竜の遺跡を奪取せよ

 
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遅い! 貴様は時間を守るということができないのか!
……む。ローヴィ。何故、貴様がここにいる。
元帥閣下のご命令です。
いったい何の理由で?
ふん、そんなものどうだっていい。ベルク元帥が仰ったのなら、拒否する道理はない。
ローヴィ。邪魔だけはしてくれるなよ。仮にも、こいつはドルキマスの戦力だ。
わかっております、シャルルリエ中将。
……クラリアローヴィは、やけに険悪にゃ。
君も同じことを考えていたが、理由は聞くに聞けない。
階級でいえば、中将のほうが圧倒的に上なんだが。
ヴィラムが囁く。
中将がドルキマス軍に所属したときから、どういうわけか彼女を毛嫌いしていてな。
あえて理由は聞いていないが、まあ、魔法使い殿が気にするようなことじゃないさ。
そう言われてしまっては、やはり口を挟むことはできない。
とうのクラリアは、既にローヴィに目を向けていなかった。
自軍の兵に向け、彼女は声を発する。
貴様らの力によって、先の戦いでは、見事に勝ちを収めることができた。
だが魔道艇に遅れをとったこと、忘れてはいないだろうな。
たった"1つ"に、貴様らは劣っていると、あの戦いで証明されてしまった。
兵を鼓舞するのは、上官の役目だと言わんばかりに、クラリアは声を張り上げる。
彼らは、君をちらりと見やったあとで、鬨の声を上げる。
巨大な戦艦が揺れんばかりの声だ。
ドルキマス国には、我が軍のほかにも〈イグノビリウム〉殲滅に向け、動き出した軍がある。
シャルルリエ軍団を出し抜こうと考える輩も、決して少なくはない。
しかし我々には、魔道艇を含め、過去の戦争で無敗を誇る力がある。
〈イグノビリウム〉の連中を討った先の戦いを思い出せ。
我らの力が、奴らに劣っていないと──いや、奴らよりも勝っていると、貴様らは知った。


いくぞ! 次の戦いで我らシャルルリエ軍団の脅威を、奴らの体に刻み込んでやるんだ!

お腹の奥底に響き渡る"少女の声"は、それだけで君にも熱を与えた。
こんな声だけで、勝てそうな気がしてくるのが不思議にゃ……。
ウィズも例外ではないようだ。
貴官の船に同乗します。よろしいですね?
ローヴィの声に頷き、君は魔道艇へと向かった。


ひとり増えただけで、こんなに緊張感が漂うようになるのかにゃ……。
ウィズが指しているのは、ローヴィのことだ。
〈イグノビリウム〉という敵との争いなのだから、緊張感はあってしかるべきだが、
無言を貫き、君の背後に立つ彼女の威圧感たるや……。
何か?
君の視線に気づいたローヴィが、特別気にした素振りもなく問いかけてくる。
君は誤魔化すように〈イグノビリウム〉とは何なのか、というような質問を投げかけた。
以前も話したように、我々は〈イグノビリウム〉という存在について、確かな情報を持ちません。
しかし、恐らく貴官も見たでしょうが、アレらはまるで灰や塵のように消えていく。
人間の形を模してはいますが、我々とは作りが根本から違うようです。
アレはもしかしたら意志のない人形とか、そういうものかもしれないにゃ。
魔法みたいなものを使ってるように見えたけど、誰かが作ったモノのような気がするにゃ。
ウィズの言葉とローヴィの言葉……君はまだ理解しきれていない。
無限ともいえるほどに、どこからか湧き出てくる敵を倒すのに精一杯だったからだ。
かつて大陸に降り立った彼らは、〈イグノビリウム〉……名を持たぬ者と、呼ばれていました。
そして名を持たぬ者は、瞬く間に勢力──いや、暴力によって大陸に君臨することになりました。
……ドルキマスより遥かに力のあった国々も、戦い、そして散っていった……。
力があったのに、そんな簡単に負けてしまったのか、あるいは逃げ惑ったのか……
君にとって、それは定かではなかった。
敵兵を倒すことはできましたが、あの圧倒的な物量を前になす術なく敗走した、ということです。
それはもはや戦争と呼べるものではなく、蹂躙。言葉を必要としない暴力でした。
……聞くだけで目眩がする話にゃ。
- и - ( 聞こえているぞ、ローヴィ。 ) - и -
- и - ( 奴ら──大国の連中は、間抜けが過ぎたという話じゃあないか。 ) - и -
- и - ( どれほどの武力を持とうと、しょせんは貴族だ。礼節を重んじる? ふん、笑わせるな。 ) - и -
- и - ( 運動競技と勘違いしていたんじゃないか? 馬鹿者どもめ。礼に始まり礼に終わる戦があるか。 ) - и -
クラリアは、通信機越しに忌々しげに吐き捨てる。
- и - ( まあまあ、お三方。そこらへんにしときましょうや。呑気に駄弁る暇なんてありませんぜ。 ) - и -
オルゲン大尉。貴官の声も、何やら楽しげに聞こえますが。
- и - ( 争いなんてのは、なんていうか、気持ちを昂ぶらせなきゃやってられねぇ。 ) - и -
- и - ( 長く戦争を見てるが、未だに手が震える。楽しげだなんて馬鹿言わないでください。 ) - и -
- и - ( 俺は緊張で死にそうだ。要するにそういうことです。 ) - и -
気持ちを強く持つために、無理やり自分を騙している、というような……。


戦争狂といったいなにが違うと言うのです。

通信機を終えたローヴィが、つまらなそうにぼやいた。
君は、その言葉を聞かなかったことにする。
さあ、進みましょう。貴官の力、私にも見せてください。
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