ノモス

ノモスは機動兵器である。ただし、心がある。

心技体すべてにおいて優れた機械を造り出さんとするこの異界において、
機動兵器にもまた「道徳的に優れた精神」が求められたのだ。

しかしノモスの心には大きな迷いがあった。
なまじ精密な「心」を搭載してしまったがゆえに、
戦いにおける判断が鈍ってしまうのだ。

「敵が機械であれば撃ってもいい……だが、相手に心があった場合は？
　それを破壊するのは正しいことなのか？　だが……だが……」

『だが』を繰り返していた彼は、ある機械兵士の鎮圧を命じられる。
心を持ちながらも、なぜか暴走してしまった機械兵士。
撃つべきか迷ったノモスの目に、襲われる少女の姿が映った。

――ノモスは驚いた。
〝思わず〟割って入り、敵機械兵士を打撃した自分に。

「どうするべきか、まだわからない……『だが』！
　この子の命を守らねばならないということだけは確かなはずだ！」

鉄と炎の戦場で――ノモスは揺るぎなく身構えた。

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