エリアナ

 
最終更新日時:
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(A)幽世のうたかた エリアナ(A+)夢のあとさき エリアナ(S)淡きゆらめき エリアナ
AS虹色の夢玉虫色の現実玉虫色の現実
SS騎士の印章騎士の印章白騎士の刻印
196019614291
(S+)夢幻のひとひら エリアナ(SS)永遠のたまゆら エリアナ・グロス(L)儚きとこしえ エリアナ・グロス
AS千変万化の夢現千変万化の夢現恒久不変の朧月
SS白騎士の刻印白銀騎士の極光壁光放つ聖騎士の加護
登場時期:2014/05/16 ウィズセレクションガチャ 2015/06/30 L化 

バレンタインver

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(SS)安息のひととき エリアナ(SS+)刹那のやすらぎ エリアナ(L)常夜のこいびと エリアナ・グロス
AS夢と現の宿世愛しさと儚さの諍い愛しさと儚さの諍い
SS聖なる日の誓い聖なる日の誓い不滅の騎士の忠誠
登場時期:2016/02/12 2016バレンタイン期間 限定ガチャ 

共通情報

名前エリアナ・グロスCV田村 奈央種族術士
登場-
世界-
所属-
特徴ワード軍神を従えし、無垢なる少女
関連キャラヴィクトリア
セリフ1「この身体、命、総てを捧げます」
セリフ2「……殺したい奴らがいるのよ!」
セリフ3「ありがとう。何も言わないから、勝手にしますね。」
補足情報長き祈りにより、軍神と讃えられし英雄騎士を蘇らせた。

パーソナルストーリー


バックストーリー

とある異界の、遥か古の時代――

数万の兵を単独で壊滅させた、軍神と讃えられし英雄騎士がいた。
その英雄譚も今では神話となり、彼の墓標を訪ねる者など存在しない
――はずだった。

風化した墓碑の前に跪き、
聖杖を握りしめて幾週間も無心に祈り続ける、
華奢な少女。

長き祈りの果て、少女が遭逢せし僥倖は――
守護の運命を担いて甦生した、白銀の軍神であった。

「この身体、命、総てを捧げます――だからお願い。助けたい人が、いるの」

沈黙の軍神は、衰弱した少女の身体に手を伸ばすと、
優しく、そして力強く彼女を抱き上げた。

少女の無垢な祈りは、この世の理を歪ませた――
呪詛だったのかもしれないけれど。


ふたりの出会い

いまはもう、忘れ去られた男の墓がある。
森の奥。しっとりと闇に包まれた場所に彼は眠っている。


かつて軍神と呼ばれた男。……幾万もの兵をたったひとりで打ち倒した男。

もう何年も人が訪れることが無くなったその場所にか弱い足音を立てて、その少女は現れた。
エリアナ・グロス。彼女の名である。
エリアナは軍神と呼ばれた男の墓に、願いを抱いてやってきていた。
墓の下に眠る男に願い? とても奇異なことのように思えるが、彼女にとっては──
それ以外の方法がなかった。
死者にすがるより手がなかった。
早くしないと……。
彼女の行いを見て人はどう思うだろうか。
おそらく、彼女が狂っているか途方もない絶望を背負っているか、そのどちらかだと思うだろう。
だがこの場合……。
彼女はその両方だった。ほんのひと時、この時だけは、そうだった。
自分ひとりを逃がし、処刑台の羊となった一族を救うため、エリアナはここに辿り着いた。
墓の下の男に救いを求めて、幽鬼のようにゆらめき誘われた。


これが……。
森の奥に、墓碑がひとつあった。
長い間、風雨にさらされたことで墓碑の文字は擦り切れていた。
それが誰の墓であるか……。もはや彼女にとっては大した問題ではなかったのかもしれない。
エリアナはひざまずき、祈り始めた。
この身体、命、すべて捧げます。だからお願い。助けたい人がいるの……。
そう願う者は多いだろうが、本心から願う者は少ない。
ただ彼女は本心から願った。彼女をとらえる深い絶望がそうさせた。
彼女は瞑目し、祈りを捧げる。
数秒や数分といった程度ではなく、数時間でもない。
数日そのまま祈り続けた。
彼女は狂っていた。静かに、穏やかに、一途に、「救いたい」という願いに、狂っていた。
彼女の想いにつられるように、ほんのわずかな時間、世界も狂った。


