再会ともふもふ
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| 次の瞬間、君たちの周囲は真っ白な光に包まれた。 | ||
| にゃにゃ? いったい、なにが始まったにゃ? | ![]() | |
| さぁと首をかしげながら、君は摘んだばかりの白い植物をカバンに詰め込む。 | ||
| 光に包まれた状態は、しばらく続いた。 | ||
![]() あらあら~。ここはどこなのでしょう? 困りましたわ。 | ||
| 君たちの目の前に見知らぬ女性が現れた。 | ||
| まさか、どうしてこんなところに人が? | ||
| というか、このタイミングで人と遭遇するなんて……。 | ||
| キミ、どうしたにゃ? | ![]() | |
| 君は、女性のいる方向を指差すが、ウィズは怪訝そうに首をかしげるだけだった。 | ||
| なんと、ウィズには、あの女性が見えていないようだ。 | ||
![]() | 道に迷っちゃいましたか。遅くなる前に帰るつもりでしたが……。 | |
| キミ、そろそろ視界が戻りそうにゃ。 | ![]() | |
| 光が霞むと同時に、どこからともなく漂ってくる、優しく深い香り。 | ||
| この香りに、君は覚えがあった。 | ||
| まさか行き先は……天上岬? | ||
![]() 柔らかい日差し。咲き誇る花々。 風に乗って香る若葉が、景色一面を生命に満ちた色に染めている。 | ||
| ここはどこにゃ? てっきり、天上岬に飛ばされるものだと思っていたにゃ……。 | ![]() | |
![]() もーふもふもふもふっ! | ||
| 目を覚ました君とウィズの視界に飛び込んできたのは──。 | ||
![]() | もふもふもふ……。 | |
| にゃにゃにゃ!? この毛むくじゃらな生き物はなんにゃ? | ![]() | |
| ウィズよりも小さな身体の動物? が、地面の上をぴょこぴょこ飛び回っている。 | ||
| 珍しい生き物だが、害のある動物ではないように君には見えた。 | ||
| 危険な魔物……ではないのかにゃ? | ![]() | |
| 君は、ひくひくと鼻を鳴らしている動物に手を近づけてみる。 | ||
| キ、キミ! そう不用意に手を出しちゃ危険にゃ! 毒を持っているかもにゃ! | ![]() | |
誰ですか? あたしのフモーフちゃんたちを「魔物」扱いするのは? | ||
![]() 声と共に現れたのは、小さな少女。 | ||
![]() | もーふもふもふもふもふもふ……。 | |
| 少女は、毛むくじゃらの小さな生き物を沢山引き連れていた。 | ||
| 珍しい生き物が沢山にゃ!? | ![]() | |
| 驚きのあまり、ウィズは知らない人の前だということを忘れて声をあげていた。 | ||
![]() | め、珍しいって……喋る猫に言われたくないですよ! | |
| にゃはは……それもそうにゃ。 | ![]() | |
| 少女は、ヤネット・フリールと名乗った。 | ||
| なんでも、この毛むくじゃらの小さな動物──「フモーフ」専門のトレーナーらしい。 | ||
| ペット用の動物にゃ? 言われてみると、かわいい生き物にゃ……。 | ![]() | |
| ウィズが不用意にフモーフに近づく。 | ||
| すると、突然フモーフが荒ぶり始めた。 | ||
![]() | もふもふ!? | |
![]() | あれー、お腹空きましたか? それとも、こちょこちょして欲しいんでちゅか~? | |
![]() | よーし、こちょこちょこちょこちょ……。 | |
| ヤネットはデレデレの表情で、フモーフをあやしはじめる。 | ||
![]() | もふもふ~……。 | |
| すごいにゃ。あっという間におとなしくなったにゃ! | ![]() | |
![]() | 元々おとなしい生き物なんです。でも感情表現が複雑だから扱いが難しくて……。 | |
| だから、ヤネットのような専門のトレーナーが、職業として成り立っているのだと言う。 | ||
![]() | 世界中のフモーフを集めて「ヤネット王国」を建国するのがあたしの夢なんですよ。 | |
| すごく壮大な夢にゃ。 | ![]() | |
![]() | ところで、あなた方も旅の人みたいですが、どこに向かう予定なんですか? | |
| どこに向かうもなにも、ここがどこなのかもわからない。 | ||
| 君は、ここは天上岬なのかと尋ねる。 | ||
![]() | ええ、天上岬ですよ? ほら、あそこに「とこしえの樹」が見えるでしょ? | |
| と、ヤネットが指さしたその遥か先には、以前ファムたちと登ったとこしえの樹が見えた。 | ||
| それと……。なんだか見覚えのある人が立っている。 | ||
