れえすの名前は
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それから──。 | ||
君たちはしばらく街を歩いたあとで、れえすが開催される会場の前までやってきた。 | ||
あるばいと生活から脱け出せる……これであるばいと生活から……。 | ![]() | |
既に優勝したあとのことまで考えているミコト。 | ||
だが神様たちのれえすと言うからには、そう簡単に勝ち上がれるとは思えない。 | ||
![]() やや!? あなた方は!? | ||
と声を張り上げ近づいてきたのは、いつぞやの受付……ナゴミだった。 | ||
台車のようなものを押していて、その上には巨大な卵が乗っていた。 | ||
……猫といい、珍妙な獣といい、この異界は神様サイズのものが多すぎる。 | ||
![]() | いやー、お久しぶりですね。あのとうなめんと以来でしょうか? | |
あのときは悪かったな! 色々面倒かけちまって! | ![]() | |
![]() | ホントですよ、全く。前代未聞です。危うく私が処罰の対象になるところだったんですから。 | |
ところで、どうしてこんなところに? と君は問いかける。 | ||
![]() | なっ、まさか私の名実況をご存じないのですか? | |
知らないにゃ。 | ![]() | |
![]() | 今回のれえす──いや、"ミコト杯"を実況できるのは、私しかいないのです。 | |
![]() | 喧嘩神輿とうなめんとがあそこまで盛り上がったのは、私の力も少なからずあったわけですし。 | |
君はナゴミに、頑張ってね、と声をかけた。 | ||
……みことかっぷ? | ![]() | |
![]() | はい? | |
ええっ!? どうして私の名前がれえすの名前になってるの!? | ![]() | |
![]() | えっ……それはもちろん多額の寄付をされたからでは? | |
あっ、あの寄付はこれのことだったんだ……。 | ![]() | |
![]() | おや? 皆々様、ミコト杯の観戦にいらっしゃったのですよね? | |
![]() | 超多額の寄付をされたミコト様の名を冠したれえすですから、超高待遇の席を用意してますよ。 | |
わ、私たち……出場者として……。 | ![]() | |
![]() | はー、あれだけの寄付をしてなお、挑戦者としての心を忘れない。 | |
![]() | 感服致しました。まさに神様の鑑のようなお方ですね、ミコト様。 | |
![]() | 出場されるのでしたら、私は少しだけミコト様を贔屓させていただきますね。 | |
![]() | ではでは、私は明日の準備がありますので、これで。 | |
![]() ──っていつまで殻にこもってるんですか。仕事ですよ、仕事。おーい、モミジ様ー? | ||
ナゴミは卵に話しかけながら、台車を押してこの場を後にした。 | ||
![]() | く、ふふ、ははは! ミコト杯だってよ! なんだそれ! | |
![]() | や、やめろ、スオウ。笑うなんてこいつに悪いだろう。……ふふ。 | |
もう! | ![]() | |
あはは……でもすごいよ、ミコトちゃん。だって世界中の神様に名前を覚えてもらえるもん。 | ![]() | |
それって喜ぶべきなのかにゃ? | ![]() | |
君は曖昧に首を傾げる。 | ||
それにしてもミコト杯……主催にあたって必要なお金を出した当人が参加するなんて……。 | ||
![]() | くく、悪かったよ。ほら気分転換にあの前まで行ってみようぜ! | |
会場前──白と黒の猫が鎮座するところまで歩いてきた。 | ||
厳かな空気が漂っており、君は知らず肩を強張らせてしまう。 | ||
![]() | 緊張はいけませんよ~。 | |
と言ってツクヨが君の肩をほぐしてくれた。 | ||
![]() | まだ始まっていないんですから、はい、深呼吸してください。 | |
言われるがまま、君は深呼吸を繰り返す。 | ||
![]() | どうですか? | |
つい今しがたより、ずっと気分が落ち着いた。 | ||
君はツクヨに、ありがとう、と伝える。 | ||
![]() | いえいえ~。では──。 | |
いや、さすがに4度目は言わせないにゃ! | ![]() | |
ところで、どうしていきなり出場することができたの? ご利益ぽいんと? | ![]() | |
![]() | 馬鹿言うな。それが適用されると、俺とスオウはまず出られない。 | |
そうか。戦神として崇められていたのは、あのときまで……。 | ||
今はもうその立場にない、ということだ。 | ||
![]() | 枠が空いてたんだよ。どういうわけか。 | |
![]() | 俺たちは参加するつもりで話を聞いたんじゃないんだ。 | |
偶然、主催者たちの話を聞くことになり、枠が空いていることをふたりは知った。 | ||
最初は話半分で流していたものの、優勝すれば褒賞があることを知り、受けることにしたという。 | ||
