元帥と呼ばれる男
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…………。 | ||
……。 | ||
……困ったにゃ。 | ||
君は頷く。 | ||
これから私たちはどうなるにゃ……? | ||
…………。 | ||
後ろを歩くローヴィの視線を感じる。 | ||
──彼女が自らの名を名乗ったのは、数分前。君が拘束されたあたりのことだった。 | ||
ローヴィ・フロイセ……それが軍服の女性の名前である。 | ||
君は今、両腕を後ろ手に縛られ、軍服の女性の部下らしき男たちに囲まれながら歩いている。 | ||
全く見知らぬ土地の、全く見知らぬ戦艦の上……独特の空気が漂っていた。 | ||
船が飛んだ……という記憶はある。 | ||
貴官には、これからとある人物に会ってもらいます。許可なき発言は許されていません。 | ||
立ち止まってください。言うまでもありませんが、余計な行動はしないように。 | ||
君は言われるがまま足を止め、重そうな扉を見上げた。 | ||
元帥閣下は私のように優しくはありません。 | ||
元帥閣下という聞きなれない言葉は、何故か君の中に残った。 | ||
奥へ進むにつれ、周囲の兵に緊張の色が浮かんできている。 | ||
この状態で逃げることはできず、君たちは仕方なく従っていた。 | ||
……言葉にしづらい空気にゃ。 | ||
総員傾注。 | ||
ローヴィの言葉が耳に入ってきたのと同時。 | ||
君たちの前から、痩身長躯の男性が近づいてくるのが見えた。 | ||
彼の、獣のごとき瞳が左右に動いたあとで、君とウィズをしっかりと捉える。 | ||
既にお伝えしたとおり、彼の者があの船を動かした──。 | ||
男が、ローヴィの言葉を手で遮る。 | ||
カツン、と音を立てて、ローヴィが下がった。 | ||
君を取り囲む男たちもそれにならって、一歩後ろに引く。 | ||
私がドルキマス国元帥──ディートリヒ・ベルクだ。貴君の名は? | ||
まるで遠雷のような、ディートリヒ・ベルクの声が体内に響いた。 | ||
道化の装いだが、自らの名を名乗るつもりはない、ということか。 | ||
ローヴィ。 | ||
はっ。 | ||
武具の類は一切持ちあわせておりません。そして、この者は──。 | ||
〈イグノビリウム〉の兵とは違う魔法を使用していました。 | ||
魔法──いつ聞いても、陳腐で、胡乱な言葉だ。 | ||
あの船……あれを起動させたのは、この者です。 | ||
仮に〈イグノビリウム〉の者でないのであれば、使える可能性があるかと。 | ||
発言を許可する。貴君の名は? | ||
君は何とか口を開いて、自分の名を名乗った。 | ||
結構。よい名だ。 | ||
ディートリヒは続けてこう口にする。 | ||
ここでは落ち着かないだろう。ついてきたまえよ。 |
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