![]() お姉さまがいなくても、ひとりでできる……できない……できる……できない……できる……。 | ||
| にゃにゃにゃ!? あそこにいるのは、ファムにゃ!? まったく気配を感じなかったにゃ! | ![]() | |
| 花占いを続けるファムは、最後に残った一枚の花びらに指を伸ばして……。 | ||
![]() | でき……ない。やっぱり、私ひとりで「奇跡の香水」なんて作れません~! | |
| 泣きべそをかきながらその場に崩れ落ちた。 | ||
![]() | お姉さまがいないのに、外の世界を冒険するなんて絶対に無理です! | |
| なんだかすごく落ち込んでいるようにゃ。いったいなにがあったにゃ? | ![]() | |
![]() | もしかしてファムさんのこと知ってるんですか? | |
| ヤネットは、フモーフをあやしながら、大きな目を見開いた。 | ||
![]() | はっ。まさかフェルチさんが言ってた黒猫を連れた魔法使いって、あなたのことだったんですか? | |
| 「奇跡の香水」ってなんにゃ? | ![]() | |
![]() | 伝説の調香師フロリアが残した香水のことです。そのレシピを偶然あたしが見つけたんです。 | |
| 天上岬を抜ける長い階段を、ヤネットはテンポよく下りていく。 | ||
| ヤネットのあとから、フモーフたちが列を成してついていった。 | ||
![]() | かなり製作が難しい香水らしいんですけど、リリー姉妹なら絶対に作れると思って──。 | |
![]() | それで、旅の途中で天上岬に立ち寄ったわけです。 | |
| でも、どうしてファムだけにゃ? フェルチはどうしたにゃ。 | ![]() | |
| ウィズの言葉を聞いて、亡霊のように後をついてくるだけだったファムが急に蘇った。 | ||
![]() | 聞いてください魔法使いさん! きっとお姉さまは、私が邪魔になったのです! | |
![]() | だから、天上岬から私を追い出しのです。 | |
| あの仲良かった姉妹になにが起きたにゃ? | ![]() | |
| ファムの言葉を聞いたヤネットが、呆れたようにため息をつく。 | ||
![]() | 黒猫ちゃん、あまり真に受けないで。さっきから、ずっとこんな調子なんですよ。 | |
![]() | フェルチさんは、そろそろファムさんをひとり立ちさせたいと思って──。 | |
![]() | 奇跡の香水の作成を、ファムさんひとりに託したのです。 | |
| なるほどにゃ。心を鬼にして、ファムを千尋の谷に突き落としたんだにゃ? | ![]() | |
| けれども、天上岬を離れたことがないであろうファムにとって── | ||
| それは、絶望的なほど高い岸壁だろう。 | ||
| 自棄になっているファムの気持ちが少しわかった。 | ||
![]() | 私はこれまで天上岬どころか、お姉さまと離れたことすらなかったんです……。 | |
![]() | んもう、ファムさん。だからですよ。 | |
| いつまでたっても姉離れできないファムのことを考えて、フェルチは決断を下したのだ。 | ||
![]() | でもやっぱり、私にはひとり旅なんて無理です。 | |
| と、ファムは地面に座り込んだ。 | ||
| その様子を見たウィズは、決意したように君の方に向き直る。 | ||
| こんな状態のファムを旅させるのは不安にゃ。キミ、しばらくついて行ってあげるにゃ。 | ![]() | |
| そうだね、と君はうなずいた。 | ||
![]() | 魔法使いさんが一緒に来てくれるなら心強いです。よろしくお願いしますね。 | |
![]() | もふもふっ! | |
![]() | おお、フモーフちゃんたちも、仲間が増えて喜んでるみたいです! | |
![]() | もーふっ!? | |
| 痛い! か、噛みついてきたにゃ! どこが喜んでるんだにゃ!? | ![]() | |
![]() | 心配しないでください。それはフモーフちゃんたちの愛情表現です。 | |
| こんな愛情表現は迷惑にゃ! | ![]() | |
![]() | ||
![]() | うーん……。うーん……。 | |
| フェルチは、難しい顔をして工房の周りを意味なくうろついていた。 | ||
| ファムがヤネットと旅立ってから、まだ半日も経っていないというのに……。 | ||
![]() | 心配だわ……。 | |
| 決心してファムを送りだした身でありながら、フェルチの心は、一向に落ち着かなかった。 | ||
| フェルチさま~。お茶が入りましたよ~。 | ![]() | |
![]() | やっぱり今から追いかけようかしら? ううん、ダメ。ここで手を貸しちゃあの子は……。 | |
| 残念ながら、アネーロの言葉は耳に入っていないようだ。 | ||
