残していく想い
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| 幼いフェルチの手を握り、生まれたばかりのファムを抱いたまま、 | ||
 | あなた、ようやく到着したわ。天上岬に……。 | |
| フロリアの目の前に広がるのは、地上でもっとも天に近い場所。 | ||
| 降り注ぐ日差し。 | ||
| 頭上いっぱいに青い空が広がっている。 | ||
| 噂どおり、ここは地上であって、地上ではない場所だとフロリアは感じた。 | ||
| まさに名前の通り、ここは天上──。 | ||
| でも、貴方の予想とは違ったかも……。ここはとても綺麗な場所だけど── | |
| と、フロリアは胸のペンダントに話しかける。 | ||
| 貴方がいた故郷と繋がっているような……そんな特別な場所ではないみたい……。 | |
| そのペンダントは、男が残した形見だった。 | ||
| フロリアの思い人は、とうとう天上岬に辿り着くことなく……。 | ||
| 最愛の人に見守られながら、永遠の眠りに就いた。 | ||
| 貴方は色々話してくれたけど、私はすぐに理解できなかった……。 | |
| でも、あなたという父親がいたことは、ちゃんと伝えます。 | |
| それが、残されたフロリアができる唯一のこと。 | ||
| まだ幼いフェルチと、生まれたばかりのファムを育て上げて── | ||
| 父親は、どんな人だったのかを語って聞かせるのが、母としてのフロリアの役目。 | ||
| ここは、凄く綺麗な場所です……それに珍しい花が沢山咲いてます。いい香水が、作れそうです。 | |
| しばらく、この土地で暮らすのもいいかもしれない。 | ||
| そうフロリアが、考えた直後──。 | ||
| ……ごほっ。ごほっ！ | |
| 激しく咳き込んだフロリア。その瞬間、身体の芯が氷のように冷たくなるのを感じた。 | ||
| まさか……。これからだというのに……。 | ||
| 母の異変を感じ取ったファムが、フロリアの腕の中で泣き始める。 | ||
| あ、ご、ごめんなさいね……。ほーら、泣かないの。いい子、いい子です。 | |
| 男を助けるためのフロリアの涙ぐましい献身は── | ||
| 気づかないうちにフロリアの生命をも削り取っていた。 | ||
 お願いです。神様。この子たちが、成長するまで……。 せめて、私の言葉が理解できる時まででいいです。 私を、この子たちから引き離さないでください。あと少しだけ時間をください。 | ||
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