お金持ちになるまで
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私、カフク・アバラヤと申します。 | ||
貧乏神……人々に疎まれる神の一柱です。 | ||
![]() | ああ……コノハさん……いったいどこに……。 | |
話すと長くなるのですが、貧乏神は下界の人々の家に取り憑くことが多いのです。 | ||
私もそうです。 | ||
かつて憑いた――母娘の家でも、一苦労あったのですが、 | ||
しかしそれは、ジョゼフィーヌ様によって救われることとなりました。 | ||
それはいいのです。今は問題にもなりません。 | ||
今、最も重要なのは新しく憑いた――いえ、お世話になっている家屋。 | ||
![]() | コノハさんが忽然と姿を消してしまった……やはりこれも私のせい……。 | |
![]() | 貧乏神の自分が憎い……生まれ変わったら、私はお金持ちの神様になりたい……。 | |
そもそも生まれ変わる、ということが神様にあるかどうかは別として、です。 | ||
いえ……貧乏神ではありますが、一時、ものすごくお金持ちになった時期があるのです。 | ||
だけれど、それは短い夢。泡沫と消え去りました。 | ||
![]() | ……はぁ。 | |
いきなりのお賽銭の数々に驚き、どう使えばいいかわからず混乱したのですが、 | ||
あるとき神様たちが寄付を募っているとの話を聞きつけたのです。 | ||
![]() | あそこで全額寄付したばっかりにまた貧乏生活……。 | |
ちょうどその頃、そこで取り憑いた家――それがコノハ・ヨリヒメさんの家だったのです。 | ||
コノハさんは、とても穏やかで――いえ、どこか引っ込み思案な方でした。 | ||
![]() | だけれど時折見せる笑顔は、とても素敵なのです。 | |
いえ、それどころか私に取り憑かれ、貧乏生活が始まっても、彼女は顔色一つ変えず、 | ||
ひたむきに、日々を過ごしていったのです。 | ||
コノハさんについて最も驚いたことがひとつあります。 | ||
それはコノハさんが、私の姿を認識できたということ。 | ||
神様と人……身近でありながら最もわかりあえない、近くて遠い存在。 | ||
だと思っていたのですが……。 | ||
いつしか私と、彼女は最も近くで話し合う関係になったのです。 | ||
![]() | あの頃は楽しかった……。 | |
ですがある日――ミコト杯なるものが開催されることになり、 | ||
私は参加者として呼ばれることとなったのです。 | ||
短くも長い別れ……神様たちが決定したことですし、 | ||
優勝することで、世のため人のためになると言われ、私は参加を決意しました。 | ||
![]() | ……コノハさんを探さなければ。 | |
あの日、参加を決意し返答したまではよかったのです。 | ||
しかし……その話をコノハさんにしようとしたときのことでした。 | ||
コノハさんが忽然と姿を消してしまったのです。 | ||
![]() | ……いえ、神様たちが間違えて私ではなく、コノハさんを呼んでしまったのでしょう……。 | |
知っています。私は影が薄い残念な神様であることぐらい……。 | ||
![]() 私……カフクさんのおかげで、頑張ることも前向きに生きることも知れたの……。 | ||
そう言っていたコノハさんの言葉を思い出しました。 | ||
だから私は、コノハさんを元の下界に連れ戻さなければ……そう思ったのです。 | ||
![]() | ……しかし、いくら影が薄いとはいえ、私と間違えるのはどうかしています……。 | |
![]() | 本来なら、もっとしっかり調べてから……。 | |
辿り着いた会場では、既に大会が終了しているようでした。 | ||
私は慌てて、コノハさんを探します。 | ||
私の認識が甘かったのもあります。神様たちは道楽に関して、とてもずさんなのです。 | ||
![]() | コノハさん……コノハさんはどこにいるのでしょう……。 | |
見渡してみても神、神、神…… | ||
![]() | コノハさん……ああ、ダメ。ここにはいないのかも……。 | |
……カフクさん? | ||
![]() カフクさん……! | ||
![]() | ああ……コノハさん……ようやく見つけました……。 | |
![]() | よかった……怪我はありませんか? 体調は問題ありませんか? | |
![]() | ああ、私が側にいてはまた不幸になるかもしれません……。 | |
ううん、私、カフクさんがどういうところで、どういうことをしているのか……。 | ![]() | |
それを知ることができて、本当によかった……。 | ![]() | |
私、カフクさんに取り憑かれてなかったら、こんな経験できなかったから……。 | ![]() | |
![]() | よかった……本当によかったです、コノハさん……。 | |
神様たちの過ちで呼びだされてしまったコノハさんをギュッと抱きしめます。 | ||
これも私が取り憑いたことによる不幸かもしれませんが……。 | ||
ううん、私、とても幸せ。カフクさんがいてくれたから前向きになれたの……。 | ![]() | |
優勝して、今度はカフクさんに恩返しするつもりだったけれど……それはダメだった……。 | ![]() | |
![]() | けど本当によかった……あなたに何かあったら、私はもう……。 | |
コノハさんが見つかってくれた喜びで、私は泣き出してしまいそうでした。 | ||
私自身にお金はありません。それに疎まれる存在です。 | ||
しかしこうして人との繋がりを持てたことを、神様として少し誇らしく思えました。 | ||
本当は、こういうことは許されないのかもしれませんが……。 | ||
今は少しだけ、人との日々を送ってみようと……そう思ったのです。 |
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