![]() | 枠は空いてるっていうし、むしろそれ埋めなきゃ今年は中止だって言うもんだからよ。 | |
![]() | 神同士とはいえ、困り事を無視するわけにもいかないからな。 | |
生真面目というか、こういうところはやっぱり神様なんだな、と君は思う。 | ||
でも乗り物はどうするにゃ? | ![]() | |
![]() | それなら心配ない。しっかり用意してある。 | |
わたし、ああいうのはちょっと乗りたくないなぁ……。 | ![]() | |
ツクヨが指差したところから、たぬきらしきものが何かに乗って──。 | ||
こっちに向かってくるにゃ! | ![]() | |
まるで君たちを弾き飛ばさんとする勢いで、その何かが突進してきた。 | ||
うわわ……と、止めなきゃ!! | ![]() | |
(戦闘終了後) | ||
全く……なんだってんだよ。 | ![]() | |
む。これは酒か。 | ![]() | |
たぬきらしきものがもっていたのは、どうやらお酒らしい。 | ||
大会前に酔っ払って暴れてた輩だろうな。どうしてこう、神々は陽気なやつばっかなんだ。 | ![]() | |
お前がそれを言うな……。 | ![]() | |
あら、こんなところにいたんですの、ミコトさん。 | ||
![]() | ||
トミちゃん! それにマトイちゃんも! どうしてここに? | ![]() | |
![]() | うむ。ミコト杯があると聞きつけてな。もしかすると、お前がいるのではと思って来てみたのだ。 | |
確か彼女たちは、商いの神様と恋多き神様……だったような? | ||
![]() | 馬鹿者! 私は必中の神。決して恋多き神などではない! | |
![]() | それで来てみたら出場者として登録したというではありませんか。 | |
![]() | あなたはホント、お騒がせ神様ですわね。 | |
ええ……別に私が登録したわけじゃ……。 | ![]() | |
![]() | お前たちも、私があげた鉄砲を使いこなしているようじゃないか。さすがは戦神といったところか。 | |
ああ、これぐらい余裕だったぜ。 | ![]() | |
剣の時代は終わった──そう言われたときは、食うに食えないだろうと思ったが……。 | ![]() | |
![]() | 鉄砲──確かに物騒なものだが、お前たちが持つ分には大丈夫だろう。 | |
![]() | それよりミコトさん、あなたあるばいとはどうでしたの? | |
てんでダメだな。にへらっと笑ってるのが精一杯だ。もっと楽な仕事紹介してやってくれよ。 | ![]() | |
![]() | そう言われましても……あとはお弁当に梅干しをのせる仕事くらいしかありませんわ。 | |
![]() | まあ、いいさ。ミコトもやればできるっていうのは、既に証明されてるんだ。 | |
![]() | 気負わず頑張れ。私はミコトの一点狙いで賭けてるんだからな。なっ! | |
マトイが、力強くミコトの肩を叩く。 | ||
……一点狙い? | ![]() | |
神様たちがれえすの"賭け"をしてるんだよ、ミコトちゃん。 | ![]() | |
![]() | 私は必中の神。こういう賭け事で外したことはないんだ。 | |
![]() | それは自分のこと以外でしょう。ミコトさんはへっぽこなんですから、優勝は無理ですわ。 | |
トミがため息混じりに、さらりと酷いことを言った。 | ||
![]() | いや、私はお前が勝つと信じてる。頑張ってくれ! | |
それだけを言い残し、彼女たちは会場前から去っていった。 | ||
![]() | おい、セイ。優勝候補はどれだ? せっかくだから俺もちょっと賭けておくぜ。 | |
![]() | ふむ。確かにミコト同様、俺たちもひもじい思いをすることが多いからな。 | |
![]() | どれ、優勝候補はこれだろう。なんでもおーぷんかーという乗り物が速いらしい。 | |
![]() | こいつは? すげえ豪華な鳥に乗ってるぜ。 | |
![]() | 前回大会の準優勝者だな。こいつもアリだ。 | |
![]() | あとは……強いていえば、ツクヨ・オトエヒナ。これも来るかもしれない。 | |
![]() | 確かにな……絶大な信仰を集めている上、まだその秘めたる力を開放していないらしい。 | |
私は!? スウちゃん、セイちゃん、私には賭けてくれないの!? | ![]() | |
![]() | 馬鹿言うな! こっちは生活がかかってるんだぞ!! | |
そんなぁ……私、結構本気で優勝するつもりなのに……。 | ![]() | |
大丈夫。出るからには一緒に頑張ろっ、ミコトちゃん! | ![]() | |
キミも頑張るにゃ! | ![]() | |
君は仕方なく頷く。 | ||
やる気がないわけではないが、物騒なことに巻き込まれそうな……。 | ||
そんな予感がしていた。 | ||
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