| そんなにファムさまのことが心配なら、今からでも追いかければいいじゃないですか。 | ![]() | |
![]() | ……でも、それじゃあファムはいつまで経ってもひとり立ちしないわ。 | |
| 調香師の間で噂に名高い「奇跡の香水」。 | ||
| これは、なんとしてもファムひとりで作り上げなければいけない事情があった。 | ||
![]() | ||
| エテルネちゃん、先にお茶頂こう? | ![]() | |
![]() | ……う、うん。 | |
| ファムと離れ離れになって寂しそうな人物がもうひとり──。 | ||
| エテルネは、冴えない顔でうなずいた。 | ||
![]() | お母さま、大丈夫でしょうか? 少し心配です。 | |
| フェルチさまもエテルネちゃんも、静かにファムさまの帰りを待つことはできないみたいね。 | ![]() | |
| アネーロはひとりで優雅にお茶をすする。 | ||
| かぐわしいハーブの香りが、辺り一面に広がった。 | ||
| こういう時こそ、ファムさまの作った「すさんだ気分を癒やす」お茶を飲んで落ち着きましょうよ。 | ![]() | |
![]() | やっぱり決めたわ! | |
| 突然、フェルチが大声を出したので、アネーロは持っていたティーカップを落としそうになった。 | ||
![]() | ファムだけじゃ心配だから、私も後を追うことにする! | |
| フェルチまでいなくなるということは、ここに残るのはアネーロとエテルネだけということになる。 | ||
![]() | 留守番を頼めるかしら? | |
| お土産、期待してますよ! | ![]() | |
![]() | お母さまに、生水は不用意に口にしないようにと伝えておいてください。 | |
| さすがエテルネちゃん、しっかりしてる! 誰に似たのかしら? | ![]() | |
| フェルチは、エテルネの頭を撫でながら旅の支度を始める。 | ||
![]() | 奇跡の香水は、絶対に作り上げたい。失敗したくないの。 | |
![]() | だって香水のレシピを残したのは、私たちのお母さまなんだから。 | |
| 一方、ファムと行動を共にする君は……。 | ||
| ファムさん。奇跡の香水の材料を見つけるまで、お家には帰れないと思ってくださいね。 | ![]() | |
![]() | そんな! 私はもう二度と、天上岬には帰れないのですか? 嘘だといってください! | |
| 諦めるのが早すぎるにゃ! | ![]() | |
| 奇跡の香水の素材さえ集めれば、ファムさんは大手を振って家に帰れます。 | ![]() | |
| だけど、材料を集めないで帰ったら、フェルチさんが、どれほどお怒りになるか……。 | ![]() | |
| びくっと身体を震わせたファムは、すがるように君の手をつかんだ。 | ||
![]() | お、お姉さまは、怒ったらすごく怖いんです。お姉さまを絶対に怒らせたくないです……。 | |
| じゃあ、やることは決まりましたね? | ![]() | |
| ファムはすくっと背筋を伸ばした。 | ||
![]() | このレシピにある、3つの材料を手に入れれば、いいんですね? | |
| どんな材料が必要なんだにゃ? 奇跡の香水という名前だけじゃ想像つかないにゃ。 | ![]() | |
| ファムが手にしている香水のレシピには、こう書いてある。 | ||
| 奇跡の香水を作るには、以下の3つの材料を集めること──。 | ||
| ひとつは、「月輪花」。 | ||
| ふたつ目は、「煌蛍」。 | ||
| そして3つ目は、「霊見草」。 | ||
| 名前だけ見ても、どこにあるのかわからないにゃ。 | ![]() | |
| 安心してください。1つ目の「月輪花」の在処は、私が知ってます。 | ![]() | |
![]() | ほんとうですか? じゃあ、早速行きましょう! | |
| でも、楽な道じゃないですよ? 覚悟は、本当にできてますか? | ![]() | |
![]() | もちろんです。あ、でもその前に……。 | |
| 大きな鞄を地面に下ろして、ファムは中から道具を取り出す。 | ||
![]() | ここでお姉さまの作ったハーブティーを飲みませんか? 魔法使いさんも座ってください。 | |
| 人に座るように促しておきながら、ファムは落ち着きなく歩き回る。 | ||
![]() | あ、お湯が必要ですね。水を汲むには川まで行かないとですね……。一度天上岬に戻りましょう! | |
| ファムさん、落ち着いてください! | ![]() | |
| やれやれにゃ。いつになったらたどり着けるのやら……。 | ![]() | |
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