墓碑の上に現れた魔法陣から白銀の騎士はゆっくりと浮かび上がる。

……ありがとう。
薄れてゆく意識の狭間、わずかにその姿を見て、うわ言のように呟いた。
安堵の中に眠るエリアナを、銀の腕が抱き止める。
片腕に彼女を抱いたまま、白銀の騎士は周囲を見渡した。
少女が歪めた理は、白銀の騎士とともに人ならざるものを呼び起こしていた。
彼らにとって少女の身体と命は、彼女の願いの代償である。
くれると言ったものを、受け取りに来ただけなのだ。
だが、白銀の騎士は──。
…………。
それを認めなかった。

(戦闘終了後)


奇妙な夢を見た。私はそう思っていた。でも目が覚めた時、夢は現実だと知った。

……うん。……あっ。
目を開けると、エリアナは自分が騎士の腕に抱かれていることに気づいた。
意識を失う間際に見た光景が、幻でも夢でもなかったこともその時ようやくわかった。
背中に当たる鎧は固く冷たかったが、それでも疲労で重たくなった身体にとっては──
心地が良かった。彼女を安堵させ、安らぎを与えた。
そのままもう一度眠りかけたエリアナは、再びまぶたを上げる。
彼女は自分の願いを忘れていなかった。
ち、違う……! 騎士さん、ここじゃないの。私が助けたい人が別のところにいるの!
…………。
懇願する彼女の声を聴いても、白銀の騎士は動こうとはしなかった。
肯定とも否定とも判別できない沈黙を続けた。
ねえ、動いて。お願い! 言うことを聞いて! 私には、私には……。
救いたい人がいる。
一心不乱に唱え続けていた言葉は、不意に偽りの殻を破り、本当の姿を見せ、彼女の口を出た。


……殺したい奴らがいるのよ!

彼女の偽りのない言葉を聞いても、騎士は沈黙を続けた。
腕の中で暴れるエリアナをいさめるように、抱き止めたまま。

※話の最初に戻る
彷徨い歩く


私は、私の願いを叶えられなかった。……私はただ、この世の理を曲げた。


たぶん私は、狂っていたんだろう。

街道を行く足を止め、エリアナはふと自分のつま先を見つめた。
そのつま先を背後から大きな影が覆う。彼女のあとを追っていた重たい足音も止まる。
…………。
彼女は影の方を見やる。
…………。
どうしてついてくるの? 私の願いは……。助けたいと思う人たちはもういないの。
私にはなんの願いもない。……だからあなたは必要ない。
…………。
好きなところにいけばいい。どこかの街でも、国でも、土の中でも……。どこへでも。
私のそば以外ならどこへでも。……さよなら。
彼女はその場を足早に立ち去る。
けれども彼女の足音に続き、鉄を打つ音、軋む音が後を追ってくる。
もう! どうして付いてくるの! 私を自由にして!
エリアナは逃げるように駆けだした。懸命に足を前へ前へと運ぶ。
少しでもあの怪物から遠ざかろうと駆ける。自分が生み出した狂気から逃げ出すために。
はあ、はあ、……や、きゃ! 痛……。
…………。
白銀の騎士は、転んでその場にうずくまる彼女の華奢な身体を優しく抱え上げる。
やだ! 離して、離して!
抵抗するエリアナは滅茶苦茶に暴れて、騎士の顔や胸を思い切り蹴り飛ばすが、
い、痛ーい。
ひ弱な彼女の足の方が悲鳴を上げてしまう。
何事もなかったように、騎士は彼女を肩に乗せて街道を進み始める。
そこまでいくと、エリアナも大人しく彼の肩に収まっている。
なにより、足が痛くてそれ以上歩けそうもなかった。



