三つの素材
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![]() これが、煌蛍なのかしら? いや、これはただの蛍みたいね。 | ||
![]() | 奇跡の香水の依頼を断ったくせに、こうして素材を集めてるなんて……。 | |
あの客が知ったら、きっと怒るだろう。 | ||
![]() | 結局断ってしまったけど、調香師である以上、奇跡の香水を自分の手で再現してみたい……。 | |
![]() | わたくしにそれができるのか、分からないですが……。 | |
森で覆われた街。 | ||
ファムたちがここを訪れた時の様子は、ロニールの調香大全に書いてある。 | ||
シーラは、その時の様子を想像しながら歩いた。 | ||
![]() | 素敵な場所だわ。自然に溢れてて……。森が生きてるのを感じるわ。 | |
この森は、一時期は人間たちに踏み荒らされた時期もあったらしいが── | ||
貴重な素材がある場所という理由で、 | ||
現在は、マテリアルハンターたちの手によって手厚く保護されている。 | ||
おかげで、この森は何年経っても、昔と変わらない姿を保ち続けている。 | ||
森を歩きながら、シーラはフロリアのことを考えていた。 | ||
![]() | ロニールは、別の著書で、フロリアが助けた男について色々考察しているわ。 | |
![]() | でも、全て憶測にすぎない……。真実は、闇の中よ。 | |
![]() | でも、娘のファム・リリーは、父親の力を受け継いで……不思議な力を使えたようね。 | |
フロリアは、助けた男を介抱する。 | ||
彼女の作った優しい香りの香水やハーブティーは、男の心と身体を癒やした。 | ||
男は、なにも語らなかった。 | ||
ただ、天上岬という場所に行きたいと言うだけだった。 | ||
天上岬は、天に一番近い場所と言われている。 | ||
![]() | 最初は、まったく意味が分かりませんでした。でも、彼が嘘をついているとも思いませんでした。 | |
![]() | だから私は約束しました。身体が治ったら、いつか天上岬を探しに行きましょうって……。 | |
しかし、男の身体は、既に弱り切っていた。 | ||
フロリアには、想像もつかないくらい長い旅をしてきた……。 | ||
その代償が、男の寿命を極端に縮めていた。 | ||
自分の死期を悟ったのか……。 | ||
男は、少しずつフロリアに自分の事情を打ち明けた。 | ||
![]() 彼は、「空間」を自在に操作する不思議な力を持っていました。 それは、生まれつき持っていた召喚士の力……。 なぜ、その力を持っているのか……彼自身も知らないようでした。 でもその力のせいで、彼は人々に恐れられ、迫害を受けた。 それに反発した彼も……持っている力で、人に恐怖を与え、支配してしまった。 やがて、彼の暴虐に怒った者たちが、彼を故郷から追放してしまったのです。 | ||
![]() | それが、本当か嘘かはわかりません……。でも、彼は酷く傷ついていたのです。心も身体も。 | |
だからフロリアは、男を癒やすための香水を懸命に作った。 | ||
試行錯誤して……時々失敗しながら、男のために調香師としての腕を振るった。 | ||
それに費やした時間は、フロリアの人生の多くの部分を占める。 | ||
そんなフロリアの気持ちは、やがて男にも伝わった……。 | ||
![]() | この草は? | |
フロリアは、男からもらった珍しい草を手に取る。 | ||
それは、男の生まれた故郷でごくまれに咲く「霊見草」という植物。 | ||
死んだ者に会えるという言い伝えがある特別な草だった。 | ||
男は、フロリアに霊見草を託した時点で、自分の死期を悟っていたのかもしれない。 | ||
![]() | そんな寂しいことを言わないでください。きっと身体は、よくなります。私が約束します。 | |
お互いの時間を共有していくうちに……。 | ||
![]() いつか必ず、天上岬に行きましょう。 | ||
男の夢は、いつしかフロリアの夢になっていた。 |
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