リィル

失われた過去の技術を発掘し、高値で売り抜け富を得る。
トレジャーハンターたちがこぞって古代の遺物を探し求める、
冒険と探求のある異界。

２丁の愛銃を自在に操り、賞金首を追いつめる。
誰とも群れず、誰にも屈せず、単独、
世界を駆け巡る賞金稼ぎ——少女の通り名は「魔水銃のリィル」。

神風のごとき身のこなし、
寸分の狂いなき精密射撃はターゲットを瞬時に葬り、
獲物を確実にものにする。

一点突破の破壊力において彼女の右に出るものはなく、
彼女の追撃を逃れた者は過去一人もいないといいます。

「それで本気なの？　止まって見えるよっ！」

夏。
日差しが分け隔てなく襲うこの季節は、どの異界であろうとも水場が盛況となる。

「冒険と探求のある異界」、そのとある水場で、君とリィルは避暑を楽しんでいた。

「こんなに暑い日だし、今日はあそぼうよ！」

彼女は自分の代名詞でもある双銃の片割れを、君に押し付けるように渡してくる。
リィル・ライルの銃は、彼女が持たなければ単なる水鉄砲に過ぎない。
確かに多少水圧は強めなものの、所有者以外の魔力には反応することはなかった。

「さあ、どっちが射撃がうまいか、勝負しよう！」

つまり、その銃は単なる遊び道具として渡されたのだ。

君は銃に水を詰めると、リィルに狙いを定めて引き金を引く。
だが、一直線に飛ぶ飛沫は、彼女を捉えることはできなかった。

「あはは、遅い遅い！　そんなんじゃ私には勝てないよっ」

彼女は水そのものを操る魔法に長けていた。
それゆえ、水遊びに関して彼女の右に出るものはいない。
まるでスケートのように水辺を滑る彼女の動きは、まるで妖精のよう。
そんなリィルに目を奪われ、君はあらぬ方向へと引き金を引いてしまった。

「ひゃぷっ！」

銃口と君の視線を頼りに射撃を避けていたリィルは、思いがけない君の行動に意表を突かれてしまう。
まさか当たると思っていなかったのか、マトモに水銃を食らった彼女の服はびしょ濡れになってしまった。

「や、やったなぁ……！」

リィルは恥じらいの色を浮かべて君を睨む。濡れた服の裾をつまんで、彼女はむすっと顔を膨らせた。

「……あっ！」

そして一瞬の沈黙のあと、君とリィルは同時に、お互いから目を逸らす。
……ある程度薄い生地の白い服は、濡れると透ける。そのことを二人とも失念していたのだ。

だが、次の瞬間である。
黙ったままの君の背後にある岩が、『飛来した何か』に勢い良く撃ちぬかれた。
反射的にそれが飛んできた方向を見ると、にっこりとわらったリィルが、虹色の水を纏っている。
……どうやら少しだけ彼女は怒っているようだ。

「一撃必殺でしょ♪」

彼女は決め台詞を言うと、もう一度銃を構える。
強大な魔力が銃のタンクに集まり、その水圧を上げていくのがわかった。

夏の日差し。
白い砂浜。
青い海。
君とリィルの追いかけっこが、いま始まる。