私の願いに応じて現れた彼は、私の願いが消えたことで、存在する意味を失った。


もうひとつだけ、私には願いがあるけど、それは叶えてくれないようだった。


復讐という、私の願い……。

ねえ、私たちはどうすればいいの?
…………。
……知ってる。あなたもわからないんだよね。
時々苛立ちをぶつけることはあったが、エリアナも理解していた。
あの時、すでに彼女の「救いたい人」は救えなかったこと。
なによりも彼女自身が著しく衰弱していたこと。
白銀の騎士は主の生命を守ろうと、雨露をしのげる場所へ彼女を運んだ。
全て、正しい判断だった。
だが激しい願いの果てに、彼女、いや彼女たちが手に入れたのは……。
自分というものが押し潰されそうな虚しさと目的を見失った宙ぶらりんな時間。
あれは……。
遠くにいくつかの騎影が見えた。都市の城塞の周囲を何度も回っていた。
野盗……。
彼女がそう思ったのは、かつて父親が野盗の手口を教えてくれたからだった。
野盗といっても以前は騎士団を名乗っていた者たちや傭兵団崩れの者たちの集団である。
戦術と統率を以って都市を襲う。
彼らは必ず襲う街を下見する。配下の者を街に忍び込ませる。
そしてその街の警備を担う者をだまし討ちするとともに街を襲撃する。
彼女の街を襲い、彼女の一族をだまし討ちにした者たちのように。
ねえ、少しだけやってみたいことがあるの。力を貸してくれる?
ううん。私たちがやらなきゃならないことが見つかったの。


お願い、力を貸して。

応じるように、騎士は大剣を抜き放つ。
ありがとう。とりあえずあの人たちを懲らしめましょ。
エリアナが騎士の肩をひと際強く握りしめた。
命まで奪うことはないわ。

(戦闘終了後)


その男はかつて軍神と讃えられていた。


幾万、幾十万の敵兵をたったひとりで打ち倒した。ただ彼は──。

彼は辺境警備の将であった。幼い頃、父に連れられ、その地にやってきて以来、彼は戦い続けた。
その時代、国の都は栄華を極め、百年を超える太平の時を過ごしていた。
にもかかわらず、彼は寒く荒れ果てた国の辺境で外敵との戦いに明け暮れていた。
彼には不満はなかった。都の豪奢な文化にも、権力にも、興味はなかったのだ。
ある時、中央に召喚されたが、攻め入った敵軍に相対するために、それを固辞した。
平和ボケした王やその側近には、彼の行動が理解されず……。
それゆえ彼は、王から死を賜った。
最後の夜、彼は自問した。
国を守り続けた自分がなぜ死ななければいけないのか。
長い夜の間で、彼は自分を納得させるだけの理由をひとつだけ見つけることができた。

人を殺し過ぎた……。

敵とはいえ、自分は人を殺し過ぎた。それだけが彼自身を納得させうる理由だった。
騎士が野盗たちの一味を捕らえ、縛り上げる様子を見て、エリアナは言った。
あなたは人を傷つけるのが嫌いなの?
…………。
そんな風に見える。だから私の願いも受け入れてくれなかったの?
白銀の騎士は相変わらずの沈黙を返すだけだった。
ふとエリアナは笑顔を見せて、言った。
勝手にそう思っておくね。
エリアナは久しぶりに笑ったことに気づいて、思わず自分の頬に触れる。
何かが取り戻せるような気がする……。その予感を信じたいとエリアナは思った。
次は……。
笑顔を胸にしまうと、エリアナは街の方を見て言った。
おそらくこの後、街に野盗たちが押し寄せる。エリアナが最後に見た故郷のように。
あの街を守りましょ。
…………。
相変わらず返事はない。


