焼きそばを喰らう箸のように鋭く伸ばすんだ!
こんなふうに!」
「おお! じゃあ……こう!?」
「そう! そして、こう! さらにこうして、最後にはこうだぁーっ!」
教室の隅で延々と決めポーズを取る2人を、他の生徒たちは唖然と見つめていた。
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