艶めいた流し目
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「……それで君はアレか、
『管理者』に連絡を取ってその窓口の男性に一目惚れみたいな
そういうアレをぶちかました挙句フラレて
ギブミーチョコレー党の外部顧問として勝手に活動してたワケか」
「そのうるさい口を閉じないとしまいにゃ縫い付けるよ……?」
ダンケルに向けてカミソリのように鋭い視線を投げながらサロメは言う。
今回の失恋は、サロメの心にわりと大きなダメージを残した。
色々と連絡をマメに取り、彼の好みをそれとなく聞き出し、
何度か食事にも行ったものの、結果的には何ひとつ実ることは無かった。
相手はそれを『仕事』だと思っており、かつ
自分に対して何の恋愛感情も持っていなかったことに気づけなかったのは、
つまるところ恋は盲目であるということなのだろう。
「色々あんのよ私にだって……」
だが、対するダンケルは呆れ果てた様子で大きな大きなため息をついた。
「サロメ君。私がどんな思いで『管理者』に連絡をとって欲しいと言ったか
わからんキミでもないだろう……?」
「い、いや、わかっちゃいるけどさ……でも──」
「まあ、簡単に感想を語らせてもらうと、
その男性に対してサロメ君の恋心がいかにして発生したかというキッカケと
現在に至るまでのその過程、そして生まれ出た結果とそれに対するキミの所感、
またそれらを受けてキミが今後どういう姿勢を以ってキミの人生に
これから幾度と無く訪れるであろう色恋沙汰に対して臨むか等に関しては
自分でも驚くレベルでまったくもって興味が無い上に
これほどどーでもいい話もなかなか無いわという感じだな」
と、とんでもない長台詞を一切噛まずにツラツラと言いながら、
ダンケルはその最後の仕上げと言わんばかりに、
耳の穴に小指を突っ込んで口の端を持ち上げながら鼻で笑う。
「ぐっ……!」
サロメはその完膚なきまでに自分を小馬鹿にした回答に、
それ以上何も言えずに顔を赤くし拳を握りしめながら歯噛みした。
しかし、その様子をダンケルは気にする様子は無い。
「それで『管理者』からはなんと?」
「『こちらのエージェントからの接触を待て』としか返ってきちゃいないよ……」
「なるほどな……さて、どうしたものか」
「なるようにしかならないよ。相手がそう言ってんならそうなんだろうさ」
「まーるーでー恋と同じだな!? んーサロメくぅん!?」
ダンケルは言いながらサロメの顔を下から覗き込むようにおちょくる。
──すると、次の瞬間。
「んごッ!?」
音速並みの速度でサロメの手がダンケルの顎を掴み、
そのままゆっくりと頭の上までそれを持ち上げると、
煮えたぎるような怒りを瞳に込めて彼を睨んだ。
「一回シメても構いませんかね学園長……?」
「絞まってる絞まってる……既に絞まってるよサロメ君……!
悪かった楽しくてつい……」
「ったく」
投げ捨てるようにダンケルを床に下ろすと、
サロメはイライラを隠さずに舌打ちをする。
「いたたた……まったく、キミは本当に短気だな」
顎をさすりながらダンケルは立ち上がり、
フム、と腕を組み鼻から息を吐いた。
「……まあ、キミの恋愛事情に関しては一切興味は無いがね」
「まだ言うかい」
「最後まで聞きたまえ。キミは集中すると前しか見えないのが玉にキズだ、
それと自分を安売りしないほうが良い」
突然始まった真面目な話に、サロメは一瞬驚いて言葉を止める。
「安価なものはそれだけで捨てやすい。
恋愛もそれと一緒だ、高価なものは大事にされる。
人生のアドバイスだよ、サロメ君」
そう言うと、ダンケルは顔を近づけニヤリと笑った。
と、その時。
ガチャガチャと扉のカギをいじる音がし、
直後見慣れた少女が部屋に入ってくる。
「おや、シャーリー君ではないか」
「なっ、なんであんたココに……!?」
「あわわわわわ……!?」
シャーリーは二人の姿を見て、顔を真っ赤にして慌てだした。
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