ありがとう。賛成してくれるんだね。……何も言わないから、勝手にそう思っちゃうね。

ふたりは街の方へと向かった。

※話の最初に戻る
新しい道へふたりで



エリアナが野盗たちの襲撃を街に知らせたおかげで、不意打ちは避けられた。
とはいえ、街は野盗たちに包囲されていた。

助けを呼びに出たものは、いまごろ別の街にたどり着いただろう。
だがそこから同じ時間をかけて、救援はやってくるのだ。
それまで耐えられるかな?
…………。
……でも耐えなきゃいけないんだよね。
…………。
一騎当千の騎士がいると言っても、戦うべき相手も、守るべき者も多すぎた。
次第にエリアナと騎士の手に余る状況になりつつあり、
外界から閉ざされた焦燥と包囲戦の緊張が人々を蝕み始めていた。
もちろんそれはエリアナも同様である。だがどんな時も騎士は沈黙を貫いた。
エリアナが恐れた時も、不安になった時も、苛立った時も。どんな時も。
ごめん。私が決めるんだね。
…………。
騎士の沈黙は自然とエリアナを成長させた。
絶望に打ちひしがれ、忘れられた墓標の前に立った少女エリアナは、いまはもういなかった。


騎士さん、何があってもここを守ろう。

…………。

そして、南の門が破られたという知らせがエリアナと騎士の元に入る。
騎士さん!
…………。


早く行かなきゃ……。
…………。
南の門に向かうエリアナたちの頭上を凄まじい速さで小さな「何か」が通過していく。

おまたせしましたーーー!!



きゃあ!!

目の前の地面に激突した「何か」は猛烈な衝撃波を周囲に発散する。
…………。
騎士が盾を使い、衝撃波をいなしたおかげで、エリアナたちは無傷であったが……。
どうやら街の中に押し寄せていた野盗たちはことごとく吹き飛ばされたようだ。
立ち込める砂煙の中からようやく「何か」の正体が透けて見え始める。
……人?


おまたせしましたぁ! ヴィクトリア・ネルド、ただいま参着ですー!

「何か」はビシィッ! と決めポーズらしきものをエリアナに向ける。
えーと……どなた?
はい! 助っ人としてこの街にハケンされました。あれ……?
野盗たちはどこでしょうか……?
いまあなたがほとんど吹き飛ばしちゃったけど?
そうか……。やっちまったなぁ……。
うん、やっちゃったかも。
…………。
騎士は門外の野盗たちの方を睨んだ。
でもまだ残っているみたい。
ざんとーがりですね! ヴィクトリア、得意ですよ!
……物騒なことが得意なんだね。でもそれなら……ちょっと手伝ってください。
まっかせてください!

(戦闘終了後)

「ざんとーがり」も無事終わり──。
あ、このチョコレートも食べていいですか?
ヴィクトリアは「ほうしゅう」のお菓子をむしゃむしゃと食べていた。
それが報酬なの?
はい! ヴィクトリアはよーへいなので、戦ってほうしゅうをもらっています。
でもそれ……お菓子だよ。
はい! すっごくおいしいです。
ふふ。私でも傭兵になれるかな?
なれますよー。楽勝です!
楽勝か……。
彼女は白銀の騎士の顔を見る。
騎士さん。私、傭兵になります。
…………。
そうすれば、きっと今日みたいにいろんな人を救えるから……。だから傭兵になりますね。
…………。
ありがとう。何も言わないから、勝手にしますね。
エリアナさんはよーへいですか?
うん。いまなったばかり。
だからヴィクトリアさんにいろいろ教えてほしいの。……だめかな?
まっかせてください! それなら、いまからヴィクトリアたちはよーへいだんの仲間です!
傭兵団、楽しそう! 名前はどうしようか?
チョコレートでいいんじゃないですか?
と片手に持ったチョコレートを掲げて、言った。
チョコレート傭兵団。ふふ、いいかもね。
ヴィクトリアが団長でもいいですか?
いいですよ。
エリアナさんが副団長。で……誰ですか?
ヴィクトリアは白銀の騎士を指さした。
そういえば、名前知らない。
じゃあ、アップルパイ将軍でいいんじゃないですか? ビスケット大将でもいいですよ。
アップルパイ将軍とビスケット大将。どうですか、騎士さん?
…………。


何も言わないと、勝手に決めちゃいますよ。




私の願いは叶わなかったけど……。


誰かの救いたい人を助けることはできる。そのために私たちは出会ったんだから……。


※話の最初に戻る
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